第3話 初バイト
「…ここで?おれが?」
レンゲは頷いた。
「だって君、ずっと闇バイトなんかやってる気かい?そんなのいつバレてもおかしくないよ。だったら安全なバイトしてる方がいいじゃないか」
「時給は?」
レンゲは春さんの方を向いた。
「そうですねぇ…このくらいです。どうです?乗りますか?」
こここここここんなに?!?!
「ま、まぁ?やってあげてもいいけ…」
「そんな事言ってる間に、初仕事だよぉ」
…あ?
急に机の周りに集められた。
春さんと似たようなチャイナ服を着ていた。
「届いてますよ、贈り物」
春さんのその一言で、ポンと人が1人現れた。
「ここは…?あの、私仕事があるのですが?」
スーツをしっかり着た、30代前半くらいの人だ。
髪はセットされておらず、顔色の悪い顔には、少しクマが目立つ。
「ここはなんでも屋。あなたの欲しいものその中からどれか1つだけ、差し上げます。さ、どれになさいます?」
春さんは相手の意見お構い無しに聞いていく。
今回の物は、車のおもちゃ、パソコン、新品の靴の3つだった。
男は靴を気にしていたが、選んだのは車のおもちゃだった。
「これにします。」
春さんはあの笑顔を浮かべて言った。
「まいどあり」
そう言って男は消えてしまった。
「ん〜なんでパソコンじゃないんだろう?あの人新しい仕事始めたそうだったのにぃ」
シロは不満そうに言った。
これらは全部こいつらが用意してんのか?
「まぁまぁ、結果をみてみようか。」
そしたら目の前に大きい鏡が出てきた。
「うわ!鏡が浮いてる…?」
俺は驚いた。
が、みんなは何も言わず鏡を見つめていた。
その鏡にはさっきの男がオフィスで作業をしている様子がうつっている。
「そう言えばハルトは学校だったねぇ。結果が分かり次第また呼ぶよぉ」
シロがそういうと同時に、俺は学校に戻っていた。
「どうしたんだハルト?そんなにボーっとして」
みんなが俺の方を向いている。
「いや、なんでもない…大丈夫」
「てか次美術じゃん!行こうぜ!この天才芸術家、リュウガ様の美術作品を創り上げに!」
そうして俺たちは授業に向かった。
安心できる家に帰ってゴロゴロしていると、なんでも屋にいた。
「うわ!」
浮いていることに気づかず、俺はそのまま落ちてしまった。
その光景を見て双子はクスクス笑っている。
「…なに笑ってんだ」
するとレンゲが言った。
「ここでは浮けるのさ。ほら」
そう言って双子はふわふわ浮いて俺の方に向かってきた。
それを俺は綺麗に回避し、春さんの後ろに回る。
「それで、なんで俺またここに?」
「結果が出たのさ。ほら見てみなよ」
そう言われて鏡を見ると、食卓を囲んでいる3歳くらいの男の子と、さっきの男がうつっていた。
男の子はさっきの車のおもちゃをもらって喜んでいる。
それを見て男は安心していた。
「この人はどうやらシングルファザーみたいですね。家を買えたはいいものの、仕事と育児の両立で精神的に参ってしまっていたようで。ですが今日は子供の誕生日。しかも次の仕事の内定も決まっているし、来週には退職。帰りに買ったケーキと、用意できたプレゼントでお祝いしてあげた。」
あったくていいなぁ。シングルファザーでこんなに…
俺もこんくらいのときはまだ母さんが帰ってきてたな。
「パパお仕事がんばってね!だいすきだよ!」
子どもの無邪気な声が響き渡る。
「素敵な家庭だね、レンゲ」
「そうだね、シロ。」
いい親子だ、本当に。
「今日の仕事は終わりです。お疲れ様でした。」
春さんが切り上げると、双子はじゃあねぇと言って消えてしまった。
「おや?ハルトさん。今日のお仕事は終わりですよ?」
「これで1日15万って、ガチっすか?」
「ええ。なんでも屋は1つの人生の分岐点を担っているにすぎない。さっきの方だって、精神的疲労の回復が見えましたし、あなた、あれから幸せでしょう?」
なんでも屋はどこから人の情報を集めて、いくつ弱みを握っているのか。
考えれば考えるほど恐ろしく思えてくる。
「今日は、帰りますね」
「はい、お疲れ様でした。」
そうして俺はベッドの上に戻ってきた。
時間は7時少し前だ。
風呂にでも入ってこようかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます