第33話 EP6-3 桃花は人気者

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


「おはよ、勇斗ゆうと!」

「おう。おはよう、桃花ももか

 いつものように、オレと桃花ももかおなじタイミングでいえる。いつものように、かたならべて登校とうこうする。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。一応いちおうしの魔狩まかりである。


「見たぜ、『魔狩まかり通信つうしん』。桃花ももかって、写真しゃしんうつりいいよな」

「ちょっと、勇斗ゆうとってば、正直しょうじきなんだから!」

 桃花ももかれて、オレの背中せなかつよたたいた。


 絢染あやそめ 桃花ももか魔狩まかりである。十四さい中学生ちゅうがくせいで、オレの幼馴染おさななじみで、桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。


 中学生ちゅうがくせい登校とうこう風景ふうけいだから、制服せいふくている。男子だんしくろ学生服がくせいふく女子じょしあかいスカーフのセーラーふくである。

 一般人いっぱんじん廉価品れんかひんけん、オレは廉価品れんかひん長剣ロングソード桃花ももかはオーダーメイドの両刃りょうば大剣たいけんこしにさげる。


   ◇


 いつものように校門こうもんとおって、校舎こうしゃはいって、下駄箱げたばこまえつ。まだ背中せなかがヒリヒリする。


 ほか生徒せいとたちの視線しせん集中しゅうちゅうする。ちょっと緊張きんちょうする。

 当然とうぜんながら、視線しせん集中しゅうちゅうするのはオレではない。魔狩まかり通信つうしん誌面しめんにデビューをたした、将来しょうらい有望ゆうぼうわか魔狩まかり桃花ももかだ。

 オレはただのえだけど、緊張きんちょうはする。


 とう桃花ももか平然へいぜんとしてる。ひと視線しせんにはれている、とばかりに見向みむきもしない。


 桃花ももか以前いぜんから、視線しせんけられることがおおかった。魔狩まかりなかでもたか身体しんたい能力のうりょくとく筋力きんりょく、特に腕力わんりょくほこる『ウォリア』として、恐怖きょうふ対象たいしょうとして、だ。


 それがいまや、あつ眼差まなざしがあつまる。羨望せんぼう尊敬そんけいあこがれ、好奇こうき興味きょうみ。およそプラス方向ほうこう感情かんじょうである。

 これまでのマイナス感情かんじょう反転はんてんしたのだから、もっとよろこべばいいのに。と、幼馴染おさななじてきにはおもう。


「……えっ?!」

 下駄箱げたばこけた桃花ももかがビックリした。

 わらうような、見下みくだすような、ドヤがおでオレにいた。には、数通すうつう封書ふうしょっていた。

桃花ももか! まさか、それって、ラブレターか?!」

 オレもビックリした。

 ピンクいろけいのカワイイ封筒ふうとうで、キュートに装飾そうしょくされて、るからにラブレターだ。


   ◇


「あっ、あのっ! おはようございます、遠見とおみくん! 絢染あやそめさん!」

 琴音ことねが、勇気ゆうきしぼったようなあかかおで、オレたちにいきおいよくあたまをさげた。


 真奉しんほう 琴音ことねは、魔狩まかりである。十四さい中学生ちゅうがくせいで、銀縁ぎんぶちまるメガネをかけたメガネ女子じょしで、灰色はいいろながかみみにして、小柄こがらむねおおきい。

 こしに、あかいハートとしろつばさかざられた片手かたてサイズのつえをさげる。


「おう。おはよう、真奉しんほうさん」

「おはよ、琴音ことね

 オレも桃花ももかかる挨拶あいさつかえした。


「まっ、『魔狩まかり通信つうしん』! 拝見はいけんしました! 絢染あやそめさんはっ、ほっ、本当ほんとうすごいです!」

 琴音ことねが、らし気味ぎみに、オドオドした口調くちょうで、興奮こうふんほお紅潮こうちょうさせて、桃花ももか絶賛ぜっさんした。


 桃花ももか調子ちょうしって、うえから目線めせんかえる。

「そんな大袈裟おおげさな、アタシなんて最強さいきょうひとのオマケよ。それに、琴音ことねだってアタシと同等どうとうくらいあるんだから、すぐよ」


「えっ、そ、そんなっ。わたしなんて」

 琴音ことね顔色かおいろが、あおへと急変きゅうへんする。銀縁ぎんぶちまるメガネのおくつぶらなひとみが、思考しこう放棄ほうきしたうつろになる。

「わたしなんて、麗美れみちゃんが一週間いっしゅうかんもおまりして、ようやくですし……ダメです、麗美れみちゃん、それ以上いじょうはダメ、ひぃっ」

 ナチュラルに、ちいさく悲鳴ひめいらした。トラウマにでもさわってしまったらしい。


   ◇


 これ以上いじょう傷口きずぐちえぐらないように、話題わだいもどそう。

「それより、桃花ももか。そのラブレターのたばだけどよ」

 オレは、明確めいかく違和感いわかんいだいて、指摘してきした。


「これがどうかしたの? はっはぁ~ん。勇斗ゆうとってば、うらやましい?、嫉妬しっとした?」

 桃花ももか圧倒的あっとうてき上位種じょういしゅのゲスいみで、オレを見下みくだす。超越者ちょうえつしゃ余裕よゆうで、ラブレターをせびらかす。


「いいから、んでみろよ。名前なまえくらいいてあるだろ?」

 オレはうらやましい、じゃなかった、桃花ももかかした。

「そんなにになるか~。仕方しかたないなぁ~」

 桃花ももか上機嫌じょうきげんで、ニヤついて、パステルピンクの一通いっつうえらぶ。ハートのシールのふうがして、ネコがらのカワイイ便箋びんせんす。

「でも、差出人さしだしにんおしえないわよ。アタシはプライバシーにうるさい……」

 中身なかみ桃花ももかが、きゅう顔色かおいろえた。優越感ゆうえつかんみから、絶望ぜつぼう呆然ぼうぜんになった。

「……一年いちねん女子じょしからじゃん」


 だとおもった。あきらかに、女子じょしのラブレターだ。男子だんしのじゃない。

「うわぁーーー!!!、いいなぁーーーおぃ!!! うらやましいぜ! オレも女子じょしからラブレターしい!」

 オレは、ほか生徒せいとたちの視線しせんもおかまいなしに、うらやましさに地団駄じだんだんだ。

「そうじゃないでしょ!!! こうじゃないでしょ!!!」

 桃花ももか地団駄じだんだんだ。


 どうせこんなことだろうと、おもった。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第33話 EP6-3 桃花ももか人気者にんきもの/END

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