1379 心地良さ

 静流お母さんの『安易な行為』と言う言葉に凹む眞子。

そんな眞子に対して崇秀は『眞子となら出来ちゃった婚に成っても良い』っと言う様なニュアンスの言葉を発する。


それがあまりにも有り得ない言葉だったので……


***


「でも、崇秀さん。『出来ちゃった婚』だけは、なにがあっても絶対に嫌なんじゃ……」

「あぁ、オマエ以外とならな。それは、絶対的にお断りだ」

「へっ?私だったら良いの?」

「そうだな」

「えっ?でもでも……」

「俺はな、眞子。オマエさえ居れば、本当になにもイラネェんだよ。それが例え、全てを失う結果に成ったとしても、オマエとだけはズッと一緒に居たい。オマエの為なら、そんなモノは全部くれてやる覚悟で、オマエと付き合ってるんだよ」


……そこまで。


今、崇秀さんの所持する資産であるGUILDの価値に比べたら。

私の価値なんて、月とスッポンにも成らない程の低い価値の人間なのに、そこまで想ってくれてるの……



「どうして?……どうしてなの、崇秀さん?どうして、そこまで私の事を想ってくれるの?」


そりゃあね。私だって頑張っちゃいるけど。

傍から見れば私なんて、まだまだ足りない所だらけポンコツな欠陥品。


なのに崇秀さんは、いつもこうやって、私に目一杯の愛情を注いでくれる。


勿論、この行為自体『崇秀さんしかいない私』にとっては、非常に喜ばしい行為ではあるんだけど。

そんな『崇秀さんしかない私』とは違って、選り取り見取りな崇秀さんなら、別に私である必要性はどこにもない筈。


だったら、どうして、此処まで私に拘るんだろうか?



「なぁ、眞子」

「あぁ、はい」

「もぉ丁度1年ぐらい前に成るんだよな」

「えっ?なっ、なにが?」

「オマエがさぁ。その姿に成った直後、俺に電話してきたのって」


突然の昔語り?


いや……違うね。

これは、順を追って説明する時の、崇秀さん独特のスタイルだ。


なら、此処に、私を好きに成ってくれた全ての経緯が包み隠さず隠れてるって事だね。



「えっ?あっ、あぁうん、そうだね」

「あの時な。俺、本当はな。平静を装ってはいたけど。取り返しの付かない事をしてしまった自分自身に、どうして良いのか、自分でも解らなくなるぐらい混乱してたんだよな」

「あの、その後って……ひょっとして、私が『姿形が変わっても、友情は変わらない』って言った、あれが絡んでくる?」

「そぉだな。まずは、それが好きに成る、最初の切欠だったな」


『最初の切欠』って事は、一番最初の初期段階。


続きがあるみたいだけど、此処から、どう言う展開が待っているって言うの?



「じゃあ、他にも?」

「あぁ、その後も、オマエと遊んだり。オマエと一緒にライブしたり。色々な事で行き違って、いがみ合ったりもしたけどな。そんな中、俺は『オマエを自分のモノにしたい』って気持ちだけはドンドン膨らんでいったんだよ」

「なんで、なんで?なんで、そんな普通の事で、そんなに気持ちが膨らむの?あの頃って、お互い、普通に接してただけなのに」


勿論、なにも特別な事がなかった訳じゃない。

『私が真琴ちゃんの様に普通に接っしていた』と言っても、それは初期段階だけでの話。

途中からは、かなり私自身『女の顔』が出てしまった状態で、出来るだけ普通に崇秀さんと接していたに過ぎないからね。


だから、そこだけは普通と言うっても、違う意味で普通だったとしか言い様がない。



「その普通が大事なんだよ」

「なにが?」

「『心地良いんだよ』な」

「へっ?心地良い?」

「そう。異性である筈なのに、俺の唯一絶対の親友である『倉津真琴』すらも感じさせてくれるオマエと言う存在が、俺にとっては、なによりも心地良かったんだよ。……向井さんって言う彼女が居る倉津真琴だって解ってるのに。俺は止めどなく、女であるオマエに惹かれて行ったんだよ」


そうかぁ、そういう原理かぁ。

その『心地良さ』こそが、私に拘る最大の理由だったんだ。

崇秀さんが、私に拘る最大の理由は、そこだったんだね。


確かにそれは、私にしか出来な事だね。


それでいて私も、自分也に頑張っていたから。

多少は理想と離れていても、尚更、手元に置いても良いかなぁって想ってくれたんだね。


そっか……一応、理には適ってるね。



「でも、崇秀さん。そんな素振り……」

「見せる訳ないだろ」

「それって、ヤッパリ、奈緒ネェの件があったから?」

「違ぇよ」

「違うの?」

「いや、まぁそりゃあな。全然違うって訳じゃねぇけど。向井さんの事より。オマエは、その段階では『消えていくだけの存在』だった訳だろ。だから俺も、自分自身に変な未練を残しちゃイケネェと思って、その気持ちを自ら封殺してでも普通に接するしかなかったんだよ。当時は、どうあっても向井さんと、オマエの関係をこじらす訳には行かない状態だったしな」


あの時点で、そこまで徹底してたんだ。

しかも、これだけの想いがあったにも拘らず。

私を女として見てくれてただけではなく。

私や奈緒ネェの行く末までシッカリ考えて行動に移してくれてたんだ。


なんて人なんだ。


でも、そう考えたら私は、あの時、なんて酷い事を言いまくっていたんだろう?



「そうだったんだ。……ゴメン」

「んあ?」

「そんな崇秀さんの気持ちにも全然気付かずに、あの時の私は無神経な事バッカリ言ってたんだね。本当にゴメンね」

「何を言うかと思えば、このバカタレ。オマエが無神経なのは生れつきだ。そんなもん、早々に治るか」

「酷い……」


Σ(゚д゚lll)ガーン


反省したのに、酷い言われようだよ。



「それにな。気付かれない様にしてたんだから、そう簡単に気付かれたら困るんだよ」

「あぁ、そっか。……でもさぁ。じゃあ、どうして『3人で仲良くやって行こう』って、私が提案した時は拒んだの?」

「アホ。それは向井さんサイドが良くないだろうに。それに俺は、向井さんと揉めるのは、お断りだ。だから、後出しの俺が身を引くのが筋ってもんじゃねぇのか?」

「そうだけどさぁ。……じゃあ、どうして、最後には私を受け入れたの?」


疑問だよね。


私の心地良さが最大の理由だったとしても。

此処まで奈緒ネェの事を大切に想ってくれてるなら。

最後の最後まで、その意地を貫き通すのが、いつもの崇秀さんの様な気がするんだけどなぁ。



「あぁそこか。そこはな。最後の最後で、オマエが『女で居たい事を宣言』して、完全に向井さんから気持ちが離れて行ったからだよ。……悪い言い方をすれば、俺にとっては、オマエを手に入れる最後のチャンスだったからこそ、そこで躊躇してる暇がなかったって話でもあるな」

「最後って……あぁ、そっか!!そう言えばあの時って!!」

「そぉ。俺は、あの後1度死ぬ予定だっただろ。だから、悪い虫が付かない様に、オマエの心に楔を打って置きたかったんだよ」

「そっか。そっか、そっか」


なるほどねぇ。

あんな鬼気迫る状態でも、最後の最後まで色々考えてくれてたんだね。


もぉ、そこまで大切に想って貰うと、こんな、なにも解ってないお馬鹿じゃ申し訳ないね。



「あぁ、そう言えば。その件で言い忘れてた事があるんだけどな。因みにな眞子。あの体って、まだ死んでなかったりするんだよな」

「へっ?なにそれ?どっ、どういう事?」


なになに?それって、どういう事?

あの崇秀さんが、まだ生きてるって言うの?


だとしたら……今更どうすれば良いの?


余りの衝撃的な事実に、私は掛け布団を跳ね退ける位の勢いで起き上がっていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


人付き合い……恋愛関係で、一番大切な事って『心地良さ』だと思うんですね。


まぁ言い方を変えれば「相性」なんて言葉にもなるんですが。

崇秀と眞子の場合、超長い付き合いなので、当然その相性もバッチリ!!


しかも眞子は、良い意味でも、悪い意味でも『女性らしくなってきています』ので。

崇秀ぐらい、なにもかも割り切った性格なら、この眞子を受け入れるのは、そんなに難しい事じゃないのかもしれませんね♪


さてさて、そうやって、崇秀が眞子に拘る理由が明確に分かったっと言う場面なのに、また崇秀のアホンダラァが、訳の解らない事を言い始めましたね。


一体、それは、どういう意味なのか?


次回は、その辺の真相を書いて行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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