1339 真面目なホランドさんは……
倉津君が提案した『簡単な弱点克服法』だったのだが、どうにもホランドさんは、その意見には納得できない様子。
そこでディックさんが口添えしてくれるのだが……
***
「なるほど。だが、慣れなかった場合は、どうするんだ?」
「いや、だからな、旦那。初心者じゃねぇんだから、プロがやってりゃ、慣れねぇなんて事はねぇだろに。それに楽に修正出来るんなら、それに縋るのも人間なんじゃねぇの。……これ、一昨日も言った話だぞ」
「そう言えば、そうだったな」
こうやって旦那が二度も同じ様な事を言ってしまってるって事は、相当『人に頼る』っと言う行為を、あまり認めたくないんだろうな。
まぁ、この辺も、今まであまり人に頼ろうとはせず。
自身の努力なんかで切り開いてきた旦那らしい考えだから、そう簡単にはこだわりを捨てる事なんて無理なのかもしれないな。
なら、少し雰囲気を軽くしてみるか。
「まぁまぁ、そう神妙に考えなさんなって。こんなもんは、お気楽で良いんだからよ」
「そうなのか?だが、倉津君。君の言い分が正しいとしたら、私の反省会は間違っていたと言う事に成るのか?」
おっ……拘りが強いのかと思ったら、意外と切り替えが早いな。
って事はだな。
人を頼る行動に反対意見があるのではなく。
今の言い分からしても、今までの自身の反省会の仕方を反省してたって感じか。
なるほどねぇ。
ただ状況としては、やや不味い雰囲気だな。
この意見って、今まで自分のしてきた反省会が『まるで役に立ってなかった』って言い分に聞こえなくもない意見だしな。
いやまぁ勿論、そう言う訳じゃないから、此処は1つ、ちゃんとフォローして置こう。
旦那が此処で反省しちまったら、また長い反省会が構築されそうだしな。
「いやいやいやいや。なにも間違ってなんかねぇぞ。旦那は、自分の役割をキッチリ果たしてるぞ」
「何故だ?何故そうなる?」
「いやな。こう言う旦那の正確な分析があるからこそ、みんなの修正点が明白に成ってた訳だろ。だったら、なにも間違ってねぇんじゃねぇか?」
「いや、だが、君の話で、2人は、少なからず修正点の改善させた。これは、日を見るよりも明らかな事実だと思うのだが。……違うか?」
まぁな。
けどなぁ。
俺は、複雑な理論や理屈が苦手だから、単純明快に、解り易く話を進めただけの話なんだよな。
旦那みたいに理論や理屈が解らねぇから、そうするしかねぇだけの話でもあるんだよな。
「いや、違ってはねぇけど。こんなもんは、スゲェ大雑把な話だぞ。だから、此処をクリアーしたら、今度は、旦那の話が重要に成ってくるんじゃねぇの?俺は、初期段階の話をしてるだけに過ぎないんだがな」
「なるほどなぁ。出来無い事を、幾ら論じても無駄と言う訳か」
「単純に言っちまえば、そういうこったな。まぁ、それ以前に、演奏に気持ちが入らなきゃ、治るもんも治りゃしねぇ。だからまずは、理論よりも『嫌だ』っと思うメンタルからケアすべきだったって話だな」
……等と、奈緒グリのメンバーに向って、偉そうな事を、のたまわっている訳なんだが。
まずは、楽しいや、口惜しいと思う気持ちがなきゃ、成長なんてものは、どうやってもしないんだよな。
説明してる相手に『また同じ事言ってるよぉ』なんて思われてたんじゃ、前に進むもんも、前に進まねぇって話でもある。
そして、勿論……言うまでもなく、これは崇秀の受け売りだ。
俺は、こんな面倒臭い事は、絶対に考えないからな。
なんせ、俺は適当ですからな。
「なるほど。私は順番を間違えていたか」
「まぁ、決して間違いではないと思うけどな。そう言う単純な理屈で前に進める奴もいるから、そこは理解しておくべきだったのかも知れねぇな」
「そこに個人の性格の選別も必要だったと言う事か。……納得の意見だな。言われてみれば、そこも私は怠っていた様だな」
いや……ホント、アンタ真面目な人なんだな。
けど、さっきも言ったが、トッチャン坊やの場合、あんま、なにもかもを追及しねぇ方が良いと思うぞ。
アンタが、それをしだしたら、また長い長い反省会に逆戻りしそうだからな。
何事も程々にな、程々に。
***
……っとまぁ、そんな訳でだ。
なんとか、今後の反省会の短略に成功した俺は。
この後、約30分程の反省会に付き合って、反省会は簡単に終了する。
此処は上手く行ったので、満足の行く結果だ。
あぁ……でもな。
1つだけ、この反省会をしてる間に、有り得ない事実が発覚したんだよな。
それが『なにか?』って言うとだな。
最初の方で一言だけ声を上げて以降、一切、声を出さなかった奈緒さんの事なんだよ。
この人な。
人が必至に喋ってる時に、コソッと、サングラスを掛けて……寝てたんだよな。
最悪だよ。
そんな良い方法が有るなら、俺にも教えてくれりゃ良いのによぉ。
奈緒さんには反省点がなかったとはいえ、マジで、この人、最悪だよ。
……まぁ、そんなセコイ事をコソッとする我が愛しの眠り姫と、反省会終了後。
控え室から出て行こうと思ったら、トッチャン坊やが一声だけ声を掛けてきた。
「倉津君。今日は非常に良い意見をありがとう。君のお陰で、色々研究する所を発見出来た。良かったら今後も、適切なアドバイスをしてくれ給え」
「いや、まぁ、俺なんかで役に立つんなら、いつでも言って下さいな」
「そう言ってくれるか。それじゃあ、是非とも頼ませて貰う」
「ウッス」
そう言って、ガッチリ握手をする。
俺は、こう言うのが好きだから、良い感じだな。
「では、早速だが、今回の件を、後日、レポートに纏めて、君の家に郵送しておくので、時間があったら目を通して置いてくれ給え」
「はぁ?」
「……では、これ以上、2人の邪魔をしては悪いので、これで失礼するよ。私も、そこまでは野暮じゃないんでな」
「ちょ!!オマ!!」
なんて、トッチャン坊やに好印象を持ったのも束の間。
本当にロクでもない事を言うだけ言って、スタスタと足早に立ち去りやがったよ。
……って言うかな。
レポートなんて、イラネつぅ~~の!!
「あぁ~~あっ。あれは相当、気に入られちゃったね。この分じゃ、ホランドに、容赦なくドンドンとレポートを送られてくるよ」
うげぇ~~!!Wでイラネ!!
俺は受験生だから、そんな暇ねぇつぅのによぉ!!
それと、せめて、気に入ってくれるなら、あの小さくて愛らしいエリアスのネェちゃんにしてくれ!!
あの人の方が100000倍嬉しいぞ!!
大体にして俺はなぁ。
矢鱈と、理屈ばっかり捏ねる奴は、大の苦手なんだよぉ~~~~!!
そんな困った生き物は、崇秀だけで十分だぁ~~~!!
俺の虚しい心の叫びは、東京ドームに響き渡った。
……のかもな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
此処はディックさんを抜きにして、自らの口で説得に成功しましたね♪
やりますな!!
だが、事が上手く運んだからと言って、全てが上手くいくとは限らないのが倉津君。
反省会での行動をホランドさんに気に入られ、研究大好きな彼から大量のレポートを送られる羽目になってしまいましたぁ♪
諸行無常よの(笑)
さてさて、そんな中。
やっとの想いで尚さんと2人きりに成れた倉津君。
この後は、どうするつもりなのでしょうか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます