第32話 EP6-2 戦う理由?

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 おんな記者きしゃ刺々とげとげしい質問しつもんで、インタビューがはじまった。


 こうランク魔狩まかり本当ほんとうに、『人々ひとびとまもるヒーロー』なのか?

 具体的ぐたいてきに『人々ひとびとまもる』とはなんぞや?

 つよ狭魔きょうままれた強い魔狩まかりが、ソイツをたおす。はるかによわ一般人いっぱんじんに、なん意味いみがあるのか?


 むずかしい質問しつもんだ。


 狭魔きょうまは、つよ人間にんげんえらんで狭間はざまむ。この世界せかい狭間はざまかさなることはない。だから、つよ狭魔きょうま一般人いっぱんじんよわい人間をおそわない。


つよ魔狩まかりが、おそいくるつよ狭魔きょうまたおす。つよ狭魔きょうまは、よわ一般人いっぱんじんおそわない。それって、なにまもってはいないように、素人目しろうとめにはうつるのですが」

 おんな記者きしゃ笑顔えがおでダメしした。


「それは、そうかもね。アタシも、おそってくるからかえちにしてるだけで。かおらないおおくのひとまもってる感覚かんかくなんて、ないわ」

 桃花ももか真顔まがおこたえた。


 なにかんがえてない、脳筋のうきんの、ブレないなぁ、と感心かんしんする。


「あら、やっぱり? わかって退屈たいくつ建前たてまえがなくていいわね」

 おんな記者きしゃ笑顔えがお称賛しょうさんした。


   ◇


たとえば」

 皐月さつき微笑びしょうで、上品じょうひんくちひらく。

 皐月さつきに、おんな記者きしゃも、桃花ももかも、オレも注目ちゅうもくする。現役げんえき最強さいきょう『ウォリア』の理念りねんなんて、そうけるものじゃない。


わたくし対処たいしょします狭魔きょうまは、こちらの世界せかい多少たしょうなりともあく影響えいきょうおよぼしますわ」

最強さいきょうランクの魔狩まかりみなさんは、そのあく影響えいきょうから人々ひとびとまもっていらっしゃると?」

 おんな記者きしゃ質問しつもんはさんだ。

 皐月さつきすこしだけもくして、かんがえをめぐらせた。


「なぜだか不安ふあんになりますとか、気分きぶんみますとか。はたして、あく影響えいきょうべるものか、まもるとむねれるほどのものかはかりませんわ」

 皐月さつきはどこまでも微笑びしょうで、どこまでも上品じょうひんだ。


「ご謙遜けんそんを。そうでなければ、最強さいきょうばれるみなさんがヒーローとはやされるはずがありません」

わたくしは、すべての狭魔きょうまに、程度ていどはありましても、同様どうようあく影響えいきょうがあるとかんがえていましてよ。ですから、狭魔きょうまたおすべての魔狩まかり人々ひとびとまもっている、とえますのではないかしら?」

 皐月さつき笑顔えがおくくった。


   ◇


 むずかしい問題もんだいだ。

 そもそも、魔狩まかり狭魔きょうまたたかうところは、たたか当事者とうじしゃにしかえない。

 狭魔きょうまおそろしさとか、魔狩まかり覚悟かくごとか、魔狩まかりではないひとにはからないだろう。


 オレは、この世界せかいから狭間はざまえる能力のうりょくちだから、見える。

 えても、まだ他人事ひとごとだった。自分じぶん狭魔きょうままれるまで、見物客けんぶつきゃく気分きぶんだった。


 えもしないのに、りもしないのに、ヒーローかいなか、なんてかるわけがない。結局けっきょくのところ、圧倒的あっとうてきつよさゆえに、各所かくしょでヒーローと紹介しょうかいされるゆえに、ヒーローとばれているだけなのだろう。


「さすがです! 素敵すてきです! 想像そうぞうしてたとおりです!」

 おんな記者きしゃきゅうちあがった。スーパーヒロインにあこがれる女児じょじみたいにひとみかがやかせて、皐月さつき称賛しょうさんした。

「あ、意地いじわる質問しつもんをしてしまってみません! 上司じょうしが、たたえるだけの誌面しめんなんて退屈たいくつだ、ってゴネちゃって。ファンです、尊敬そんけいしてます!」


   ◇


本日ほんじつは、当誌とうしのインタビューをけていただき、ありがとうございました」

 おんな記者きしゃが、深々ふかぶかあたまをさげた。


 あのあとは、恋人こいびとはいるのか、みたいなたりさわりのない質問しつもんばかりだった。完全かんぜん女子じょしトークだった。

 オレとしては、桃花ももか余計よけい情報じょうほうらさなければ、それでいい。これで、いの役目やくめまっとうできたはずだ。


 三人さんにんとも、ソファからちあがる。オレはもともとである。

ゆめみたいな、素晴すばらしい時間じかんでした」

 おんな記者きしゃが、両手りょうてでガッチリと、皐月さつき握手あくしゅわした。

桃花ももかちゃんも、ありがと。わか本音ほんねけて、新鮮しんせんだったわ」

 つづけて、桃花ももか握手あくしゅわした。


「……えぇっ!? まっ、まさかですわっ!?」

 皐月さつきが、途轍とてつもない事実じじつ気付きづいたかおで、おどろく。おのれ両手りょうて凝視ぎょうしする。

「もしかしまして! 間接かんせつキスではないかしら?!」

間接かんせつ握手あくしゅでしょ。発想はっそう気色悪キショい」

 桃花ももか気色きしょくわるいものをで、なくかえした。

視線が冷たいクゥーーーーーッル! そこが好きラブ!」

 皐月さつき頓狂とんきょうさけんだ。


 あれが現役げんえき最強さいきょう『ウォリア』なのだから、なか面白おもしろい。常軌じょうきいっした狭魔きょうまこうからたたつぶ勇姿ゆうしっていれば、なおさらだ。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第32話 EP6-2 たたか理由りゆう?/END

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