1354 あれ?オマエって、そんなキャラだっけ?

 奈津樹さんの事で凹んでる倉津君に追い打ちを掛けるが如く、奈緒さんが崇秀と遭遇する。

そして彼女は、例の話がしたいのかして、崇秀を引き留めるのだが……


***


「ふむ。……いや、辞めて置くよ。これ以上2人の邪魔しちゃ悪いしな。だから悪いが、今回は遠慮する。明日、明後日とは休みをとってるんだが、まだ、ちょっと野暮用も残ってるしね」

「……そうですか」


意外にも、此処での予想は外れたが。

そのせいで奈緒さんがガッカリした表情を浮かべて凹んじゃったな。


この様子じゃ奈緒さん、この話の流れに乗って『4人』の話を、ちょっと崇秀にしようとした感じだな。


だったら、こりゃあ、どうしたもんだ?


アホンダラァを『引き止める』か?『引き止めない』か?


俺自身の気分が沈んでるだけに、中々究極の選択だな。


……なんて日和った事を思いはしねぇよ。



「オイ、崇秀よぉ。そんな仕事ばっかりしてねぇで、偶には、ちょっとぐらい付き合えよ」


俺は、空に成り掛けのジョッキを振りながら、出来るだけ明るく、奴に向って、そう言った。


勿論、こうする理由は、こう言った方が、奈緒さんが喜んでくれるのが十分に理解出来る状況だからだ。

アホンダラァを引き止めるのが嫌でも、奈緒さんの為にもアホンダラァを此処に呼ぶのが、俺の務めってもんだからな。


彼女を喜ばせるのは、彼氏の役目。

なので俺には、これ以外の選択権なんてモノは最初から存在しない。


だからオマエも、その辺の俺の気持ちを察して、奈緒さんの為に、もぉちょっと付き合えな。


当然、オマエにも選択権もなければ、拒否権も無しだがな。



「ほぉ……どこに隠れてやがるのかと思ったら、そんな隅っこに、コソッと存在してやがったか」

「オイコラ、テメェ!!人様をゴキブリみたいな扱いしてんじゃねぇよ」

「しかしまぁ、向井さんとの貴重な時間に裂いてまで、自ら、俺をお誘いとはな。なら、なにか一杯ぐらい付き合うのが筋ってもんだな」


そうだ、その通りだ!!


折角振ってやったゴキブリネタをスルーしたのはムカツクが。

大親友の俺が誘ってやってるんだから、此処に残るのはオマエの義務ってもんだ。


それが人としての正しい有り方だ。


だから、これはなにがあっても断っちゃイケネェよ。


そうなった場合、俺が非常に困るから……


***


 ……そんな事を密かに思っていると。

大馬鹿者は、火を着けたタバコを咥えたままで、奈緒さんと一緒に席の方にやってくる。


そんで奈緒さんは、俺の横にチョコンと可愛く座って、アホンダラァは、俺の正面にドカッと厚かましく着席する。

その後、崇秀は素早く携帯電話を取り出したのも束の間。

奈津ネェに電話を掛けて『テキーラ』をストレートで3杯、テーブルに持って来てくれる様に頼んだ。


此処は恐らく、店のラストオーダーが終わっているから、他の客の気分を害さない様にする為の最低限の配慮だろう。


どんな時でも、さり気ない気遣いを忘れない野郎だな。


***


 ホンで直ぐに、奈津ネェが『テキーラ』と『チェイサー』を3つづつ運んで来てくれたんだが。

彼女は、この場の雰囲気から『自分が居たら、俺達の邪魔に成るかも知れない』と自己判断してくれたのか、即座に、この場を立ち去って行った。


まぁ寧ろ、時間が時間なだけに、ただ単に、もぉ『あがりの時間』なだけなのかも知れないけどな。


……っで俺達は、そんな厨房の奥に消えて行く奈津ネェの後姿を、最後まで見送った後。

各々がグラスを片手に持ち『コン!!』小気味良い音を立てて乾杯をする。



「「「お疲れさ~~ん」」」


勿論、乾杯の後は、テキーラのストレートを一気に飲み干すのが一般的な流儀。


だから、全員が一気に飲み干す。


皆さん、流石に程良く遊んでらっしゃるだけに、此処ら辺のルールは完璧に把握しておりますな。



「けほっ……うわっ……結構、キッツイね」


……なんと思ってたら。

奈緒さんが、テキーラを煽った後に、チェイサーをコクコクっと飲み始める。


これって……



「ちょ!!だっ、大丈夫ッスか、奈緒さん?」


ひょっとして、アルコール度数の高い酒はダメでしたか?



「うぅん。これぐらいなら大丈夫、大丈夫。でも、久しぶりにテキーラを飲んじゃったもんだから、喉が驚ちゃったみたいだね」

「そうッスか。でも、良かったッス。それなら、まだ安心ッスね」


一瞬、テキーラを飲むのが初めての体験なのかと思って吃驚しましたよ。


なんせ、こう言う純度の高い酒ってのは、飲み慣れて無いと、喉が焼けて、かなりキッツイっすからね。



「ハハッ……相変わらず、仲の良いこったな。それに、心配性の過保護野郎も健在だな」


そんな俺と、奈緒さんの遣り取りを見て、崇秀はケラケラと屈託なく笑っていやがる。


けど、あぁそうさ、仲は良いさ。

寧ろ恋人同士の2人が仲良くて、なにが悪いんだよ?


……つぅかよぉ。

オマエだって、大して人の事を言えた義理じゃねぇじゃんかよ。


いっつも、眞子の事を散々甘やかし捲くってるくせによ。


よくもまぁ、そんな事が言えたもんだな。



「良く言うな。オマエだって、もし眞子が、奈緒さんと同じ事を言ったら。直ぐに『眞子、大丈夫か。無理しなくて良いんだぞ』とか言って、心配するくせによぉ」

「俺が眞子を心配だと?……あぁ、かもな。……いや、かもじゃなくて、確実にそうだな」


あれ?なんだよ?なんだよ?

これはまたオマエらしくもない言葉を吐いたもんだな。


いつもなら『そんなもん自己責任だボケ』っとか言って切り捨てる筈なのによぉ。


気持ち悪いぐらい、素直な態度を取るじゃねぇか?


なんか気持ち悪いぞ、この子。



「なんだよ、それ?オマエなりの惚気って奴か?」

「いや、惚気なんかじゃねぇよ。ただの本音だが」

「あれ?仲居間さんって、そんなキャラでしたっけ?」

「あぁ、他の奴ならいざ知らず。アイツに関してだけは、そんなキャラだな」


それって……眞子を必要以上に『特別扱い』してるって事か?

オマエにとって、アイツは『特別な存在』だって、俺達にアピールしたい訳か?


まぁけど、今、改めてコイツに、そう言われてみれば、そうだよな。

崇秀の眞子に対する執着心は、ちょっと普通じゃねぇもんな。


寧ろ、異常だと言っても過言じゃない。


それを『特別扱い』してると考えれば、強ち、そこは間違いでもなさそうな気がする。


それにコイツは、元々そう言う事を人前で言う様な奴じゃねぇしな。

それを言わせるだけでも、眞子は『特別な存在』と認識してると考えられなくもないな。


まぁ俺としては、そうやって姉弟である眞子の事を大切にしてくれてるのには非常に有り難い話ではあるんだけどよぉ。

それだけに『なんでコイツ程の奴が、そこまで眞子に固執するんだろうな?』とは疑問には思うな。


ならそこら辺に関して、ちょっと探りを入れてみるか。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


あれ?

ライブ成功の祝賀会が名目で始まった筈なのに、何故か倉津君が『崇秀と眞子の関係』が気になり始め。

話が逸れそうな雰囲気ですね(笑)


まぁ言うて。

倉津君は、目の前にある興味事には我慢できない子なので、これはもうしょうがない事なのかもしれませんね(笑)


さてさて、そんな中。

倉津君は、この話をどうやって切り出していくつもりなんでしょうか?


次回は、その辺を書いていこうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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