第39話

「お疲れ様でした」



定時になって課長や係長が帰って行く




私も支度をしていると、



「今日場所はどこですか?」



田中くんが話しかけて来る




「ロイヤルホテルだよ」



ちゃんと普通に返事が出来た




「うわっ、高いところですね」



「飲みすぎないで下さいよ」



田中くんは微笑んで言う



たしかに飲み過ぎて失礼のないように気をつけなきゃ




「うん、行って来るね」



私はそう言って課を出た




エレベーターに乗ると五十嵐が一緒に入ってくる



「帰らないの?」



カバンを持っていない姿を見て尋ねると、



「総務課に用事があるんで」



素っ気ない返事が返ってくる



ん?朝のことまだ怒ってる?




「田中先輩と何かありました?」



すると、突然質問を投げかけてきた




「えっ?なんで?」



「主任の態度でバレバレですよ」



朝はたしかにぎこちきなかったけど、頑張ったんだけどな




「もしかして付き合ってますか?」



更なる質問に驚かされる



何で勘違いしてるんだろう



しかも、それ直接上司に聞く?



まあ、この前告白されそうな所を見られたんだし仕方ないか




「付き合ってないよ」



私が正直に答えると、



「あんだけ泣いてたのに、もう付き合ったのかと思いましたよ」



なぜか軽蔑した目で見てくる



信じてないのかな




「だから違うって言ってるじゃん」



「はっきり断ったよ」



勘違いされるのは嫌だ



せっかく普通に話してくれるようになったのに




すると、エレベーターが1階に着いた



「ま、俺には関係ないですけどね」



五十嵐はそう言って先にエレベーターから降りた



もう、なんなのよ



自分から聞いてきたくせに



私はムカムカしながら会社を出た

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