第19話

トイレから出て戻ろうとすると、通路で田中くんが待っていた



「どうしたの?」



「夏月先輩、結構酔っ払っていたんで心配しました」



私そんなに酔っ払っているように見えるかな?



たしかにいつもより飲んだかも




「全然大丈夫だよ」



私は歩き出すけど田中くんはついてこない



どうしたのかな……




立ち止まって後ろを振り返ると、



「市原先輩としっかり話しました?」



そう言って私を引き留める




「え?」



思わず声に出てしまう



まさか……五十嵐が言った?



そういえば口止めするの忘れてた




私が唖然としていると、



「俺、ずっと前から知ってました」



「見てれば分かりますよ」



真剣な顔で言ってくる



いつもと違う様子の田中くん




「辛そうな先輩、見てられません」



困った顔でそう嘆く



え?心配させた?




……!!!



近付いて来ると思った時にはもう遅くて、気付くと田中くんに抱き締められていた



「ちょっと……田中くん?」



私は離れようとするけど力強く抱き締められていて動けない





「俺、先輩のことが……」



まさか……これって告白?



そんなはずないよね



「ずっと……」



そう言いかけて突然パッと私を離す



どうしたんだろう?



田中くんの顔を見ると、私の後ろの方を見て気まずそうな顔をしている




振り返ると、そこには五十嵐が立っていた

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