第26話 EP5-3 琴音と麗美

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


 なつさかりの日曜にちよう昼間ひるまに、やまなかてた神社じんじゃにいる。

 セミのうるさ木々きぎかこまれて、ちいさな広場ひろばがある。広場はくさボウボウで、たぶん鳥居とりいだった残骸ざんがいと、たぶんなにかだったいわ土台どだいいくつかのこる。

 てすぎて、われないと神社じんじゃからない。ただ、不気味ぶきみ雰囲気ふんいきだけはある。


 まわりでは、魔狩まかりギルドの職員しょくいんがテントを設営せつえいしたりしてる。狭魔きょうま討伐とうばつのバックアップをしてくれる。

 今回こんかいは、オレは特殊とくしゅ魔力体まりょくたい狭魔きょうま観察かんさつやくだ。普段着ふだんぎティーシャツジーパンスニーカーでた。


「おたせして、ごめんなさい。着替きがえに手間取てまどってしまいました」

 琴音ことねが、くずれたつち階段かいだんをあがってきた。


 真奉しんほう 琴音ことねは、魔狩まかりである。

 クラスメートで、銀縁ぎんぶちまるメガネをかけたメガネ女子じょしで、小柄こがらむねおおきい。灰色はいいろみをほどいて、白銀はくぎんながかみをしている。

 レースやフリルをふんだんに使つかった白銀はくぎんの、魔法まほう少女しょうじょみたいな衣装いしょうまとう。レースの手袋てぶくろには、あかいハートとしろつばさかざられた片手かたてサイズのつえにぎる。

 琴音ことねしん姿すがた魔法まほう少女しょうじょスタイルである。


「こっちはいつでもいいってさ!」

 ギルド職員しょくいん手伝てつだっていた桃花ももかが、おおきくった。


 絢染あやそめ 桃花ももか魔狩まかりである。十四さい中学生ちゅうがくせいで、桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。オレの幼馴染おさななじみで、クラスメートでとなりせきである。

 いつもの私服しふく、ノースリーブにミニスカートにスニーカーだ。こしには、両刃りょうば大剣たいけんおさめた茶色ちゃいろおおきな革鞘かわざやだ。


琴音ことね御姉様おねえさま! キビキビ行動こうどうしてくださいませ!」

 麗美れみ淡白たんぱくごえこえた。


   ◇


 魔女まじょみたいなくろいローブで、あたまから全身ぜんしんをスッポリとおおったひとがいる。には、コブだらけの古木こぼくつえにぎる。

 ふる魔女まじょスタイルだ。おじいちゃんおばあちゃんがきな時代劇じだいげきる、むかし地味じみな『ウィッチ』のステレオタイプだ。


 ローブのフードのきから、かお確認かくにんする。

「れれっ、麗美れみちゃん。ごっ、ごめんなさい」

 琴音ことねおびえたひとみで、ナチュラルにオドオドした。

 ふる魔女まじょスタイルは、やっぱり、麗美れみだった。


 小織こおり 麗美れみ魔狩まかりである。十四さい中学生ちゅうがくせいで、つめたい雰囲気ふんいき美少女びしょうじょである。あおとおるサラサラストレートヘアで、つきするど無表情むひょうじょうで、着飾きかざったドールみたいなカワイさもある。


 だったはずだが、うしろでむすんだかみは、くすんだ水色みずいろのボサボサになっている。

 琴音ことねにしても麗美れみにしても、『ウィッチ』のかみはどうなっているのだろうか。


琴音ことね御姉様おねえさま! まだそんなうわついた格好かっこうをなさって! 魔女まじょたるものは!」

「ひっ、ひぃぃぃ~」

 唐突とうとつはじまった麗美れみのウィッチろんに、琴音ことねはオレの背中せなかかくれる。自信じしんあふれるしん姿すがた琴音ことねおびえさせるとは、妹弟子いもうとでしおそるべし。

「まぁまぁ。みんなたせるのもわるいから、ちゃっちゃと狭魔きょうまたおしちまおうぜ?」

 オレは麗美れみなだめて、はなしらすことにした。仲裁ちゅうさいとかそういうのは、苦手にがてだ。


   ◇


 廃墟はいきょした不気味ぶきみ神社じんじゃに、琴音ことね麗美れみかたならべる。


はじめます、琴音ことね御姉様おねえさま

 麗美れみ淡白たんぱくに、でもすこうれしげに、琴音ことねこえをかけた。

 左手ひだりて人差ひとさゆびに、てつ指輪ゆびわめた。くろ魔女まじょローブから素肌すはだほそうでばし、左手ひだりてたかかかげた。


 は、ゴテゴテしたオモチャの指輪ゆびわである。狭魔きょうませる魔法品マジックアイテムで、『刻印こくいん』とばれる。


 琴音ことねは、魔法まほう少女しょうじょスタイルになると、雰囲気ふんいきわる。内気うちきなオドオドではなくなる。堂々どうどうまえき、おおきなむねる。

麗美れみちゃん! よろしくおねがいします!」

 琴音ことね指輪ゆびわめた。白銀はくぎんながかみらし、左手ひだりてたかかかげた。


 前触まえぶれもなく、空気くうきわった。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第26話 EP5-3 琴音ことね麗美れみ/END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る