第12話
社長は車の背もたれに深く身体を沈め、
重いため息をついている。
あぁ、これはいつもの数倍ご機嫌ナナメです。
「おい、車出せ」
社長のご機嫌を伺っていて車を発進させていなかった私は社長の言葉に慌てて車のエンジンを掛け、会社へ向かった。
ミラー越しに見る後部座席の社長は眉間に皺を寄せ、何やら資料を眺めている。
これから会議があるから、その資料を眺めているのだろう。
そして、ふと社長が言葉を発した。
「たい焼きは」
「…」
「天宮、無視か」
「い、いえ…あのたい焼き屋さんが開いていなくてですね…そのなんといいますかたい焼きに似てる…クロワッサン?をご用意しましたすみませんっ!」
早口で捲し立てる私は、もう社長の顔を見る事ができないので運転に集中する為、前方の車を見つめていた。
ああ…終わったこれは…、
「…いらねぇ」
やっぱりそうですよね…、
何度めか分からない社長からの拒否に私は返す言葉を失くしてしまう。
私だって一生懸命考えたのに…。
いつもそうだ彼の拒否する言葉に私は落胆してしまうようになった。
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