1368 ならば眞子の望むが儘に
自分を除いて、崇秀が、奈緒さんと倉津君とだけ一緒に人でいた事にショックを受ける眞子。
そして見捨てられたと思い込んだ眞子は、自身の体を使ってでも、崇秀の心を繋ぎ止め様としたら……
***
「崇秀さん。……なにをしてるの?」
「なぁ~~にな。向井奈緒、及び、倉津真琴を、この業界から排除するだけのこった。オマエを、そんな風にまで追い込んだアイツ等を、俺は許せないからな。あの2人を社会的に抹殺してやる」
「えっ?」
「それと、もぉ一点。俺は、オマエの気持ちを捕らえきれてやれなかった。だからGUILDも、ギターも、カットの技術も捨てて、オマエだけを見ててやる。なんなら2度と、オマエが、そんな気持ちに成らない様に外出も禁止して、オマエの傍にだけ居続けてやる。それで良いか?但し、嘘偽り無く、この場から、本当にやるからな」
えっ?えっ?
ダッ、ダメェ~~~~~!!
そんなのダメだよ!!
それに崇秀さんは、こう言う時、絶対に冗談で、こんな事を言う人じゃないから、本気でやるつもりだ。
そんなのダメ過ぎるよ!!
「ヤメてぇ~~~~!!ダメだよ!!ダメだよ!!そんなのダメだよ!!」
「なにが、ダメなんだよ?オマエが、そう望んだんだろ?なら、それを叶えてやるって言ってんのに、なんの不服が有るんだよ」
「違う!!違うの!!私、そんな事は望んでない」
「じゃあ、なんだよ?なんで、そんな馬鹿な思考に成ったんだ?ちゃんと理由を言え。言わねぇと、今度こそ即実行だからな」
「うぅ……ただ、ただね。呼んで貰えなかったのが怖かったんだよ」
「はぁ?」
「本当はね。いつも平静を装ってたけど。奈緒ネェや、真琴ちゃんや、崇秀さんに、いつ見捨てられるか解らない自分が、ズッと前から怖かったんだよ」
これが、隠す所の無い私の本音。
人に求められてるだの、なんだの言っても。
一番重要な崇秀さんや、大好きな奈緒ネェ、それに真琴ちゃんが、こんな私を必要としてくれなきゃ、こんなものは、なんの意味も持たない。
だから今回、呼んで貰えなかった事が凄くショックで、こんなにも取り乱してしまった。
他の人から聞けば『馬鹿じゃないのか?』って思うかも知れないけど、私にとっては、そんな些細な事でも重要な事だから……
「見捨てられるのが怖いだと?」
「うっ、うん。特に奈緒ネェはね。私が、散々あんな風に酷い事をしたのに、なにもなかった様に、本当の妹みたいに接してくれてるでしょ」
「あぁ、そうだな」
「その上ね。そんな私を嫌う処か『これからも、みんなに楽しく生きて行こうね』っとまで言ってくれた。……そんな、奈緒ネェの言葉が嬉しかった反面。私には、なんでそんな心境に成れるのか、理解出来なかったのよ」
「あぁ、まぁ、向井さんの考えは、少し特殊だからな」
「そうなの。だから今回ね。ネストに呼んで貰えなかった時、とうとう、その堪忍袋の緒が切れたんだと思って。……だから私……こんなミットモナイ真似までしちゃって、崇秀さんだけでも繋ぎ止め様としたの。……ごめんなさい」
こんな体に生まれなければ、この気持ちは解らないと思う。
男で育ってた者が、突然、女に成り。
女として生きて行ってるって言うのに、それを知ってる人間が、誰一人として私を差別したりしない。
それに付け加えて、私は、ヤクザの組長の息子だったって言うのに、こんな媚び諂った女に成ってしまっているのにだ。
こんな気持ちの悪い事実、普通なら受け入れられる事じゃないのに。
それでも誰一人として、私を奇異な眼で見る人は誰も居らず。
それ処か、誰も彼もが、最初から私が女で生まれて来た様に扱ってくれている。
そんな中にあって、特に奈緒ネェは、元私の彼女。
本来なら正気を保つのさえ難しい現状の筈なのに。
彼女は、その全てを受け入れてくれた上に、私が女として生きて行き易い様に色々道を示してくれたり、事がある毎に、毎回気遣ってくれていた。
これはもぉ、常識の範疇を越えている。
故に私には、今現在に置いても、彼女の気持ちが、どうしても理解出来ないでいた。
だから今回、そんな大切な人達から、とうとう見捨てられる時が来てしまったのだと思い込んでしまい、私は、あんなに取り乱してしまったのだろう。
「そっか。どうやっても、その気持ちは残っちまってたんだな」
「うん。ごめんね。ヤッパリ、男であったと言う事実からは、どうやっても逃げられないよ。そこを有効活用してる私は、特にそうだね」
「あぁ、そこかぁ。俺の余計な一言が、オマエを、そこまで苦しめてたとはな」
「うぅん。そこはそうじゃないの。それを実行するのも、しないのも、それは私の自由。崇秀さんは助言してくれただけに過ぎなんだよ」
「けどよぉ。事実、それでオマエを苦しめてたんだったら。そんなもん、助言でもなんでもないんじゃねぇか?」
そんな事はない。
そうやって苦しんだ反面、そこを有効活用したからこそ。
たった1年間で私は、今のこの立ち位置まで行けたんだと思うし、女性としても生きられてるのだと思う。
だから、そうやって自分が納得して使ってる以上、崇秀さんに、なにも罪も無い。
「あぁ、でも、もぉ良いんだ。私は、此処まで来れたのは、その崇秀さんの助言のお陰だから、崇秀さんが変に気負うのは辞めて。その責任まで持って行かれたら、私の立つ瀬が無くなっちゃうよ」
「そっか。じゃあ、もぉそこに関しては、なにも言わねぇぞ」
「うん。ありがとう」
「けどな、眞子。オマエが、そうやって思うのなら。オマエは向井眞子であって、向井眞子が、そうやって構成された人間だってのも事実なんだぞ。だから、俺や、向井さんが、そんなオマエの事を裏切るなんて真似は絶対にしない。眞子が、眞子である以上な」
「……そうだね。解ってるんだけどね」
難しいんですよ。
「それとな。こんな機会だから、此処で序に言って置くがな。どんなに馬鹿馬鹿しい小さな悩みでも、悩んでるんだったら、包み隠さず、俺か、向井さんに言えな。綺麗事無しに、全部、正直に答えてやるから。オマエの悩みは、俺達の悩みでもあるんだからな。こう言う事はキッチリと共有させて欲しい。……良いか?出来るか?」
早くも対処法を打ち出してくれてる。
それに、私の悩みを、自分の悩みとまで言ってくれてる。
それなのに私って……本当に馬鹿だよね。
でもね。
怖いって意思は、本当に怖いモノでね。
どれだけ信用して、信用して、信用し尽くしても、沸いて来るものなんだよ。
それは、いつまで経っても、永遠に消える事のない悩みなのかも知れない。
けど、もぉちょっと前向きに成らないとね。
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【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
どこまで行っても、頭にコビリ付いて離れない『この眞子の意思』
それが例え、今現在、問題なく女性としての生を全うしていようとも、自然と湧いてきちゃうみたいですね。
まぁでも崇秀や奈緒さんが、こうやって大切に眞子を見守ってくれてる以上。
本編で最後に眞子が語った様に、少しづつでも「前向き」に成らなきゃいけないのかもしれませんね。
頑張れ、頑張れ!!
さてさて、そんな中。
崇秀の気持ちに救われた眞子は、この後、どういう感じになるんでしょうね?
少しは成長してくれると良いんですけどね(笑)
……って感じの話を、次回は書いていこうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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