第38話

私はほろ酔いで、気分がとても良かった。

けれど、素面だったし記憶も全然ある。


「社長、さっきの言葉の意味はなんですか?」


…ーーー俺の秘書は天宮だけだ


社長に問うと、少しの間沈黙が流れた。


「…」


「社長…?」


「本心を言っただけだ悪いか」


悪いなんて言ってないのに…

彼はこうやって突っかかってくるのだ。


「いえ、…ただ、嬉しかったです」


「…」


「私、社長の…御堂彪雅さんの秘書でよかったです」


私も本心を伝えたつもりだった。

この想いがなんなのかはわからないけど、

社長が珍しく、嬉しい言葉を言ってくれたから、


私もお酒の力をちょっと借りて、素直になってみた。


「…天宮」


名前を呼ばれ、そちらを向くと、唇に何かが重なった。


…ーーーキス、だ…、



触れるだけのキスに私は、びっくりして社長の顔を見つめたまま固まっていた。

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