1356 眞子に惚れた馴れ初め
崇秀が眞子を好きになった理由を聞き出そうとしたら。
崇秀の口ぶりからして、どうやら「同情で付き合ってる」様な雰囲気が醸し出されたので、やや倉津君が怒り出したのだが……
***
「オイ。オマエ、あんまふざけんなよ。そんな同情みたいなもんで、俺の大切な姉弟と付き合ってるのかよ」
「はぁ?……ったく、何を急に怒り出したかと思えば、このバカタレだけは」
「なにがだよ?普通、そんな話を姉弟が聞いたら怒るだろ」
「アホ。話は、最後までちゃんと聞け。まだそこで終わりじゃねぇんだよ」
「そっ、そうなのか?じゃあ同情とかで付き合ってる訳じゃないのか?」
「……当たり前だろうが、この蛸助。なんで俺が、同情で付き合ったり。そんな奴を『自分の半身だ』なんて言わなきゃイケネェんだよ。オマエ、馬鹿じゃねぇのか?」
「えっ?あぁ、まぁ、そうだな」
少し怒ってしまったが。
どうやら、これは俺の誤解だった様で、俺の予想は外れたみたいだな。
なら良かった、良かった。
もし、この眞子の話がOUTな方向だったら。
奈緒さんとの『4人での未来予想図』の話も、オジャンに成る所だったからな。
それも含めて、良かった、良かった。
「じゃあ、なんなんだよ?続きがあんだろ」
「いやな。そんな14年間も苦しんだアイツが、やっと念願叶って、去年の12月に自由になる体を手に入れただろ」
「おっ、おぅ」
「それで、その後、直ぐにアメリカツアーに行ったんだが。当然、あの見た目に、あの演奏だ。言い寄ってくる男は山程居た訳だ。……此処も解んだろ?」
「あぁ、勿論だ。眞子は、俺の自慢の姉弟だからな。けど、オマエが、アイツを好きになった理由は、まだ言ってねぇよな?」
「だから、慌てるなっての。順を追って話してんだからよ」
そうなのか?
でも、なんかよぉ。
オマエが、そう言う話をする事自体に、酷い違和感を感じるぞ。
ホント普段は、そう言う事を、なにがあっても、絶対に言わない様な奴なんだけどなぁ。
どうしたんだオマエ?
それに奈緒さんも、やけに、この話に喰い付いてるみたいなんけど、なんか気になる点でもあるんッスかね?
「そっ、そうか」
「おぅ。……っでな。話の続きに成るんだが。そんなモテてる状態の中にあっても。アイツは、それ等を全て拒否して、自分を磨き続ける事だけに専念し続けた。そんである日、突然な。出逢って間もない筈の俺に『好きだ』って、真っ直ぐな目をして告白して来やがったんだよ」
「じゃあ、それが好きになった理由で付き合い始めたって事か?」
意外と普通の話だな。
まぁ、眞子のやってる行為自体は浮世絵離れした話ではあるんだが。
2人の馴れ初めとしては、案外、普通な方だったんじゃねぇかな。
「まさかな。俺は、その程度じゃ靡かない」
だよな。
ヤッパ、それだけじゃ、変人の崇秀の心を動かすのは難しいよな。
「……ただな。その後に、思いも寄らない真実を知らされちまったから、俺は、アイツに心底惚込んじまう結果に成ったんだよ」
真実って、なんだ?
崇秀の心が揺れる程の真実って、一体なんだよ?
なんか、此処まで焦らされただけに聞くのが怖ぇな。
「なにが……あったんだよ?」
「アイツな。オマエの体の中に居た時から、ズッと、俺の事が好きだったんだってよ」
「へっ?へっ?そっ、そうなのか?」
「あぁ。体も自由意志もなく。話す事も出来ず。当然、告白も出来無い様な14年間をオマエの体の中で過ごしながら、一途に俺だけを想い。それで体を得た瞬間から、俺が好きに成る様にハンパ無い自分磨きを始めて大きな実績を作っていった。そんな俺の理想とも言える女を嫌いに成る理由が有るか?……俺は無いと思うぞ」
そっ……そりゃあ、そうだな。
そんな健気で真っ直ぐな女。
嫌いに成る理由なんて、どこにもないよな。
特に自らの手で実績を作り上げて行った所なんて、まさに崇秀の好み。
しかも、あの見た目だしな。
『惚れない理由が無い』とは良く言ったもんだ。
俺……ちょっと眞子の事を誤解してたのかも知れないな。
「・・・・・・」
「まぁアイツは、そうやって、俺みたいな変人を、ズッと好きで居てくれてた訳だ。だから俺はな。そんなアイツの気持ちに応える為にも、アイツの失った14年間を、なんとしても取り返してやって、幸せにしてやらねぇとイケネェと思う訳だ。それが、アイツに好きに成って貰った者の重大な義務だとも思えるからな」
……コイツ。
何食わぬ顔して、マジで格好良い事をサラッと言いやがるな。
しかも、その言葉通り、眞子が体を得てからと言うもの、アイツのやりたかった夢をドンドンと叶えてやって、全てを現実化させてやってくれてる。
まさにそれは『失った14年間を取り返す勢い』だ。
崇秀の言葉は全てが有言実行に基づいてるから、グゥの音も出ない程に格好の良い意見だな。
「そっかぁ。そんな裏話が有ったんですね。だから眞子を必要以上に優しく扱うんですね。……そう言うの、凄く格好良いですね」
「いやいや。向井さん、なにか誤解をしてる様だから訂正させて貰うけど。こんなもんは、なにも格好良くなんかねぇよ」
「どうしてですか?」
「別に俺が、一方的にアイツに、なにかを与えてやってる訳じゃねぇんだからよ」
「あっ……」
「そう言う事。さっきも言ったけどな。アイツが、俺の為に必死になって色々してくれてるからこそ、俺も、アイツを大切にしてやれるだけの話なんだよな。要はな。お互いの相互関係が上手く成立してるからこそ、俺とアイツの関係も揺るがないだけに過ぎねぇ。だからこんなもんは、恋人なら極当たり前の事で、なにも特別な事じゃねぇよ」
そうか。
そう言えば、眞子も与えられるだけじゃなく。
崇秀を想いながらも、日々の自分磨きを忘れず。
毎日毎日、試行錯誤を繰り返しながら、実績を積み上げて行ってるんだもんな。
必至に崇秀との関係をキープしようとして足掻いてるんだもんな。
だからこそ、こう言うお互いを認め合えて、人が羨む様な様な素晴らしい関係が成立してるんだな。
でも、それだけに、眞子に、こう言う正当な評価を下してくれてる奴が、アイツの彼氏であって本当に良かったとも思える。
普通の奴なら、此処まで徹底した事は出来なかっただろうしな。
崇秀に、眞子の事を任せてたのは、本当に正解だったな。
いや寧ろ、此処まで眞子の思いにキッチリと答えてくれてる崇秀には、感謝すらしたいと思う。
似た者同士のカップル。
ホント眞子には、崇秀しか似合わねぇよ。
……しかしまぁ、その関係すら当たり前と称してしまうとは、本当に崇秀はスゲェ奴だよな。
俺も……奈緒さんと、コイツ等みたいな関係になりたいもんだな。
いや、奈緒さんが頑張ってくれてる以上、もっともっと気合を入れて、そうならなきゃイケナイんだろうな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
崇秀……なんか、ある事ない事をベラベラ話、完全にデッチ上げをしてましたね(笑)
なので『一体、なんでこんな真似をしたのか?』っと不思議に思う読者さんもいるとは思うのですが。
これにも、ちゃんとした理由がありましてね。
なにを隠そう。
この機会に『倉津君のフォローアップをしようとしてる』だけだったりするんですよ♪
……って言いますのもね。
普通に倉津君から視点で見たら、崇秀の眞子に対する執着は異常なもの。
普段の崇秀の行動が崇秀なだけに、体を得たばかりの眞子に執着するのは、どうにも不可解。
なら、此処をキッチリ解決しておかないと、倉津君に余計な心配事を増やす事に成りかねないので、こうやって崇秀は『眞子に惚れた理由』を話してた訳ですね。
そして奈緒さんも、それに勘付いたから。
崇秀の話に、やけに喰い付いていた、って話でもあります♪
さてさて、そんな中。
倉津君も、そんな崇秀の話を聞いて妙に納得したみたいなのですが。
これ、なんの為に崇秀が此処に残ったんでしたっけ?
なんか趣旨がズレてる様な気がするんですが……気のせいですかね?(笑)
ってな感じの話を、次回は書いていこうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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