第36話

「明日のプロジェクト発表、楽しみにしているよ、彪雅」


会長が口を開くと、社長は表情を崩さずに答えた。


「ああ」


「会長も明日は来られるのですか?」


私が聞くと、会長はそうだよ、とはにかんだ。


それは…尚更緊張する。

データの間違いなどあってはならない。


「このプロジェクトが成功すれば、

御堂グループはもっと伸びる筈さ」


会長の言葉に、私は身が引き締まる思いになった。


「…そうだ、櫻井専務の娘さんはどうだい?

しっかり仕事しているかい?」


会長は唐突にそんな事を話出した。


櫻井専務…、もしかして櫻井美月の…


「ああ、今秘書課で研修している」


社長は興味があるのか、ないのか、

わからない様子で答えた。


「おお、じゃあ奈那さんの元で働いているのか、迷惑かけるね、すまないが面倒見てやってくれないかい?」


会長直々のお願いだなんて…

やはり、櫻井美月は強者なのだろうか、


「はい、しっかりと働いていますよ」


そう言った私に、また隣から視線が注がれる。

けれど、私はそちらを見る事はしなかった。

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