第5話

ーーー…御堂グループ 


IT関連を中心に、観光業、アパレル業など幅広く手掛けている日本有数の財閥だ。


私が現在勤めている会社もMDコーポレーションというIT企業である。

そこの社長を任せられているのが、この御堂グループ代表の息子である御堂彪雅というわけだ。


残念ながら、この男は超やり手で、

株主総会で代表取締役に就任したその年から、

売り上げをどんどん伸ばしていった。


だから皆、容姿端麗で仕事に関してもストイックな彼に何も言う事ができないのだ。


超絶、性格が悪くてもね…。



「天宮、午後から視察予定の工場のデータはまとめてあるのか」


私を鋭い眼光で見つめてくる御堂社長。

まるで大蛇に食べられそうな鼠状態の私は、ごくりと生唾を呑んだ。


「…は、はい、社長のデスクに…」


…パシャ…っ


そう言った瞬間、社長の腕がデスクに置いてあったアイスコーヒーの容器に触れ、倒れたそれは無惨にもデスク全体に広がってしまった。


どーして、今のタイミングで溢すのよ!


なんて言えず、急いで布巾を取りに行き、

デスクを拭くと、私が先程言った今日の視察工場のデータの資料がコーヒーによってびしょびしょになっていた。

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