1357 いよいよ崇秀に『あの話』を

 崇秀の眞子に対する本音(?)を聞き出した倉津君と奈緒さん。

珍しくも、それがあまりにも本気の話だったもので、驚くと同時に感動すらしてしまう。


だがこれでは、本来の目的であった祝賀会ではなくなってしまっているので……(笑)


***


「……ってかよぉ。お2人さん。俺が話をするのも結構なんだがな。俺は、向井さんのライブ成功を祝う為に残ったんだぞ。それをなんで、俺と、眞子の話をせにゃあならんのだ?なんか、方向性間違ってねぇか?」


確かにな。

これじゃあ、奈緒さんの祝賀会としての意味が全然ないな。


……けどな。

奈緒さんには失礼なのかも知れないけど。

俺にとっちゃあ、この崇秀の眞子に対する本音を聞けたのは、寧ろ、大収穫。


非常に有意義な時間だった。


正直な所、今までは崇秀の性格が性格なだけに、眞子と付き合うのにも不安な部分が無かった訳じゃなかったからな。

なので、此処を聞けただけでも十分に価値の有る時間だった。


だから今はもぉ、オマエ等が付き合う事に一欠片の不安はねぇ。


オマエ等……直ぐにでも、結婚しろ。

結婚資金は、全部俺が祝儀として負担してやるから、結婚しろ。



「だな。……完全に方向性を間違えた感じだな」

「だろ」

「つぅかよぉ。オマエが、クダラネェ眞子との告白話なんかを長々とすっから、おかしな方向に行ったんだろが」

「アホか?それを言うなら、オマエが、最初に、俺にそんな話を持ち込んで来たから、こう言う事に成ったんだろうが。それぐらい憶えとけ、この海馬欠乏症」

「だな。……そうだな。じゃ、じゃあよぉ。早速、気を取り直して祝賀会をするか」


まぁ『海馬欠乏症』なんて病気はないから、敢えては無視してやるが。

この話自体は、以前からズッと気に成ってたんだから、良いじゃんかよ。


それとな、余計な心配しなくても、今から簡単な祝賀会をすりゃあ問題はなしだ。


それにだな。

寧ろ奈緒さんも、今のオマエの話には十分な満足を得てると思うぞ。


この人も、大概、眞子を溺愛してるからな。



「ボンクラ。どうやって祝賀会をするつもりだ?店……もぉ閉店時間を過ぎてるぞ」

「マジで?……うわっ!!マジだ!!」


5時を過ぎてるから、タイムア~~~ップ!!


……なんてオチだよ。



「そんじゃま、そう言うこったから。悪いけど。そろそろ行かせて貰うわ。……またな、お2人さん。祝賀会は、また次回にでも、ゆっくりやろうぜ」


そう言って、崇秀は足早に店を去って行く。



 ……の筈だったんだが。



「あっ、あの、仲居間さん!!」

「んあ?なんだ?」


……っと、奈緒さんが、崇秀のシャツの裾を引っ張って呼び止めた。


いやいやいやいや、奈緒さん。

店の閉店時間が、もぉとっくに過ぎてる時間帯なのに、この期に及んで、なにを言う気なんッスか?



「あの、もぉ少し、別のお話が有るんですけど」

「別の話?なんの話だ?……俺を、ワザワザ引き止めるって事は、バンドの話か?」

「いえ、そっちの話じゃなくて、プライベートな話なんですけど」

「プライベート?……それって、長くなりそうな感じ?」

「あぁっと……少し」


あの話をするつもりか?


まぁ確かに、今さっき眞子の話を聞いた所だから、あの話をするには持って来いの機会。


今が絶好の機会だと言える……けどもだなぁ。

流石に、店の営業時間をオーバーしてる以上、あの話をするには時間が無さ過ぎる。


余り褒められた行為じゃないのも、否めないなぁ。



「ふむ……なんか重要そうな話だな」

「あぁ、はい。まぁ、重要と言うか、なんと言うか」

「そっか。なら、まぁ良いか。ちょっと待っててくれな。……親っさん。悪いが、もぉ少しの間、場所を借りてて良いか?」


……っと、奥の洞窟(厨房)に向って、熊髭に声を掛けた。


すると、厨房と言う名の穴倉から、髭熊親父の野太い鳴き声が聞こえてきた。



「あぁ?延長だと?営業時間は、とっくに終わってるんだがな。俺に、まだ残業をさせる気か?」

「いや、悪ぃ。片付けの邪魔はしねぇから、この隅の一角だけ借りれねぇか?ちょっとした用事が有るんだよ」

「……ったく、オマエだけは。なら、勝手に使え。こちとら、まだ昼の仕込が残ってる事だしな」

「悪ぃな。感謝する」

「構わねぇよ。但し、その一角の掃除だけはして帰れよ」

「あいよぉ~~~」


アッサリと了承を得やがったな。

大した交渉力だ。

いや、寧ろ、さっき払った1万円札が効果を現してるのかもな。


まぁ、そのお陰で奈緒さんが話を出来るんだから、与えられた掃除の業務を少しぐらいなら手伝ってやらなきゃな。


そこは安心しろ。


但し、俺が掃除するのは、ちょっとだけだぞ。



「さて……場所のキープは出来たぞ。っで、話ってなに?どんな用件?」

「えぇっと、その……」

「向井さん、悪いんだけど、早くしてくんない?店に無理を言ってるんだから、頼み事が有るならシンプルに言ってみな」


……生意気な言い方だな。

なんて、反論をしようと思ったんだけどだな。

此処で俺が下手に反論をしたら、散々文句を言われそうだし、無駄に時間をロスしちまいそうだから辞めておこう。


無駄な混乱を招くだけだからな。


それに、店の件は、オマエの意見の方が正しいからな。



「あの、あのですね」

「んあ?なんだ?」

「仲居間さん、家族に興味って有りますか?」

「家族?なんだ?突然すぎて、それじゃあ、あまりにも話が見えないな。俺のお袋の話か?」

「あぁ、いえ。そう言う本当の家族じゃなくてですね。他人と成立する家族って、興味有りますかって話なんですけど」


あぁ……奈緒さんにしては珍しく、気焦りして説明がついてないなぁ。


これじゃあ、幾らなんでも、崇秀も解り難いかも知れない。


話が、話なだけに、ちょっと、ややこしい方向の話だからな。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


話が流れてしまったので、祝賀会自体は失敗。

されど、そんな風に眞子の話が出たのを切欠に、奈緒さんがいよいよ『あの話』を崇秀にもっていく準備が出来ましたぁ♪


さてさて、上手く話せるのか?


次回は、その辺を書いていこうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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