第9話
「えれな、翔汰くんだよ〜」
結菜にそう言われて一瞬迷ったけど周りの目が気になって窓際に行く
すると、グラウンドにいる翔汰がすぐに目に入った
「翔汰………」
遠すぎてはっきりとは見えないけど、背が伸びて大人っぽくなったのが分かる
「三浦さんだよね、バスケ部の」
ぼーっと眺めていると、近くにいた子に声をかけられた
バレー部の女の子……市川さんだ
「速水くんと知り合いなの?」
私はいきなりの質問に驚かされる
「うん、幼なじみなんだ」
結菜の言うとおり、翔汰はもう有名なんだ……
「幼なじみか……」
「いきなりごめんね、部活でよく会うけど話したことはなかったよね」
「私、市川亜由美、よろしくね」
「あ、うん……こちらこそよろしく」
市川さんは戸惑う私を気にせず、一方的に話し出す
「速水くんカッコ良いよね、春休みに部活で何回か見てたんだ」
「私一目惚れしちゃったかも、三浦さん幼なじみなら協力してくれないかな……」
一目惚れ……か……
翔汰のこと何も知らないくせに
でもこんな美人でスタイルが良い子、私には敵わない
市川さんは学年で1、2を争うくらい男子から人気があるって聞いたことがある
もちろん協力なんてしたくない
というか、今の私には協力出来る力はない
幼なじみって言っても、もう3年も話してないんだから
でも、本人を前にしてはっきりと断れない
何て返事をしようか困っていると、
……キーンコーン、カーンコーン
チャイムが鳴って先生が入ってきた
「ごめんね」
私はそう言って席に戻った
今度また言われたらはっきりと断わろう
市川さんなら私の協力なんてなくても翔汰と上手く行くだろう
私はそう考えて一人で悲しくなった
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