scene.4

第22話

********





他の人は二次会に行くんだろうな



涼真の所に行くとは言ったものの抜けれるかどうか



店の外に溜まっている課長たちから逃げるように反対方向に歩こうとすると、



「夏月、行くぞ」



係長に見つかってしまった



お酒が強いから全然酔っ払っていない




「は、はい……」



私は断れずに係長について行く



すぐに断れるような嘘が浮かばなかった




”ごめん、二次会呼ばれたから遅れる”



立ち止まって涼真にラインを送っていると、



「先輩、早く行きましょう」



田中くんが声をかけてくれた



早速普通に接してくれているのだろう





行きつけのスナックに入ってソファに座ると、隣に五十嵐が座った



自分から私の隣にくるなんて意外だ



早速課長がカラオケを入れて昔の曲を歌い出す




………♫




涼真に何て言おう………



私の頭の中はそのことでいっぱい



何曲か知らない曲が続いた後、有名な曲が流れて手拍子をして盛り上げていると、



「主任」



五十嵐に肩を叩かれた




「携帯鳴ってますよ」



かすかにそう聞こえて目線を移すと、



”市原涼真”



テーブルの上に置いた携帯電話の着信画面が光っている



早く来てって言われるのかな……




私が出ないでいると、五十嵐が何か言っている



カラオケの音で聞こえない



「何?」



近付いて聞き直すと五十嵐も寄ってくる



爽やかな香水の匂い



不謹慎だけど距離が近くてドキドキする



普通に話しかけてくれるんだな




「俺、何とか言っとくんで帰ったらどうですか?」



そう言ったのが分かって我に帰る



携帯電話の画面を見て察したのだろう




着信が切れて待受画面に変わる



すると、すかさずラインが来た



”待ってるけど、早く来いよ”




涼真がこんなこというなんて珍しい



体調悪いフリでもして抜けるかな



五十嵐に借りを作るのは嫌だけど仕方ないか




「調子悪いから帰るって言っといて」



五十嵐は何も言わずに頷く



私は課長たちがカラオケで盛り上がっている隙に店を出た

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る