水薬
「体調はどうかな」
「今のところ何も。
「ぼくも平気だ。ところで、
「見たような、見なかったような」
「そんなに
「仕事の用事に決まっているだろう」
「本当かしら」
「
「でも、
「今はそんな時代ではない」
「君、いつからこんな大胆になったんだ」
「やりたいことをなんだって出来る、と教えてくださったのは
もう片方の手を首へ顔へと滑らせ、
「
*****
硝子のスポイトから、無色透明の液が湯呑みの茶へ落ちる。スポイトが小机へ置かれた。傍らの
がらり、戸が開いた。部屋に足を踏み入れた
「瞳孔が散大しています。スコポラミンでも点眼しましたか」
「いつの間に近視になったのかね。あまり進行が早いようなら網膜剥離にでもなったのかもしれん。診てやろう」
「俺は下戸なんだよ」
「そういう問題ではありません」
「覚醒アミン嗜癖症の更生施設と同じだ。無い状態に置かれれば、と思ったんだがな。幸か不幸か、
「それが目的で軍に……」
「まさか。ついでだよ。さて、大尉に言うか、少佐に言うか。それとも中佐に言うかね。なあ、
「戦地で軍医が死ぬのはどんなときか、と言いましたね」
「ああ」
「過労で死ぬのは、勘弁願いたいものです」
「そうだな、身体を労るために、よく寝て、栄養のあるものを喰うといい。やはり卵なんかがいいぞ。完全栄養食だ。聞いたか、鶏舎でそろそろ卵が」――――
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