第35話

「………ですよね」



田中くんは無理して微笑む




「ごめんね」



私がそう言うと、



「今は考えられないっていうのは分かるんですけど、俺に可能性はありますか?」



真面目な顔で聞いてくる



意外と攻めてくるな




別れたばっかりで今は考えられないのは間違いない



でも、これから先はどうだろう?



自分の心に問いかける






「ごめん……田中くんは後輩としてしか見れない」



やっぱり付き合うのは考えられない



後輩としてのイメージが強くて恋愛対象として見れない





「ありがとうございます」



落ち込むのかと思ったけど笑っている田中くん




「はっきり言ってもらえて良かったです」



「今度こそこれからもよろしくお願いします」



本当は辛いのにギクシャクしないように無理してるんだろうな




それから田中くんは焼け酒のようにお酒を何杯も飲んだ



「先輩……幸せになって下さい………」



酔っ払って今にも寝そうだ




「田中くん、そろそろ帰ろう」



そう言っても反応がない



まさか……寝ちゃった?




肩をトントン叩いていると、



「冬馬は私の甥っ子なんですよ、今日は店に泊まらせます」



マスターがそう言ってくれた



おじさんのお店だったんだ




「お会計をお願いします」



私はお金を払おうとすると、



「冬馬に怒られるので受け取れません」



優しい顔で微笑むマスター




「では、ご馳走様でした」



私はそう言って店を後にする





携帯電話を見ると愛未からラインが来ていた



”今日は帰らないかも”




えー?早っ!!



こんな簡単に上手くいくならお互いに連絡取れば良かったのに




私は歩いて帰るか迷ったけど、昨日五十嵐に送ってもらったことを思い出す



何かあったら嫌だしタクシーで帰ろう



私はタクシーに乗り込んでアパートに帰った

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