1345 変更された店のシステム
倉津君の話に乗りながらも、以前眞子と話した倉津君・奈緒さん・崇秀・眞子による『家族ごっこ』について語る奈緒さん。
その結果はと言うと、最初は少々文句を言いながらでも、最終的には、その願いを叶えてあげようと思う倉津君だった。
そうこうしていると、奈津樹さんが料理を運んで来て……
***
「はい、お待たせ。料理名は面倒臭いから言わないけど。全部美味しいから、適当に食べてみて」
「全部料理の名前がなしとは……そりゃあまた大雑把ッスな」
「まぁね。って言うか、真琴は知ってると思うんだけど、ウチの熊髭は、なに考えてるんだか知らないけど。大した店でもないクセに、矢鱈、長い料理名を付けたがるからね。イチイチそんなものを言うのが面倒くさいのよ」
「なるほど」
あぁ、そう言えば、過去に1度だけ此処のメニュー見た事が有るんだが。
『~添え』の『~風』の『~造り』とかがフンダンに使われており。
兎に角、色々面倒臭ぇ調理方法を付けた、矢鱈滅多ら糞長ったらしい料理名が書いてあった気がするな。
確かに、そんなもんをイチイチ言うのは面倒臭いよな。
あぁ因みにだけどな。
当時の俺と、崇秀が此処に来てた時は、そんな糞長ったらしいメニューを注文した事はない。
いつもシンプルに『~喰いてぇ』って熊髭に言ったら、大体はオッサンが、それに相応するものを作ってくれてたからな。
それ位、此処のメニューに書かれてる料理名を言うのは面倒臭い。
……っとまぁ、そんな風に料理名も気になる点ではあるんだが。
それ以外にも俺は、もっと気になる事があったりする。
それがなにか?つぅとだな
「それにしても木本さん」
「奈津樹で良いよ」
「あぁ、そぉ。じゃあ奈津樹。この料理のサイズを小さくして、やけに小分けにする手法を店側がとってるみたいだけど。これって……敢えて、そうしてる?」
「うん。そうだよ」
そぉそぉ、それ、それなんだよな。
今は奈緒さんに先を越されて言われちまったんだが。
俺が料理名よりも不思議に思ったのは、奈津ネェによって『運ばれてきた料理の大きさ』なんだよ。
こんな小さかったっけ?
この店の料理って、もっともっと馬鹿みたいに大盛りじゃなかったっけ?
「因みに、どういう理由?」
「まぁ、そうだね。論より証拠。まずは食べてみて貰えば解るとは思うんだけど。此処の熊髭の料理の腕って言うのは、結構、確かな腕前なんだよね。けど、熊髭馬鹿だから、サービスとか思って、いつも馬鹿みたいな量をお皿に盛り付けて、お客さんに出してたから、女の子が全くと言って良い程、寄り付かないモッサ臭い店に成っちゃったのよ」
「あらま、またダイナミックな料理店だったんだね」
そうそう、確かに、そんな店だったんだよなぁ。
店のオシャレな内装とは裏腹に、馬鹿野郎しか寄り付かない、汗臭くも、モッサ臭い店だったな。
しかも、金払いの悪い貧乏不良ばっかり溜まってたな。
(↑俺と、崇秀だけは、ちゃんと払ってたぞ!!借金はイカンからな)
「そうなのよ。……だから、そのモッサ臭さを解消させる為に、まずは私が『料理の量を少なくする』様に熊髭に考案したのよ。早い話、女の子さえ来てくれれば、男は勝手に噂を聞きつけてゾロゾロと店に寄ってくるからね。そう言うコンセプトの店に変化させたのよ。それが、料理を小分けにしてる理由」
なるほどなぁ。
なんであんなダイナミックな料理が、こんな小さくもコジャレタもんに成っちまったのかと思ったら、そう言う裏事情があったんだな。
・・・・・・
あぁ、だからかぁ。
『熊髭の店のネスト』のクセに、こんな時間まで無駄に繁盛してやがるから変だとは思ってたんだがな。
そういう理由だったんだな。
けどまぁ、確かに、言われてみればそうだよな。
奈津ネェの言う通り、熊髭のオッサンの顔はモッサイけど、顔に合わず料理の腕前だけは大したもんだからな。
だったら、それを綺麗に小分けにして、女性が寄ってくれる様なお洒落な店にさえいてしまえば繁盛するのは間違いないよな。
店内の雰囲気も抜群に良いしな。
……っで、更に、その噂を聞きつけた野郎どもが集まって来る訳だから、繁盛しない訳がない訳か。
う~~~ん。
一見すれば単純な人間心理を突いたプランニングではあるが、理には叶ってるな。
「なるほどねぇ。女の子の色々食べたいって心理を付いた良い作戦だね。それに単価が下がる事によって、多くを注文させる。俗に言う、薄利多売なスタイルをとった訳だね」
「まぁ、そう言う事。……っと、イケナイ。あんまりサボってたら、熊髭がうるさいから、そろそろ行くね」
「あぁ、ごめんね。なんか引き止めちゃったね」
「なんの、なんの。……あぁっと、そうだ、そうだ。追加注文があったら、そこのベルで呼んで。なんかまた適当に見繕って来るから」
「うん。ありがとう。じゃあ、今序に、生ビールと、ハイネケンの注文お願い出来る?」
「OK。じゃあ、後で持ってくるから。それまではお2人で、ごゆっくり」
そう言った後、奈津ネェは、一旦、笑顔を浮かべて、また忙しそうにホールに戻って行った。
しかしまぁ、よく働く人だな。
それにしても、あれだな。
奈津ネェも、崇秀のアホンダラァみたいに企画を立案して、店のプランニングをしてるんだな。
年齢が1つしか違わないのに、なんかあの人もスゲェ人だよな。
そんな風に、奈津ネェの働く後姿を見て居たら……
「痛ッ!!」
突然、奈緒さんにデコピンされた。
何故に?
何故に俺は、この場で急にデコピンなんかされたんだ?
「こ~~~らっ。君って奴は、彼女が目の前に居るのに、他の女の子に堂々と見蕩れてんじゃないの」
「へっ?見蕩れてる?……あぁ、いやいやいやいや、見蕩れてない!!見蕩れてないッスよ!!」
「どうだかね。今、君、完全に奈津樹のお尻ばっかり見てたじゃない。これを見せ付けられたんじゃ。まだ未練が有るとしか思えないんだけどね」
「ちょ!!無いッスよ!!無いッスよ!!ホント、マジで、そんな未練なんてものは微塵も無いッスよ!!」
「ふ~~~~ん。そうなんだ」
また、そうやって、直ぐに意地の悪い態度を取るでしょ。
因みにッスけど、本当に見蕩れて無いッスし、未練とかも一切合切ないッスよ。
なんと言っても俺には、完全無欠の女神の奈緒さんが居ますからね。
そんな気持ちは微塵も残ってないッス。
「いや、あの、奈緒さん。ホント、そう言うんじゃ無くてッスね。ただ単に、なんかスゲェなぁって思ってただけなんッスよ」
「なにが凄いのよ?具体的に言ってみ」
「いや、あの、なんて言うか。この閑古鳥が鳴き捲くってて糞暇だった店を、たった2年で、此処まで建て直すなんて。奈津ネェってスゲェんだなぁって思ってたんッスよ」
「ふ~~~ん。あぁッそ。まぁ、良いや。そう言う事にして置いてあげるよ」
信じてねぇし。
「いや、まじッスよ。ホント、他意はないッスよ」
「はいはい。信用してる、信用してる」
「もぉ、この人だけは……」
そんな事バッカリ言ってると。
歯が空の彼方まで浮く様な、くっさいセリフを、この場で恥ずかしげも無く吐きますよ。
FFに出て来たモルボルグレートの息より、数十倍くっさいッスよ。
聞いただけで『ミニマム』『トード』『混乱』『毒』の効果があるんッスよ。
……って、奈緒さんは『ぷよぷよ』位しか、ゲームをしねぇからFFの話は解らんねぇか。
しかも『ぷよぷよ』っですら、思い通りにいかなかったら、画面に向って怒りながらコントロールを投げる位、ド下手だしな。
「じゃあさぁ。食事を摂りながら。クラが信用に足る人間か、愛情診断してみよっか」
また、おかしな事を言い出したよ。
この人、ホント退屈させない人ッスな。
あぁ因みにな。
この時点で、さっき奈津ネェに注文した飲み物は運ばれてきたので、その愛情診断とやらを受けさせて貰いやしょうかね。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
いやまぁ、なんと言いますか。
閑古鳥が鳴いてた店が、急に繁盛してたら、誰しもが不思議に思うかなぁ?って思いまして、今回のお話を書かせて頂いたのですが、これがどこまで必要だったかは不明です(笑)
「なら、書くなよ」っとか思われるかもしれませんが。
細かい設定も出来るだけ書いておきたいし、何よりご都合主義だと言われるのが嫌ですしね(笑)
私個人としては『2年で店を立て直した』って言うのは、結構リアルだと思いますし。
さてさて、そんな中。
また奈緒さんが『愛情診断をしてみよっか』とかややこしい事を言い始めたのですが……
奈緒さんなだけに大丈夫なんでしょうか?
次回は、そんな様子を書いていこうと思いますので。
良かったら、また遊びに来てくださいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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