第32話

居酒屋の中は個室になっていて、ライトが暗くて良い雰囲気



愛未と横並びで座ると、私の前に田中くんが座った




「はい、カンパーイ」



生ビールが4つ来て田中くんの掛け声で乾杯する



乾杯する気分じゃないけど仕方ないな



せっかくだから私もパーッと飲もう




しばらく飲んだり食べたりしていると、



「先輩、元気ないですね」



田中くんに話しかけられる



「ううん、そんなことないよ」




私が無理して笑うと、



「失恋した憂佳のこと慰めてあげてよ」



愛未が口を挟んだ




「もうっ……愛未!!」



「え?言わない方が良かった?」



「当たり前でしょ」



これでも気にしているんだから、飲み会の場で話題に出して欲しくない



まったくお酒が入るとおしゃべりになるんだから




「え?別れたんですか?」



驚いている田中くん



「うん」



仕方なく返事をする



田中くんに心配かけちゃうじゃん




「誰と付き合ってたんですか?」



松山くんまで興味津々に聞いて来る



だから話題に挙げられるの嫌だったんだ




「企画一課の市原だよ」



躊躇している私の代わりに愛未が答える



「あいつ浮気したんだよ、最低でしょ?」



「しかも、相手は同期の佐倉だし」



「え?佐倉さん?可愛いって評判の」



「堅太のバーカ」



「は?なんで?」



愛未も松山くんも良い具合に酔っている



でも、そこまで話さなくても良いじゃん




「……トイレ行ってくる」



私はその場に居たくなくて席を立った

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