1359 奈緒さんの要望の行方

 奈緒さんが提唱する『家族ごっこ』

その冒頭部分だけを話したら、全てを理解したような態度をとる崇秀だったので。

どうやって、そこに行き着いたかの説明をして貰った上で、更に核心的な説明を……


***


「どういうのですか?」

「一昨日……いや、一昨昨日に、2人が俺の家に泊まりに来た時点で、向井さんから、眞子に、この意思を伝えられてたと推測してたら、どうだ?」

「えっ?まさか、そんな事まで知ってたんですか?」

「まさかな。けど、それに確信に近いものは得てたけどな」

「それって……」


なんだ?

いつ奈緒さんは、そんなものを眞子に伝えたんだ?

奈緒さんと、眞子が2人で、眞子の部屋に居た時か?


けど、もし仮に、それが眞子に伝わっていたとしても。

俺には、眞子が、崇秀の部屋に戻って来た時、特に大きな変化は見受けられなかったがな。


あの時アイツは、いつも通りで。

俺や、奈緒さんと一緒に、崇秀が作った曲に四苦八苦してた記憶しかねぇからなぁ。


そんな素振りさえ見せなかったのに……


ひょっとしてオマエ、眞子の部屋を盗聴でもしてたのか?



「向井さん、変な事を考えるなよ。……俺が確証を得たのは、眞子の態度だからな」

「眞子の態度……ですか?」

「そぉそぉ」

「そぉそぉって言われても。眞子の態度は、普段と何も変わらなかった気がしますけど」


ですよね。


俺も、全く気付かなかったッスよ。



「そうかなぁ?俺は、明らかにアイツの態度が、おかしいと気付いたけどな」

「どこら辺がですか?」

「意外と見えてないなぁ。アイツ、完全に浮かれてたじゃないか。まるで『なにかを、向井さんと理解し合えた様な顔』をしてね。俺は、そこを見逃さなかったぜ」


ほぉ……奈緒さんでも見逃す些細な所でも、崇秀は、まったく見逃しはしないんだな。

これは、眞子を恋愛対象として見ているからこその所業か。


けど、此処の差が有ったからこそ、崇秀は、全てを連結させるに至った訳だな。


これが全ての解答か。



要するに『愛』なんですな。



「・・・・・・」

「けど、向井さんが見逃すのは、ショウガナイ話なんだよな」

「どうしてですか?」

「そりゃあ、感情の変化が生じた瞬間からズッと眞子を見てれば、表情が同じに見えてもおかしくはないだろうに。それに、自分も同じ心境になってりゃあ、尚更この辺は見逃しやすいわな。……これは、最も初歩的なミスだよ」


確かに、そりゃあ言えたな。


……じゃあ、そんな大事な事を見逃してた俺は?


ただのボンクラか?



「あぁ……そっか」

「だろ。まぁ、全体的な種明かしをすりゃあ、俺の推理なんて、所詮こんなもんだ。大した話じゃないってこったな」


いや……全ての種明かしをして貰ったからこそ理解は出来たけど。

俺の単独じゃあ、とても、そこまでは行き付く事は出来なかったぞ。


故に、大した事有ると思うぞ。


だからボブに次いで、オマエも『名探偵』を名乗っても良いぞ。



「さて。……そこで質問なんだが。向井さんは、具体的に、どんな『家族ゲーム』がしたい訳だ?」


おっ……時間の短略をしたいのか、急に話題が奈緒さんの話に戻ったな。



「えっ?……あぁ、いや、そんな大それた話じゃなくてですね。今みたいな関係を、永遠に4人で続けて行きたいかなぁって。ただ、それだけです」

「ふ~~~ん。なるほどねぇ」


あぁ……話題が戻ったのは良いが。

崇秀が、こう言う反応を見せたって事は、心の中じゃあ『微妙だな』って思ってる可能性が高そうだな。


これはまた少しマズイ展開になったもんだ。


けど、俺としては楽しそうだから、非常に受け入れて欲しい要望ではあるんだがな。

実際の話、喧嘩しながらでも、オマエとツルんで遊ぶのは悪くねぇからな。


それに……



「なぁ、崇秀。良かったら、奈緒さんの、この要望を聞き届けてやってくれよ」


大切な彼女の切なる願いだしな。



「ダメ……ですか?」

「いいや。そんな事で良いなら、別に構わねぇよ」

「えっ?嘘?そんな簡単に」

「マジか?オマエ、さっき喋りすぎて、知恵熱でも出てんじゃねぇのか?」


オイオイ……嘘だろう?

無条件で、コイツが奈緒さんの話に乗るなんて考えてもしなかった。


余りの拍子抜けに、腰が抜けそうに成ったぞ。



「はぁ?いやいやいやいや、ちょっと待てよ。2人して、なんだよそれ?オマエ等、俺の事なんだと思ってやがるんだ?」

「いやいや、だってよぉ。業突く張りのオマエが、無条件で人の要求を呑むなんて、頭が狂ったとしか思えねぇだろ。……まぁ、生まれた時から、頭は狂ってるけどな」

「ほぉ~~~っ、じゃあ、条件を付けても良いんだな?オマエが、それを望むなら、飛びっ切りの条件を付けてやるぞ」

「あぁ!!クラ!!思った事を口に出さないの!!」


しっ……しまったぁ!!

また無意識の内にやっちまったぁ!!


けど奈緒さんも、そんな風に思ってた訳ですな。

なら、俺の今の台詞は奈緒さんの代弁と言う事で……罷り通りませんね。


すんません。



「あぁ、そんなに焦らなくても良いぞ。向井さんも倉津とは運命共同体って事で、勿論、一括りだからな。面白い条件を付けてやる」

「嘘でしょ。……折角、上手く行ってたのに。もぉクラ、頼むよぉ」

「しゅみましぇん」


いや、ホント申し訳ないッス。


けど、あれッスよ。

コイツは、こう言うのを楽しんでるだけの性質の悪い生き物なんで、別に出された条件を飲まなくても、多分、この関係は一生継続しますよ。


だからそこだけは心配ないッス!!


大丈夫ッスよ、大丈夫ッス!!

(↑自分が居た堪れなくなって、自分で必死にフォローする俺)



「さて、そうなると、お2人さんに出す条件だな」

「なっ、なにをしろって言うんだよ?へっ、変な事を言うなよ。簡単な奴な、簡単な奴」

「まぁ待てって。この場合に於ける『A級戦犯』はオマエだ。だから、その処遇を後回しにするのが筋ってもんだろ」

「ゲッ!!」

「んじゃま。まずは、向井さんの方から行ってみるか」

「ちょ、ちょっと待て!!その前に眞子は?眞子も、そこに含まれてるのか?」


そこまで巻き込んだら。

後で、口酸っぱく、なにを言われたもんか解ったもんじゃねぇからな。


事は重大だ。


……って、ヤベェ!!また余計な事を言っちまったか?


まったく、俺って奴は救いがないな。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


ってな感じで。

崇秀が推理出来た本当の理由は『眞子の態度』だった訳ですね(笑)


そして逆に倉津君が気付かなかった理由は『作曲に必死になっていたから』だったりします。

皆さんもご存じの通り、この子は『1つの事に集中しだすと、他の事が見えない性質を持ってます』からね(笑)


さてさて、そんな中。

また倉津君が余計な事を言って、崇秀に必要のなかった条件を出される羽目になったのですが。


一体、崇秀は、どんな条件を叩き付けてくるのか?


次回は、その辺を書いていこうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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