第8話

絶対に私が生涯頑張って働いても住めないであろう高級マンションに住んでいるのは、

社長のおかげでもあったりする。


前は電車で1時間程かけて実家から通っていたが、ある時人身事故の為、遅刻してしまった私を見兼ねて、


「お前がいないと雑務が進まない」


と言われ私にこのマンションを与えてくれたのだ。家賃は社長が払ってくれているが、私は何度も断ったのだ。だけど意外にも頑固な社長は、


「その分、俺の為に尽くせ」


なんて言うものだから確かに与えられたはいいが、家賃など到底払えない額だと気づき、

私は黙ってその言葉に頷くしかなかった。


だから、社長の我儘が行き過ぎていようが、

いくら酷い事をされようが私は彼に借りがあるのである。


マンションについて、クタクタな身体に鞭を打ってお風呂に入った。

お風呂上がりに一杯缶ビールを煽り、もう一度明日のスケジュールを確認した。

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