南洋熱病地獄 篇
序章 蛇と鼠
青大将
隻眼の青蛇が、天井板の隙間から頭を垂らしている。蛇は長い舌を出し入れしながら、窓際に立つ女の背を見る。
鉄鋲で縁取られた小さな丸窓の向こうには晴れた海原が広がっているが、室内は昼だというのに薄暗い。小窓の他には、小さな傘の電灯が天井から弱々しい光を落としていた。
蛇は身体を徐々に伸ばし、女の首元へ顔を近付ける。髪は前下がりに切り揃えてあり、生白い
「
「わかった、すぐ行く」
ばたん。扉が閉まり、天井板の隙間から再び蛇の頭が覗いた。
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