scene.7

第43話

********





「もうっ!何なの!」



ホテルから出た所でやっと手を離す



私が怒鳴ると反抗的な顔をする五十嵐




「結局軽い女なんすね、見損ないました」



呆れたように言って来る




五十嵐には関係ないじゃん



何でここまで干渉するの?



私は怒りが込み上げてきて、



「何でアンタに怒られなきゃいけないわけ?」



と怒鳴ってしまう




すると、



「心配だから」



真剣な顔で私の目を真っ直ぐ見てくる




心配?



意外な言葉に驚かされる




「上司としてですから勘違いしないで下さい」



言われなくても分かってる



でもドキッとしたのは気のせいだよね




「もう彼氏いないんだから私の自由でしょ」



「やっぱり知らないんですね」



五十嵐は苦い顔をする




………何のこと?



私が疑問符を浮かべていると、



「あの人、結婚しているんですよ」



五十嵐の言葉に耳を疑う




え、結婚してるの?



考えもしなかった



奥さんがいるのに誘うなんて最低じゃん



私はショックで言葉も出ない




「良かったですね、不倫相手にならなくて」



五十嵐は手を挙げてタクシーを捕まえようとしている



こうなることを予想して、わざわざホテルまで来てくれたんだ



五十嵐が止めてくれなかったら知らないうちに不倫してしまうところだった



またこれで借りが出来ちゃったな




そう思っているとタクシーが止まった



「はい、どうぞ」



先に乗ると五十嵐も横に乗って来る




結構ショックが大きくて、黙って外を眺めながら家に着くのを待つ



何で断らなかったんだろう



酔っ払っていたとはいえ、軽い気持ちで部屋に行こうとしたことを後悔する



でも、東城さんのことを魅力的だと思ったからな




すると、五十嵐の頭が私の肩に触れた



疲れたようで寝てしまっている



顔がすごい近い



ドキドキしてしまう私は不謹慎だ



爽やかな香水の香り



この匂い好きなんだよな




「心配してくれてありがとう」



私はそう呟いて家に着くのを待った

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