第41話

メインディッシュのステーキを食べてあとはデザートだけ



大好きな桃のコンポートが出てきて気分が高まる



東城さんはお酒が弱いと言っていたけど顔色が全く変わっていない



あ、そうだ……契約の話をしなきゃ




「すみません、契約のことですが……」



話を切り出すと東城さんの顔が曇る




「父に話したんだけど新たな契約はなかなか難しくて」



「そうなんですね……」



そう簡単に契約してもらえるとは思っていなかったけど残念だな




「でも、父はあと何年かで退任するから」



「そしたら俺が何とか出来る」



そうか、東城さんが社長になるのか



今すぐじゃなくても将来を見据えてお付き合いして行こう




「俺は今契約している会社より東海林食品の方が良いと思ってるんだ」



「ほら、もっと飲んで」



東城さんがワインを注いでくれる




これで何杯目だろう……



このワイン凄く美味しくて飲みやすい



でももうだいぶ酔いが回って来たし強いな



そう思いながらもワインを飲み続ける




「夏月さん、彼氏はいるの?」



いきなりの個人的な質問に少し驚く



「ごめん、でも気になって仕方がない」



え?今何て言った?



気になって仕方がない?



酔っ払って思考が追いつかない




「いません」



「え?意外だな」



「実は最近別れたばっかりで」



酔っ払って余計なことまで話してしまう




「そうか、じゃあチャンスだな」



東城さんはそう言って微笑む



私のことが気になってくれている?



でもからかわれているだけかもしれない




東城さんなら良いかも



不謹慎にも考えてしまう



別れたばっかだし田中くんも断ったのにな



酔っ払っているせいかな




「支払い終わっているから出ようか」



「私も払いますよ、本来なら私が支払わなきゃいけないのに」



私が焦ってお財布を出そうとすると、



「女性に払わせる訳ないだろ」



そう言って私の手を止める




「あ……すみません、ごちそうさまでした」



お礼を言うと東城さんが席を立って私の椅子を引いてくれた

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