1338 単純な理屈で成り立つ弱点解決法

 ホランドさんの長い長い反省会を簡略化する為に乗り出した倉津君。

そして、それを証明する為に、実践してみる事に成ったのだが……


***


「じゃあ、まずは、一番解り易いエディのアンちゃんから行ってみっか」

「僕かい?」

「そぉそぉ。因みにアンちゃんの弱点はバラード系だよな」

「そうだね。どうしても、あのシミッタレタ音が僕の感性には合わないから苦手なんだよね」

「うんうん。そんな感じだよな。だったら、四の五の考えずにホランドの旦那の音にだけピッタリくっ付いて演奏してみな。2人共、そこに集中するだけで解決スッからよ」

「えっ?……あっ、あぁ」


そうやって、まずは2人に音を出して貰ったんだけどな。

こんな単純な作業だけで、ほんのちょっとだけ、デカイにぃちゃんのバラードの音が修正された。


一応言って置くが、効果は、ほんのちょっとだけだぞ。


……っで、それを体験して貰ったアンちゃんはと言うと。



「あぁ、なるほどね。好き嫌い以前の問題に、これは楽だね」

「そっ、そうなのか、エド?」

「えぇ。思った以上に、かなり楽ですね」

「そうか?しかし、なんでまた?」

「いや、恐らくは、凄く単純な理論なんですけどね。ライブでは、普段、バラードが掛かったら、それなりに自分では音の修正をしようとは心掛けてるんですがね。どうにも好みじゃない音を出すのが嫌なので、どうやっても余り気が入らないんですよ。けど、ホランドさんの音に合わすだけなら、なんの苦もなく、悪くない感じに仕上がってるって感じなんですよ」

「なんだ?よく解らないおかしな事を言うな」


エディのアンちゃんは理解したみたいだけど、トッチャン坊やの方には理解し難かったか。

まぁ今のは、トッチャン坊やが教える側の立場に立っての話だったし、自分の得意分野じゃちょっとこの辺は解り難いか。


なら、今度は、客観的な立ち位置で見て貰うしかねぇな。



「じゃあよぉ。今度はエリアスのネェちゃんと、エディのアンちゃんで派手な曲を演奏してみな」

「それって、私の弱点だって言われてるハードに弾く話?」

「そうッス、そうッス。あぁでも、あれッスよ。変に気を張らず、気楽な感じで良いんッスよ。まぁ言うなれば、エディのアンちゃんに身を任せる感じで」

「身を任せるかぁ?……それって、SEXする時みたいな感じで良いのかな?」

「えぇっと、あぁっと、そうッスね。まさにそんな感じッス」


ネェさん……SEXって表現。


……っとまぁ、ネェさんの露骨な表現は置いておくとしてだな。

この後、一応、2人には軽く演奏して貰ったんだがな。

その結果としては、此処でも矢張り、エリアスのネェちゃんの音が、ちょっとだけ修正された。


うむ……実に良い感じですぞ。



「あぁ、そう言う事か。それが言いたかった訳ね」

「おっ?エリも解ったみたいだね」

「うん。……って言うか。ホント楽だね、これ」

「だよね」

「いやいや、ちょっと待ってくれ。確かにエリの演奏は少し良くは成った感じは受けるが。それは何処まで行っても一部の話ではないのか?全体的な話ではないと思うんだが」

「クカカカ……旦那、相変わらず、頭が堅ぇな。マコッちゃんが言いたいのは、そう言う事じゃねぇんだよ」


おっ……長い沈黙を破って、ついに出たな。

俺の心を説明出来る、下衆ハートの持ち主、ツンツン頭。



「いやいや、言ってる意味は解ってるんだぞ。1部の修正から、全体を修正しろって話なんだろ。それぐらいは、幾ら堅物の私でも解る。だがなデク。それでは、相手が居ないと練習に成らないんじゃないのか?」

「まぁ、そうだわな。けどな、旦那。楽器の初心者じゃねぇんだから、演奏の事を1言われりゃ、10の事が解んねぇでどうすんだよ?そんなもんは、相手が居なくても『その内、慣れる』って、マコッちゃんは言いたいんだよ」


まさにその通り!!


正解ですな。


まぁ、弱点や修正点なんて言うもんはな。

誰かに言われて強制的に治すもんでもなきゃ、直ぐに治るもんでもねぇ。

だから、実際の処方箋としては、ある程度時間を掛けながらでも、ゆっくり慣らして、治して行くしか方法がねぇんだよ。


……っで、その切欠を作るのが、この方法ってな訳だ。


それで治りゃあ御の字じゃんかよ。


それによぉ。

もしダメでも、その弱点克服への第一歩は記してる訳だから、前よりは幾分はマッシに成ってるってもんだろ。


だったら、この単純な方法で、リスク無しに前に進めるじゃねぇか?


そう言うアホな理屈なんだけど、意外と俺は的を得てると思う。


後、序に言えばな。

多分、これがホランドの旦那が一番引っ掛かってる部分だとは思うんだが。


恐らく旦那は、方法自体は理解してる筈だ。

だが『崇秀を対象にして物を考えすぎてる』のが原因になって、この方法を受け入れきれないでいると思われる。

要するに、あの強烈なアンポンタンが、ナンデモカンデモ一人で解決しちまうから『自分もそうあらなければ、奴には勝てない』と勝手に思い込み過ぎてる節が見受けられるから、この方法を呑み込めないんだと思う。


だが、それが良くない。


まぁ、確かに崇秀のアホンダラァの件に関しては、その通りではあるから、旦那のその気持ちも解らなくもないんだが。

今まで、自主的にやるやり方で、崇秀のアホンダラァに勝てなかったんなら、そろそろ違う方向性も考えなきゃイケナイ時期に来てるんじゃねぇかな?


もっと解り易く言えば、自身の進化を遂げる為にも、変な拘りを持たずに柔軟な思考を持ち『仲間なら頼っても良いんじゃねぇかな?』

そうやって協力し合っても弱点を克服しても問題ないと思うぞ。


要するに『発想を転換しろ』って話だ。


その為にバンド仲間がいる訳だしよ。


ちゃうか?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


弱点を克服する為にホランドさんの様に躍起になるのも悪くないのですが。

まずにして、そう言うのってメンタルが強くないと出来ないですし。

なにより他人の指摘を受けて、その行動を起こそうと思う人は極々稀だと思うんですね。


だからこそ、倉津君の言う『簡単な方法から入って、徐々に慣らしていく方法』の方が、一般的には効果が高いと思います。


人間って、ちょっと上手くいっただけなのに『無駄にやる気』が出たりしますしね(笑)


さてさて、そんな中。

今度は倉津君に代わって、ディックさんとホランドさんが軽い論争を擦る様なのですが。


意外とディックさんって、ただのお馬鹿の様に見えて頭が良いので、此処はホランドさんを上手く丸め込むかもしれませんね。


……ってな予想をしながら。

次回は、そこら辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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