1348 奈緒さんが奇妙な質問を続ける訳

 愛情診断をした後、何故か眞子の話をしだす奈緒さん。

この場で、敢えてこの会話をしだす意図は、一体、なんなのか?


***


「あの、奈緒さん……それ、どういう意図で、そんな事を聞いてるんッスか?ちょっと意味が解んないッスよ。眞子と、なんか有ったんッスか?」

「あぁっとねぇ。眞子とはなにもないよ。……ただね。この間、仲居間さんから、クラが手術に成功しなかったら『眞子に成ってたかも知れない』って聞いちゃってね。……それでさぁ。さっきの話で、クラが、私の事を一杯愛してくれてるって解っちゃった訳でしょ。だからね。眞子だったとしても、クラは、私を愛し続けてくれるのかなって思ってさ。ちょっと不安に成っちゃったんだよね」


あぁ、そこかぁ、そう言う事かぁ。

なるほど、これは実に女の子らしい発想だよな。


まぁ実際の話で言えば『タラレバ話』なんてモノは、この世に存在しないんだけどな。

もしもの事を考えるのは、人間なら、誰しもが持つ性質。


これは、なにも特別な事じゃない。


特に不安材料を抱えた女の子の場合、そう言う不確定な情報を与えられると、気に成ってしょうがなくなる兆候がある。


これは、そう言う事例なんだろうな。


……けど、これで、奈緒さんの意図が、ある程度掴めたぞ。



「いや。そりゃあ、奈緒さんが嫌がらないなら。俺はどんな姿でも、奈緒さんを愛し続けますよ」

「そっか。……でも、それって、仲居間さんが絡んでも、言い切れる?」

「えっ?……いや、ちょっと待って下さいよ。それって、本当に、どういう意味ッスか?」


あぁ……なんか嫌な感じの所を、見事に突かれたなぁ。


……って言うのもな。

今の俺にとっては非常に気持ち悪い話なんだがな。

例の『眞子の疑似体験中』に、俺の気持ちが、ちょっと崇秀に揺らいでた気がするんだよな。

いや、寧ろ、崇秀の献身的な行為には、完全に揺らいでたとしか言い様が無いだろう。


だから、今後に質問如何では『言い切れない』なんて言う無様な解答になっちまうんだよな。


まぁ、そうは言っても、これは俺が抑えれば済む問題。

奈緒さんは、この『疑似体験』の話は知らないだろうから、敢えて『言い切れない』なんて言う必要はないんだけどな。



「言葉のままだよ。『眞子の擬似体験』をした君なら、この言ってる意味もわかるよね?……だから、嘘だけは言わないで」


これはヤバイなぁ。

……奈緒さんは、そこもキッチリと知っていたんだ。


だからこそ、こんな質問をぶつけてきた訳でもあるんだな。


でも、この場合どうするよ?

此処は、奈緒さんの意思を無視して『嘘を言うべきか?』

それとも、奈緒さんの意思を尊重して『正直に話すべきか?』


『嘘を言うな』って言われてるだけに悩み処だな。



「奈緒さん。だったら俺は、奈緒さんに嘘を言うのが嫌だから、正直に言うけど。俺は正直揺らぐと思う。女同士で生きて行くのは難しいだろうし、奈緒さんが、それで幸せに成るとは思えない。だから、揺らぎたくなくても、揺らぐと思う」

「そっか。……正直なんだね」


案の定、凹んじゃったよ。


言うんじゃなかったかな?


けどまぁ。こうなる事は、ある程度折り込み済み。

俺にだって、最低限だが打開策ぐらいは考えているからな。



「そうッスね。出来る限り、正直に答えさせて貰いました。……あぁけど、勘違いしちゃあダメっすよ」

「えっ?なにを?」

「いや、俺は、何処まで行っても倉津真琴であって、眞子じゃないッスからね。女じゃない以上、揺らぐ必要なんてないんッスよ。だから俺は、奈緒さんしか愛さないッス。そこに『タラレバ』なんて存在しないんッスよ」


これでどうッスかね?


俺みたいなボンクラじゃ、この程度の幼稚な解答しか用意してあげれませんけど。

これでも精一杯、俺は、奈緒さんの気持ちに、誠心誠意応え様とした結果なんッスよ。


だから出来れば、これで解って貰えれば有難いッス。



「そっか。……そうだよね。現状でクラは、何所まで行ってもクラだもんね。どうやっても眞子には成り得ないもんね」

「そうッスよ。俺は、奈緒さんしか愛せない、倉津真琴って男ッスからね」

「そっか、そっか。……はぁ、なんか私、馬鹿みたいだね。意味の解らない事で悩んじゃってさぁ」


そこがまた堪らなく可愛いッス。


それにッスな。

逆に言えば、そこまで俺の事を好きで居てくれるって事ッスから、そうやって悩んでくれてるのも嬉しいッスよ。



「いやいや、奈緒さんが悩む気持ちも解らなくはないッスよ。俺も、突然、奈緒さんが男に成ったらビビリますし。そのまま奈緒さんが、眞子に行っちゃったら、俺、立ち直れないッスからね」

「ふふっ……上手い事言うねぇ。でも、私だったら、直ぐに眞子に行っちゃうよ」

「……最悪ッスね」


この人だけは……


マジで、やりそうなだけに怖いな。



「そ・れ・と・も・そうなっても私に可愛がって欲しい訳?お尻辺りをズッポリと……」

「うわっ……それもまた最悪ッスね。しかも、下衆い」


幾ら奈緒さんと言えども……それだけは、ご勘弁して下さい。


流石に無理ッス。


なのでせめて、そうなった場合は逆の立場でお願いします。

やる方なら、相手が奈緒さんだと思えば、俺自身も何とかなると思いますし。


……ってか。

所詮はタラレバの話なんだから、そこまで真剣に考える事もないか。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


普通に生活してるように見えて、奈緒さんも色々と悩んでたりするんですね。

まぁこれが、普通の恋愛対象であるならば、こんな悩みを持つ必要性なんかはなく。

順風満帆な恋愛ライフを送れるんでしょうが……好きになってしまった相手が、トラブルメイカーの倉津君ですからねぇ。


これはもぉ、相手が悪かったと言う事で諦めるしかないのかもしれませんね(笑)


さてさて、そんな中。

奈緒さんが最後に下種な事を言って、今回のお話は終わったのですが。


なんか、まだ奈緒さんは隠してるような気がしますね。


それは、一体、なんなのか?


次回は、その辺を書いていこうと思いますので。

良かったら、また遊びに来てくださいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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