第25話 EP5-2 魔力体の狭魔

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


 琴音ことね麗美れみ同行どうこうして、放課後ほうかご直行ちょっこう魔狩まかりギルドまでてしまった。あの人間にんげん関係かんけいたりにして、放置ほうちはできなかった。

 もちろん、桃花ももかもいる。


今回こんかい作戦さくせんを、説明せつめいさせていただきます」

 魔狩まかりギルド一階いっかいおく応接室おうせつしつで、ひくいガラステーブルに作戦書さくせんしょひろげられた。

 琴音ことね麗美れみ対面たいめんのソファにすわるのは、黒髪くろかみをきつくまとめ、金縁きんぶち三角さんかくメガネをかけたオバ……年長ねんちょうのオネエサン受付嬢うけつけじょうだ。


 琴音ことね麗美れみは、二人ふたりけのソファにならんですわる。

 琴音ことね麗美れみからなるべくはなれようとソファのはしすわり、よこ桃花ももかにぎる。


 なんか、その、難解なんかい光景こうけいだ。


   ◇


 年長ねんちょうのオネエサン受付嬢うけつけじょうが、作戦書さくせんしょめくってつづける。

真奉しんほうさんと小織こおりさん。『ウィッチ』のお二人ふたりに、魔力体まりょくたい狭魔きょうま討伐とうばつをおねがいしたい、とかんがえています」


 魔力体まりょくたい狭魔きょうまとは、魔力体まりょくたい狭魔きょうまである。

 実体じったい魔力まりょくで、魔力による干渉かんしょうでしかたおせない。しかも、それ自体じたい魔法まほう使つかう。

 基本的きほんてきに『攻撃こうげき魔法まほういでつ』が討伐とうばつ方法ほうほう、とかんがえるとかりやすいだろうか。


 狭間はざま狭魔きょうまも、なぞおおい。かってることなんて、ほとんどない。


「そのためにばれてまいりました。つつしんで、おけいたします」

 麗美れみ淡白たんぱくこたえた。

琴音ことね御姉様おねえさまも、異存いぞんはございませんね?」

 さらに、せまるように琴音ことねせ、かたうえにまでかおちかづける。

「ひっ、ひぃぃぃ~?! 麗美れみちゃん! ちかい、近いです!」

 琴音ことねがナチュラルに、ちいさく悲鳴ひめいをあげた。


 パニクってる琴音ことねわって、桃花ももかく。

べつ区域くいきからすけんだり、それが琴音ことね訓練所くんれんじょでのパートナーだったり。面倒めんどう段取だんどりをする理由りゆうって、なにかあるの?」

 桃花ももか大人おとな相手あいてでも譲歩じょうほがない。


 受付嬢うけつけじょうが、金縁きんぶち三角さんかくメガネを指先ゆびさきでクイッとかけなおす。

 作戦書さくせんしょめくる。

「この狭魔きょうま、コードネーム『キューブ』は、複数ふくすう属性ぞくせいちます。同時どうじ複数ふくすうではなく、複数ふくすう属性ぞくせい任意にんいえられる、と推測すいそくされます」


 特殊とくしゅ狭魔きょうまだ。魔力体まりょくたい自体じたいめずらしくない。複数ふくすう属性ぞくせいちはめずらしい。

 特殊とくしゅ狭魔きょうまなら、オレには観察かんさつ依頼いらいがあるだろう。興味きょうみかれて、うえからのぞんだ。


   ◇


「お一人目ひとりめは、ランクSの『ウィザード』でした。属性ぞくせいえに、まった対応たいおうできませんでした」

 攻撃こうげき魔法まほう使つかえるおとこが『ウィザード』。『ウィッチ』のおとこばんである。

 第一次だいいちじ討伐とうばつ作戦さくせん報告書ほうこくしょのページがめくられた。


二回目にかいめは、ことなる属性ぞくせいのランクS『ウィッチ』『ウィザード』ペアでした。魔法まほうのタイミングをわせきれず、こちらも討伐とうばついたりませんでした。『キューブ』はびょう単位たんい属性ぞくせいえる、との報告ほうこくけています」

 第二次だいにじ討伐とうばつ作戦さくせん報告書ほうこくしょのページがめくられた。


 魔法まほうは『呪文じゅもん詠唱えいしょう魔法まほう発動はつどう対象たいしょう到達とうたつ』と段階だんかいむ。魔法まほうごとに、ひとごとに、かく所要しょよう時間じかんちがう。

 二人ふたり同時どうじに、ことなる魔法まほうを、一秒いちびょうのズレもなく着弾ちゃくだんさせる、なんて普通ふつうかんがえて至難しなんわざだ。


今回こんかい第三次だいさんじ討伐とうばつ作戦さくせんは、慎重しんちょう検討けんとうかさね、準備じゅんびととのえました。相反あいはんする属性ぞくせいの、おたがいをよくる、ランクS相当そうとう力量りきりょうつお二人ふたりの『ウィッチ』。それが、真奉しんほうさんと小織こおりさんです」

 第三次だいさんじ討伐とうばつ作戦さくせんのページが、二人ふたりまえされた。


「わたくしと琴音ことね御姉様おねえさまなら、容易たやすいことです。琴音ことね御姉様おねえさまも、そうおもいますよね?」

 麗美れみせまるように琴音ことねせ、かたうえにまでかおちかづけた。

「ひっ、ひぃぃぃ~?! 麗美れみちゃん! ちかい、近いです!」

 琴音ことねがナチュラルに、ちいさく悲鳴ひめいをあげる。麗美れみからげようとソファからし、ちそうになるのを桃花ももかささえる。


 なんか、その、難解なんかい光景こうけいだ。


   ◇


 魔狩まかりギルドのふるぼけたビルをる。真新まあたらしいビルがいなかにある。

 ビルがい夕刻ゆうこくにも、セミのこえこえる。夕刻ったって、あかるいしあつい。


 雑踏ざっとうながれのなかを、四人よにんならんであるく。ましがお麗美れみ気後きおくれして、しゃべりづらい。

 仕方しかたなく、オレがあかるいこえ提案ていあんする。

関係かんけいがギクシャクしてると、いきわないよな。親睦しんぼくふかめるために、いまから桃花ももかうちにでもあつまるか」

「いいわよ。ジュースとお菓子かしくらいすわよ」

 桃花ももか同意どういした。


「ギクシャクなんてしておりません! 親睦しんぼくなぞふかめずとも! わたくしと琴音ことね御姉様おねえさまは、よりもつよきずなむすばれていますの!」

 麗美れみ興奮こうふんした口調くちょうで、オレに反論はんろんした。

 オレはビックリした。ずっと冷淡れいたんだったのに、唐突とうとつあつくなった。

「あ、いえ、転入てんにゅうともな色々いろいろがありますので、遠慮えんりょさせていただきます。すこし、興奮こうふんしてしまいました。もうわけありません」

 麗美れみ赤面せきめんして、丁寧ていねいあたまをさげた。


 ビックリした。

 琴音ことね麗美れみ不仲ふなかではない、とかった。友情ゆうじょうおもかんじなのだな、とオレは安心あんしんした。

 これなら、狭魔きょうま相手あいておくれをることもないだろう。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第25話 EP5-2 魔力体まりょくたい狭魔きょうま/END

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