突き通せない嘘

第34話

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「えれな、おはよう!」



次の日の朝も翔汰と一緒に登校する



相変わらず当たり前のように手を繋いでくる翔汰




温かいぬくもり……好きな人がすぐそばにいる



このまま彼女のフリをして翔汰の側にいたい



甘い考えが頭を過ぎったけど、大地のためにも中途半端なことはしていられない




学校が近付いてくる



翔汰にちゃんと話さないといけない



私は繋いでいた手を振りほどく




「私、やっぱり……」



話を切り出そうとすると、



「彼氏が出来るまでは続けるって言っただろ」



翔汰はそう言って私の言葉を遮った




ちゃんと言わなきゃ……



このままじゃ良くないんだから





「えれな、おはよう!」



すると、大地が突然視界に入ってきた



「お、おはよう」



私は動揺してしまって言葉が詰まる



どんな顔をすれば良いのか分からない




大地はいつものように微笑みながら、



「ちょっとえれな借りるから」



いきなり私の手を取って走り出した




「えれな!」



翔汰の声が聞こえたけど、止まらない大地について行く



「大地?!」



玄関まで来るとようやく手を離してくれた




「俺、お前が辛いの嫌なんだよ」



「速水が好きだって分かってるけど、嘘で付き合うのは止めてくれよ」



大地の辛そうな顔を見て胸が苦しくなる



ちゃんと言わなきゃ……




「ごめん、付き合うフリはちゃんと断わる」



「だけど、大地とも付き合えない」



私は意を決して昨日の返事をする




大地は一瞬悲しそうな顔をしたけど、



「付き合ってくれるとは思ってなかった」



「でも、諦めないから」



「えれなに好きになってもらえるように頑張る」



微笑んでそう言ってくれた




真っ直ぐに気持ちを伝えてくる大地



大地はすごいな……



私も翔汰にはっきり言いたい



でも、もう好きなんて言わないって決めている



とりあえず、何とかして彼女のフリはやめなきゃいけない

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