第34話

「ここにしましょう」



田中くんについて行くと高そうなバーに着いた



「私の奢りだからって高そうなとこ選んだでしょ」




冗談で言ってみると、



「今日は俺の奢りなんで」



なんだかいつもと違う真面目な顔で言う




「さっきと話が違うじゃん」



そう言いながら渋々中に入る




「マスター、ここいい?」



カウンター席の端に座る田中くん



この店よく来るのかな……




「先輩、何色が好きですか?」



「うーん、水色かな?」



隣の席に座って答えると、田中くんがよく分からない名前のお酒を注文してくれた



こんな大人っぽい所来たことない



それに隣に座っている田中くんと距離が近くてなんだか緊張する……




田中くんは黙っていて何も言わない



私も何を話したら良いか分からなくて待っていると、



「はい、どうぞ」



マスターに綺麗なオーシャンブルーのカクテルを渡された



さくらんぼが乗っていて可愛い




「わー、嬉しい」



私が喜んでいると、



「やっぱり先輩には笑っていてほしいです」



田中くんがそう嘆く




本気なのかな……



酔っ払ったせいじゃないって薄々感じていた




「ごゆっくりどうぞ」



マスターは透明なお酒を田中くんに渡して反対側のお客の所へ移動する




真剣な顔をしている田中くん



私が何となく次の言葉を予感すると、



「俺、先輩のことが好きです」



思った通りに想いを伝えられた




嬉しいけど、田中くんのことは後輩以上に見たことはない



とっても良い人だとは思うけど




「ごめん、今は考えられない」



私は田中くんの目を見てそう伝えた

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