第30話 EP5-7 麗美帰る

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


「お二人ふたりにも、お世話せわになりました」

 麗美れみ淡白たんぱく口調くちょうで、丁寧ていねいあたまをさげた。


 小織こおり 麗美れみ魔狩まかりである。十四さい中学生ちゅうがくせいで、つめたい雰囲気ふんいき美少女びしょうじょである。あおとおるサラサラストレートヘアで、つきするど無表情むひょうじょうで、着飾きかざったドールみたいなカワイさもある。


 狭魔きょうま討伐とうばつえて、麗美れみもと学校がっこうもどる。カワイイけい私服しふくで、お世辞せじきにカワイイ。


「はいはい。ようんだんだから、とっととかえりなさい」

 桃花ももかなくった。


 絢染あやそめ 桃花ももか魔狩まかりである。十四さい中学生ちゅうがくせいで、桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。オレの幼馴染おさななじみで、クラスメートでとなりせきである。

 いつもの私服しふく、ノースリーブにミニスカートにスニーカーである。こしには、両刃りょうば大剣たいけんおさめた茶色ちゃいろおおきな革鞘かわざやをさげる。


観光かんこうくらいさせてください。またいつ琴音ことね御姉様おねえさま二人ふたりっきりになれるか、かりませんのですから」

 麗美れみが、邪魔者じゃまものにらんだ。

琴音ことねうち一週間いっしゅうかんもおまりしたんでしょ? 十分じゅうぶんでしょ? アタシもおまりしたかった!」

 桃花ももかが、イチャモンをつけるドサクサで願望がんぼうくちした。

 桃花ももかともだちがともない。


定番ていばんえきビルでいいんじゃないか? あそべるとこも土産みやげもあるし。知名度ちめいどのない偉人いじん史跡しせきめぐりとか、しないだろ?」

 オレは思慮しりょぶか提案ていあんした。

「そうですね。四人よにんあそぶなら、それがいいとおもいます」

 琴音ことねひかえめに賛成さんせいした。


 真奉しんほう 琴音ことね魔狩まかりである。銀縁ぎんぶちまるメガネをかけたメガネ女子じょしで、灰色はいいろながかみみにして、小柄こがらむねおおきい。フリルやレースがいっぱいのキュートな私服しふくこのむ。


「どうして! 二人ふたりして、わたくしと琴音ことね御姉様おねえさまの、二人ふたりっきりの時間じかん邪魔じゃまいたしますの!? 琴音ことね御姉様おねえさままで!」

 麗美れみがキレた。キレかたもカワイイ。

「ひっ、ひぃぃぃ~」

 琴音ことねおびえたひとみでナチュラルに、ちいさく悲鳴ひめいをあげた。オレの背中せなかかくれた。

「まぁ、いいじゃない。二人ふたりより四人よにんほうたのしいわよ」

 桃花ももかがデリカシー皆無かいむわらった。


   ◇


 たのしい時間じかんは、あっとる。いよいよ、おわかれのときがる。

 閑散かんさんとしたえきのホームで、列車れっしゃ発車はっしゃ時刻じこくちかづく。


琴音ことね御姉様おねえさま……」

 淡白たんぱく麗美れみにもなみだかぶ。

 琴音ことねやさしく微笑ほほえむ。

麗美れみちゃん。おうとおもえばいつでもえますよ」

琴音ことね御姉様おねえさま!」

 麗美れみ琴音ことねきついた。おおきなむねかおうずめた。


 琴音ことね麗美れみあたまでる。

 麗美れみは、琴音ことねおおきなむねかおうずめたままうごかない。

 かおられたくないかんじなのだろう。なみだでクシャクシャなのか、興奮こうふんいきあらいのか、はいておいて。


麗美れみ……」

 桃花ももかにもなみだかぶ。


 学校がっこうでの麗美れみは、ずっと『突然とつぜん転入生てんにゅうせい』のままだった。『なぞ美少女びしょうじょ』のイメージをくずさなかった。

 桃花ももかとはべつのベクトルで、ともだちをつくるのが苦手にがてなのだろう。桃花ももかおなじで、友だちがすくないのだろう。


麗美れみっ!」

 かんきわまった桃花ももか両腕りょううでひろげて、麗美れみきつこうとびつく。

 麗美れみ琴音ことねおおきなむねから瞬発しゅんぱつてきかおをあげる。おでこを桃花ももかのおでことカチわせ、けとめる。

「だからどうして! 邪魔じゃまいたしますの!? それから、わたくしの琴音ことね御姉様おねえさまれしくしないでいただけます?!」

「なによそれ、せっかくもらきしてあげたのに! またなさいよ! アタシも一緒いっしょにおまりさせなさいよ!」

 桃花ももか麗美れみが、鼻先はなさき同士どうしわせてにらった。

「お二人ふたりとも! ちかい、近いです!」

 琴音ことね赤面せきめんして、あかかお両手りょうておおった。


 オレは笑顔えがお見守みまもる。

 いてかなしむわかれでもあるまいし、こんなかんじでいいとおおう。


 そして発車はっしゃのベルがって、麗美れみかえっていった。

 みじかくもたのしい『こおり転校生てんこうせい』との日々ひびが、わったのだった。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第30話 EP5-7 麗美れみかえる/END

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