1352 えっ?そうなのか?
倉津君が妙に幸せだった事に不安を感じていると、崇秀が現れた。
なので即座に身を隠していたら、奈津ネェと崇秀が、なんだか良い雰囲気に成り。
これはひょっとして『逢瀬じゃねぇだろうな!!』と疑ってしまう倉津君であった。
***
「いやまぁ、そんな用事って程の大層な話じゃないんだけどな。奈津ネェって、あれだろ。来週から2年間程イギリス留学するんだろ。だから、ちょっと頼み事をな」
あぁ、そうなんか?
一瞬、逢瀬でもするのかと思ったが、これはそう言う事ではなく。
奈津ネェって、来週からイギリスに留学をするんだな。
全然知らんかった。
んで崇秀は、それを知ってたから、奈津ネェに会いに来てただけなんだな。
これはまたトンデモナイ早とちりをしちまったもんだな。
所で、そんな奈津ネェに頼み事ってなんだ?
ただ単に、選別を渡しに来ただけじゃねぇのか?
「頼み事ねぇ。……はぁ、またアンタの事だから、面倒な事を押し付けるつもりなんじゃないの?」
「いいや、これはそんな身構える様な大した頼み事じゃねぇんだよ。ガキでも出来る様な、行きがけの駄賃程度の頼み事だ」
「どうなんだか、怪しいもんだね。……っで、結局私になにをしろって言うのよ?」
「なぁ~にな。向こうに着いたら直ぐに、ちょっとイギリスの美容情勢ってのを調べ続けて欲しいんだが。頼まれてくんねぇか?」
「あぁ、なんだ。何かと思えば、そんな事で良いんだ。けど、調べるのは良いけど。留学期間中ズッと情報を集めろって言うなら少々高く付くわよ」
「あぁ、別に高く付いても構わねぇよ。それで1年間、イギリスの生の情報が得れるなら問題はねぇ。諸経費抜きで240万。依頼を受けてくれるなら、先払いの即金で払って置くが」
「あら、豪儀ね」
「勿論、足りない分は、随時連絡をしてくれれば、その都度送らせて貰うよ」
ほぉ……どんな頼み事をするのかと思ったら。
インターネットで情報を引き出すのが全盛の時代に成りつつある昨今に、これはまたアナログな事を頼んだもんだな。
なんか、そこに意図する所でも有るのか?
「なら、承った。報酬も悪くないしね」
「そっか。じゃあ、これで頼むな」
「領収書は要る?」
「イラネェよ。そんなもん、ドッカの部署で、経費として適当に落として置くからよ」
それはそうと大人な会話だな、オイ。
中学生と、高校生のする様な話でもなきゃ、動いてる金額も普通じゃねぇな。
こんなもん、完全に取引をしてる時のビジネスマンの会話じゃねぇかよ。
まぁ言うても、2年間で240万なら、月換算にすれば10万だから、そこまで大きな金額ではないんだが。
これを奈津ネェの留学期間中の美容代と考えれば、かなりの金額になるよな。
ひょっとして崇秀の奴。
それを見越して、この依頼を出したのかもしれないな……餞別として。
「あっそ。そりゃあ、楽で助かるわ。……って、崇秀」
「んあ?」
「豪く多く入れてくれてるわね」
しかも、依頼料より多く入れてやがったか。
コイツだけは……
「なぁにな。向こうに行ったら、なにかと入用だろ。だからその余った金は、適当に生活費の足しにでもしてくれ」
「はぁ、もぉアンタって子は……ホント変わらないわね」
「なにがだよ?」
「餞別を渡してくれるなら、素直に渡してくれれば良いのに」
「いいや。これは、ただの仕事の依頼だ。餞別なんて渡す気は毛頭ねぇよ」
「よく言うよ」
……なんだこれ?
マジで、なんだこれ?
なんか言い様のない格の差を見せ付けられてる感じだな。
方や、長い付き合いなのに『奈津ネェが留学する事すら知らず』
方や、同じ長さの付き合いの筈なのに『留学を知ってる上に、年下のクセに餞別まで渡してる』
ホント、なんじゃこりゃあ?
……ってか、流石に、こりゃイカンな。
こうやって偶然とは言え、奈津ネェの留学を知ってしまった以上、後で俺も、奈津ネェに餞別渡さにゃいかんわな。
このままじゃあ、あまりにも格好が付かねぇしな。
そんな感じの俺を他所に、崇秀と奈津ネェのビジネスっぽい、お節介な会話が終わり。
その後、崇秀はジンを一気に煽ってから、カウンター席から立ちあがった。
「そんじゃま、そう言う事なんで用事は終わり。邪魔したな、奈津ネェ」
「崇秀……もぉ帰るの?」
「あぁ、さっきも言ったけどさぁ。マジで、まだやんなきゃ行けねぇ事があんだわ」
「そっか。なんか、変に気を使わせちゃったみたいで悪かったわね」
「なぁに、気にするなっての。奈津ネェには餓鬼の頃から散々世話になってるんだからよ。これぐらいはしても当然だ。……つぅか、んな事より、目一杯、良い留学して来てくれよな」
「まぁ、期待に沿える様に頑張ってくるわ」
「オーライだ。……んじゃあ、またな」
そう言ってからタバコに火を着け。
咥え煙草のまま、カウンターに一万円札をソッと置き、その場を立ち去る。
もう何もしないと思っていたら、またオマエって奴は、そう言う事するだろ。
ホントなんなんだよオマエは?
極自然にそんな事をするなんざ、反則的に格好良過ぎんじゃねぇかよ!!
一回でも良いから、さりげなく俺も、あんなのやってみてぇ!!
……って、どうせ、俺がやっても似合わねぇだけだな。
根本的に格が違うもんな。
しょぼぼぼぼぼ……
……なんて、1人で、自爆気味に凹む羽目に成って居たら。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
はい、間違いなく逢瀬ではありません。
崇秀は、ただ単に餞別を渡しに来ただけでしたぁ~~~(笑)
まぁ、そんな事情を知らないのですから、倉津君が勘違いしてもおかしくはないんですがね。
さてさて、そんな中。
そうやって、崇秀との差を見せつけられた倉津君なのですが。
この後も、何か起こりそうな雰囲気。
一体、何が起こるのでしょうか?(笑)
次回は、その辺を書いていこうと思いますので。
良かったら、また遊びに来てくださいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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