第31話 EP6-1 魔狩通信

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


本日ほんじつは、当誌とうしのインタビューをけていただき、ありがとうございます」

 ショートボブのスレンダーな大人おとなおんなひとが、深々ふかぶかあたまをさげた。


 魔狩まかりギルドの発行はっこうする魔狩まかり専門誌せんもんし魔狩まかり通信つうしん』のおんな記者きしゃだ。スカートスーツをビシッとこなして、仕事しごとのできる雰囲気ふんいきだ。


「よろしくおねがいします」

 桃花ももかが、めずらしく緊張きんちょうして、ぎこちなくあたまをさげかえした。


 絢染あやそめ 桃花ももか魔狩まかりである。十四さい中学生ちゅうがくせいで、桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。オレの幼馴染おさななじみで、クラスメートでとなりせきである。

 いつもの私服しふく、ノースリーブにミニスカートにスニーカーである。こしには、両刃りょうば大剣たいけんおさめた茶色ちゃいろおおきな革鞘かわざやをさげる。


「あ、あの。斎賀さいがさんも、ありがとうございます」

 おんな記者きしゃが、とびらかげから部屋へやのぞくドレス姿すがた美女びじょにもこえをかけた。


 斎賀さいが 皐月さつき全国ぜんこくでもトップクラスの魔狩まかり、ランクSSSの『ウォリア』である。

 かみえるような赤色あかいろで、波打なみうふくらむ。美女びじょあかくちびるでナイスバディで、大人おとな魅力みりょくあふれる。スリットがセクシーな薄手うすでのサマードレスは、薄紫うすむらさき基調きちょうはなやかな刺繍ししゅうがされる。


「おたせしましたわ」

 皐月さつきが、いま到着とうちゃくしたてい部屋へやはいってきた。


 魔狩まかりギルドの上階じょうかいにある応接室おうせつしつだ。

 オレは、桃花ももかけん見学けんがくでいる。壁際かべぎわである。


   ◇


 ひくいガラステーブルをはさんで、三人さんにんはソファにすわる。おんな記者きしゃ一人ひとりで、皐月さつき桃花ももか二人ふたりとなう。


あらためまして。本日ほんじつは、当誌とうしのインタビューをけていただき、ありがとうございます。最強さいきょうの『ウォリア』、『ディメクラ』さんに、将来しょうらい有望ゆうぼうわかき『ウォリア』、『バイオレンス絢染あやそめ』さん」

 インタビューがはじまった。


「やっぱり! 薄々うすうすかんじてたけど、『バイオレンス絢染あやそめ』ってアタシのふただったのね!」

 桃花ももかがショックとこえした。ずっと悪口わるぐちなにかだとおもってたかおだ。

中学生ちゅうがくせい女子じょしのアタシてきには、カワイイほう似合にあうとおもうんだけど。なにかないの、勇斗ゆうと?」

「オレにるなよ」

 オレは部外者ぶがいしゃ口調くちょう回答かいとう拒否きょひした。桃花ももかのカワイイけいふたなんてらない。あるともおもえない。

 皐月さつきふた『ディメクラ』は、あつかうハンマー『ディメンションクラッシャー』の略称りゃくしょうである。


「まずは、お二人ふたり握手あくしゅをしていただけますか? 写真しゃしん撮影さつえいして、ページをかざ一枚いちまいにさせていただきます」

 おんな記者きしゃがデジカメをかまえる。二人ふたりける。


「えっ?! そっ、そんなっ!」

 皐月さつき派手はでみだした。

「この世界せかいもっとたっときよ桃花ももかちゃんに!? けがれたわたくしれる!? そんな背徳はいとくはできませんわ!」

 いやがりつつ興奮こうふんしてる。相変あいかわらずこじらせてるなあ、と感心かんしんする。最強さいきょうはブレない。


「でしたら、圧縮あっしゅく効果こうか握手あくしゅしてるかんじにしますね」

 おんな記者きしゃれた口調くちょう提案ていあんした。

「それでしたら、よろしいですわ」

 皐月さつきが、残念ざんねんそうに了承りょうしょうする。桃花ももかと、すこあいだけて、握手あくしゅしてるふうならべる。

 おんな記者きしゃ真横まよこから、握手あくしゅしてえる角度かくどでシャッターをる。


「はい。ありがとうございます。このようになります」

 三人さんにんで、デジカメのモニターをのぞく。オレの位置いちからはえない。見たい。

「そのデータ、わたくしにもいただけますかしら?」

「はい。もちろんです」

へんなことに使つかわないでよ?」

拡大かくだい印刷いんさつしてがくれて玄関げんかんホールにかざります」

「それくらいなら、いいか。なんかいやだけど」


 三人さんにんがソファにすわりなおす。姿勢しせいただし、表情ひょうじょうきしめる。

「では、インタビューにはいらせていただきます。最初さいしょ質問しつもんは、人々ひとびとまもるヒーローとつね日頃ひごろからはやされるこうランク魔狩まかりみなさんが、人々を守るためになにをしていらっしゃるのか、でいかがでしょうか?」

 おんな記者きしゃが、笑顔えがおで、意地いじわる質問しつもんだ。

こうランク魔狩まかりみなさんがたおすのは、皆さんのとてもたか力量りきりょう見合みあう、とてもつよ狭魔きょうまばかりですよね? この場合ばあいの『人々ひとびと』を一般人いっぱんじん定義ていぎした場合ばあいに、そのようなつよ狭魔きょうまに人々が遭遇そうぐうする可能性かのうせい皆無かいむ。つまりは無関係むかんけい、ともかんがえられませんか?」

 不穏ふおん雰囲気ふんいきただよはじめた。どうやら、和気藹々わきあいあいのインタビュー、とはいかないみたいだった。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第31話 EP6-1 魔狩まかり通信つうしん/END

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