第46話

「松山から桐島先輩のこと聞いてます」



「あ、堅太と同期だもんね〜」




トイレから出ると話が聞こえてくる



「松山とは一緒の部屋なんです」



「そういえばこの前そんなこと言ってたかも」



五十嵐と松山くんって社宅の部屋が一緒なんだ



リビングに入ると、



「実はまた付き合うことになったんだ」



愛未の言葉に驚かされる




「え?!聞いてないよ!!」



「だって今日告白されたんだもん」



まあ、時間の問題だったしね



飲み会をやった甲斐があったな




「おめでとう」



照れ笑いをしている愛未



嬉しそうだな



愛未が幸せそうな顔をすると私も嬉しくなる




ふと時計を見るともうすぐ11時



「五十嵐、帰ったら?」



明日も仕事だし私のせいで疲れさせちゃったもんな




「はい、お邪魔しました」



「今度一緒に飲もうね〜」



すっかり五十嵐のことが気に入っている愛未



私も下まで送ろうと一緒に玄関を出る




「今日はありがとうね」



「不倫とか許せないんで止めただけですから」



「あんな人のために落ち込まない方が良いですよ」



下まで降りると五十嵐が励ましてくる



そんなに落ち込んでいるように見えるのかな



たしかに契約が取れないことは痛いけど




すると、



「好きな人なんてすぐ出来るでしょ」



いきなり近付いてきて耳元で囁いてくる



……ドキドキ



頬が熱くなって、鏡を見なくても顔が真っ赤になったのがわかった




「もう!上司をからかわないの」



怒らなきゃいけないはずなのに強くは言えない



「気を付けた方がいいですよ」



「すぐ引っかかりそうですね」



私を見て笑っている五十嵐



まったくしょうがない部下だ



でもどうしても大目に見てしまう



私はイケメンに弱いんだろうか



部下にドキドキしちゃうなんてどうかしてる




「こんなオバさん誰も相手にしないから大丈夫だよ」



恥ずかしくなって冗談を言うと、



「よく言いますね、最近モテてるくせに」



呆れた顔で言ってくる





「……可愛いからな」



………え?!



小さい声でそう言ったように聞こえた



気のせいかな、気のせいだよね



動揺してしまう私




すると、



「おやすみなさい」



そう言って歩いて行ってしまう




そんなこと五十嵐が言う訳ない



私のこと女として見れないって言ってたじゃん



聞き間違いだ、忘れよう



私は冷静になってアパートに戻った

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