第25話

彼に、お弁当を作って渡した入社1年目の自分を思い出して、ひどく滑稽に思えて仕方なかった。



》》



その当時は1年目で、右も左もわからなかった。

うぶだったんだと思う。


就職して、社内恋愛して結婚して…なんて夢に思い描いていたから…。


その日、社長は体調を崩していて、

酷く具合が悪そうだった。


上司だし、なんせ社長だから心配しないわけがなかった。

でも、私には仕事を代わりにやってあげる事も出来なかったし、社長の負担を軽くする事はできなかった。


ーーー…だから私はお弁当を作ってしまった。

あんな惨めな思いをする事さえ知らずに…



家で、何が好きなんだろうとか、

お弁当に入れると喜ばれるおかずはなんだろとか考えて、少しウキウキしていた自分がいた。


社長はどんな顔で食べてくれるかな、なんて、

淡い期待をもっていた。


お弁当にはハンバーグと、からあげ、エビフライを入れた。

ちょっと子供っぽいのは仕方ないにして、きっと喜んでくれる筈。


社長は普段からしっかりと食事をしている場面を見た事がなかったから。

だからせめて食事でもって思ったのが間違いだった。


その日、出社してからお昼になるまでずっとドキドキしていた。

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