第23話 EP4-6 気難しいお年頃

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 小石こいし駐車場ちゅうしゃじょうゆかちて、コツン、とかたった。パキンッ、とたかおとくだけた。


 はん地下ちか駐車場ちゅうしゃじょうくらがりに、桃花ももかがいる。狭間はざまからもどって、オレは背後はいごにいるから背中せなかしかえないけど、ふくやぶれてしまっている。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。

 普段着ふだんぎティーシャツジーパンスニーカーで、こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる。一応いちおうしの魔狩まかりである。


桃花ももか。ほい、ティーシャツ」

 オレは、オレの予備よびティーシャツを桃花ももかほうった。さすがに上半身じょうはんしんがほぼはだかずかしいだろう。

「ありがと」

 桃花ももかって、素早すばやる。

なにこれっ!? ダサっ?!」

「ダサくぇし。流行はやりのダサティーだし」

「やっぱダサいんじゃん!」

 おりをダサいとおこられた。ちょっとショックだ。


   ◇


 ヒュン、と風切かぜきおんる。

 桃花ももか大剣たいけんにぎって、革鞘かわざやけた。パァンッ!と派手はで破裂音はれつおんがした。


「えっ!?」

 桃花ももか華奢きゃしゃからだは、秋葉あきは先生せんせいったむち衝撃しょうげきに、間抜まぬけなこえばされた。

 打球だきゅう速度そくどで、鋭角えいかくゆかにぶつかる。鋭角えいかくかえってグルグルまわりながら、全身ぜんしんひねって両手りょうて両足りょうあし着地ちゃくちする。スニーカーの靴底くつぞこで、しろけむりしながらきゅうブレーキをかける。


 空中くうちゅうでの制動せいどうがネコだ。着地ちゃくち威嚇いかくするネコだ。


「アタシのこと価値かちないとかっといて、アンタだって『ウォリア』じゃん!」

 桃花ももか威嚇いかくするネコのポーズで、秋葉あきは先生せんせい抗議こうぎした。

実行じっこう部隊ぶたいだって必要ひつようでしょ!」

 秋葉あきは先生せんせいが、にしてる口調くちょう抗議こうぎかえした。


 あの桃花ももかばすとは、なかなかのパワーだ。ちから収束しゅうそくがしやすいむち武器ぶきとしてるのも、知性ちせいかんじられてポイントたかい。パワフル、インテリ、セクシー。


「それを、どいつもこいつも、『これからは狭聖きょうせいさま時代じだい』って! なにが、『単純たんじゅん戦闘せんとうけい魔狩まかり狭聖きょうせいさま下位かい互換ごかん』よ?! 対話たいわ時間じかんすらろく確保かくほできない存在そんざいに、わたしおとるっての!?」

 たましいさけびだ。


「アンタの事情じじょうなんて、ったこっちゃないわよ!」

 桃花ももかさけかえした。本質ほんしつであり、すべてだった。


   ◇


「そう、そうよ、それより、そんなことより。どうして、『上禍じょうまがつ』にころされてないのよ? だって、『上禍じょうまがつ』、『上禍じょうまがつ』よ?」

 秋葉あきは先生せんせい動揺どうようする。

 無理むりもない。桃花ももかを『ランクAの魔狩まかり』としか認識にんしきできていないのだから。


「それこそ、ったこっちゃないわよ。研究けんきゅう部門ぶもんってのが見栄みえったのか、アタシがつよすぎたんじゃないの?」

 桃花ももかが、威嚇いかくするネコのポーズからちあがる。みじかいスカートの砂埃すなぼこりはたとす。


 秋葉あきは先生せんせい戦意せんいれる寸前すんぜんえる。ダメしをねらって、オレがつづく。

「きっとからないっすよ。巨乳きょにゅう秋葉あきは先生せんせいには、貧乳ひんにゅうももぱがっ?!」

 桃花ももか裏拳うらけんがオレの顔面がんめんはいった。いたみにかおおさえてうずくまった。

 いわれのない暴力ぼうりょくがオレをおそう。まれによくある。


 桃花ももかがドヤがおぐ。

「まだつづける? 結果けっかえたとおもうけど?」

 こいつはいつもこうだ。もうちょっと穏便おんびんにできないのか。


わたしはっ! わたしは、わたし有能ゆうのうだってしめさないといけないの! みんなに、みとめさせないと……」

 秋葉あきは先生せんせいこえが、ちいさくなっていく。

 本人ほんにんも、がないとかっている。けられないけれど、負けをみとめられないけれど、負けをさっしている。


 もはや、勝敗しょうはいけっした。


   ◇


 秋葉あきは先生せんせいが、オレたちをる。動揺どうようひとみふるえる。

「……くっ」

 背中せなかせて、駐車場ちゅうしゃじょうおくへとした。

秋葉あきは先生せんせい!」

 オレは、あわててこえをかけた。


 巨乳きょにゅうがブラウスのボタンを千切ちぎりそうないきおいで、ほんのわずか、あしをとめてかえる。そこをねらって、言葉ことばつづける。

「えっと、『自分じぶん能力のうりょくは自分でみとめなさい』って桃花ももかがたまにうっす」

 ダサティーかたかるくと、桃花ももかれて赤面せきめんした。チョロい。


 秋葉あきは先生せんせいなにかをいたげにして、なにこたえずに、またした。ながあしで、あっとくらがりにえていった。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第23話 EP4-6 気難きむずかしいお年頃としごろ/END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る