第33話

……心配するから戻ろう



私も終わったことを気にしすぎなのかな



しばらく入っていたトイレから出て個室へ向かう




「あれ?」



通路を歩いていると、田中くんが外に出て行くのが見えた



……ってことは愛未と松山くん2人っきりか



そのままにしてあげよう




外の空気を吸おうと店を出ると、田中くんがタバコを吸っていた



「先輩、食い逃げですか?」



笑っている田中くん



食い逃げなんてする訳ないじゃん



私も思わず笑ってしまう




「2人きりにした方が良いかなって」



「桐島先輩ってまだ松山のこと好きなんですか?」



田中くん、勘付いたのかな……




「……え?なんで?」



「2人とも見え見えすぎて面白いです」



2人とも良い感じなんだ



それなら良かったな……




「俺も先輩にはっきり言えたらな」



タバコの火を消しながら嘆く田中くん



やっぱり私のこと……



この前抱き締められたことを思い出す




すると、



「ちょっと待ってて下さい」



田中くんはそう言って店の中に入っていった




どうしたんだろう



私は言われるがままに待っているとすぐに田中くんが出て来た




「お金払って来ました、あの2人良い感じでしたよ」



「良かった!……あ、お金!」



私が一万円札を差し出すと、



「今日は俺が誘ったんで大丈夫です」



頑なに受け取らない




「部下に奢ってもらえないよ!」



私も意地になってしまう



「じゃあ、もう一軒付き合って下さい」



必死にお願いする田中くん




「仕方ないな、次は私が出すから」



結局私が折れて、二軒目を探そうと歩き出した

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