1367 ハミ子

 ネストでお酒を飲んできた理由には納得出来たものの。

それが、倉津君や奈緒さんと一緒だったのでは、眞子にとっては話が違うらしく……


***


「いや、だからな。偶々、あの2人とネストで居合わせたから、ライブの成功を祝って一杯だけ付き合ってきた、って言っただけだが」

「ぐすっ……ひゅ、ひゅ……酷い……そんなの、余りにも残酷だよ……」

「へっ?ちょ、ちょっと待て眞子。オマエ、なんで泣いてるんだ?」

「だって……だって私、みんなから、1人だけハミ子にされた……」

「はぁ?オマエをハミ子だと?別にオマエをハミ子になんかしてねぇよ」


違うよ。


違うよ崇秀さん。


違うんだよ。

これは、そう言う単純な解釈じゃないんだよ。



「ハミ子にしてるよ。……だって、奈緒ネェね。これからも4人で楽しく、こう言う関係を続けて行こうねって言ったもん。……なのに、私は、その場には呼んで貰えなかった。……だから奈緒ネェは、多分、もぉ私なんてイラナイんだよ。だから、凱旋ライブのお祝いの筈なのに呼んでくれなかったんだよ」

「ちょっと待て、ちょっと待て。なんでこの程度の事で、そんな珍妙な発想になるんだよ?向井さんはな。俺が『眞子はグッスリ寝てる』って言ったから、多分、気を遣って電話しなかっただけだろ。そんな他意はねぇって」

「違うもん。奈緒ネェは、いつ何時電話をしても、みんなが集まってるなら、私が、直ぐに駆け付けるのを知ってるもん。それなのに、敢えて、今日は電話をしてくれなかった。……だから私だけ、もぉ4人の中から外されたんだよ。仲間外れにされたんだよ」


多分、間違ってない。


去年の横浜アリーナの時も、奈緒ネェは、私が行った瞬間に、私との競演を喜んで申し出てくれた。

そりゃあ、この時は、まだ真琴ちゃんと言う認識が高かったから、そうなっても当然だったのかも知れないけど。

4日前の東京ドームのリハーサルの時でも、自分が楽しいと思ったからこそ、私をドームに招待してくれた。

それに、一昨昨日、一昨日も、楽しいからこそライブに参加させてくれた。

だから『楽しい事がある時』は、私の体調を無視してでも、こうやって必ず呼んでくれてる。


……でも、今回に限っては、奈緒ネェの『大切なお祝い』なのにも拘らず、私は……奈緒ネェに呼んで貰えなかった。


今にして思えば、一昨日のライブが終わった後。

崇秀の家に泊まってくれた時、奈緒ネェは気に成る言葉を言っている。


『4人で仲良くやろうね』って言ってくれた時『眞子は眼が離せない我儘娘だからね』……って。


これってね。

聞き方の拠れば、もぉ嫌気が差してたからこそ、本音がポロッと零れ落ちたんじゃないのかなぁ?


それでその後、私の『アソコ』を触った時。

私が奈緒ネェの指に感じて喘ぎ声なんか出しちゃったから、本当に心の底から私の事が嫌になっちゃったのかも知れない。


気持ち悪いって、思われたのかも知れない。


これだけ証拠が揃ったんじゃ『嫌われた』と認識せざるを得ない。


だから、きっと、4人で仲良くって言ったのに……呼んで貰えなかったんだよ。


本当に嫌われちゃったんだ。



「アホ臭ぇ。向井さんが、オマエを、そんな風に思う訳ねぇだろ。なんの根拠があって、そんなアホな事を言ってんだ、オマエは?」

「もぉ良いよ。……もぉ聞かないで」

「いや、オマエなぁ。自分に浸ってねぇで、ちゃんと言わなきゃ解んねぇだろ」

「もぉ、良いの。私が全部悪いんだよ。だから、呼んで貰えなかったのも、自業自得だと諦めるよ」

「オイ、眞子って!!」


浸ってる訳じゃないんだよ。

ただ、今までの奈緒ネェの行動を分析した結果なんだよ。


だから、この結果は間違ってないと思う。


……けどね、崇秀さん。

奈緒ネェと、真琴ちゃんの件は、今後、どうにかして関係を修復して行くつもりだけど。


崇秀さんだけは……



「でもね。崇秀さんは、崇秀さんだけは、私を見捨てないでね。私、私ね。奈緒ネェに見捨てられるのも、真琴ちゃんに鬱陶しがられるのもなんとか我慢出来るけど。崇秀さんに見捨てられるのだけは、絶対に無理なの。そんな事に成ったら、もぉなにもかもが終わりだよ。だからお願い。私を見捨てないで……」


あっ……今、自分の言葉で思ったんだけど。

ひょっとして奈緒ネェは、私から、なにもかもを奪うつもりなんじゃないのかな?


私がイラナイ子だって判断したから、全てを奪い去るつもりなの?


だって崇秀さんは、奈緒ネェにとっても大切な親友なんだもんね。


・・・・・・


……復讐?

今まで散々迷惑を掛けてきたから、これは復讐なのかなぁ?


でも、もしそうだとしても、私は、なにも言えない。

それだけの事を、私は、散々奈緒ネェにしてしまっているんだから。


だったら、なんとかして、自分で、崇秀さんの気持ちを引き止めなきゃ。


どんな手を使ってでも……


そう思った私は、咄嗟に……



「オッ、オイ、眞子。オマエなにやってるんだよ?」

「あっ、あの、なんでも言う事を聞きますから。私、私の事を、どんな風に扱っても良いですから。あの、あの、見捨てないで。崇秀さんは、私、私だけを見て下さい」


私は一番最低な手を選択した。

自身の『女の体』を使って、なんとか崇秀さんの気持ちを、私に引き止めようとした。


こんなのが、最低な行為だと言う事は、自分でも十分に理解してる。


けど、これぐらいしても、まだ足りない位だ。



「オマエ……」


怒ってるの?


でも、これぐらいしか、私にはないんだもん。

持ってるモノがなにも無きゃ、こうするしか方法を想い付かないんだもん。



「どうか、眞子の此処を使ってやって下さい。その代わりに、私を見捨てないで下さい」

「チッ……あぁ、そうかよ。何を言っても、聞く耳を持たないつもりなんだな。だったら良いだろう。但し、後悔するなよ眞子」

「あっ……あぁ、はい」

「あぁ、そうか。なら、あい、解った」


そう言った後、崇秀さんは徐に携帯電話を取り出し、誰かに電話をし始めた。


なに?


なにをするつもりなの?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


あぁ……これはやっちゃいましたね。

普段の毅然とした眞子なら、こんな事に成らないんですが。

そこに倉津君や奈緒さん、それに崇秀なんかが話の内容に加わってきたら、彼女にとっては別問題。


少しでも、この3人が『自分から去ってしまう行動』を感じてしまったら、即座にネガティブモードが発動してしまい……こんな悪い方向での妄想まみれの酷い有様に成ってしまいます。


所謂、メンヘラ爆発ですね。


まぁそれ程までに怖がるぐらい、これは眞子にとっては重要な話だって事でもある訳なのですが……


さてさて、そんな中。

ナントカ崇秀だけは引き止めよとして、自らの体を差し出そうとした眞子なのですが、なにやらそれに対して崇秀が、行動に移すような雰囲気。


一体、崇秀は、何をするつもりなんでしょうね?


次回は、その辺を書いていこうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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