第19話 EP4-2 特殊な狭魔

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


本日ほんじつは、遠見とおみさんにおねがいがあるのですが」

 魔狩まかりギルドの受付うけつけカウンターで、黒髪くろかみをきつくまとめた受付嬢うけつけじょうげた。


   ◇


 数日後すうじつご日曜にちよう昼間ひるまに、オレはビジネスがいひろ駐車場ちゅうしゃじょうにいる。日曜にちようなのに、半分はんぶんくらいはくるままる。


遠見とおみくんきゅう依頼いらいけてくれて、感謝かんしゃする」

 片桐かたぎりこえをかけてきた。

 魔狩まかりギルドの、この区域くいき担当たんとう責任者せきにんしゃだ。くろいスーツ姿すがたの、おやよりも年上としうえくらいのオッサンだ。たかがたで、サングラスとととのったひげと、ひだりまぶたたて傷痕きずあと特徴的とくちょうてきな、哀愁あいしゅうただよしぶさだ。

「これくらい、いいっすよ。いつもお世話せわになってるっすから」

 オレはかる口調くちょうこたえた。


 オレがばれたのは『特殊とくしゅ挙動きょどう狭魔きょうま討伐とうばつ作戦さくせん』だ。


 作戦さくせん自体じたい単純たんじゅん明快めいかいである。

 ランクAの魔狩まかりたおしそびれた狭魔きょうま討伐とうばつする。

 狭魔きょうませる魔法品マジックアイテム刻印こくいん』を使つかう。

 ランクAが三人さんにんかりの必勝ひっしょう体制たいせいのぞむ。


少年しょうねん協力者きょうりょくしゃの『スコーパ』であるな? よろしくたのむ」

 アロハシャツにはんズボンでサンダルのスキンヘッドマッチョ大男おおおとこ握手あくしゅわす。普段着ふだんぎティーシャツジーパンスニーカーのオレよりラフな格好かっこうをしている。

 武器ぶきはメリケンサックだ。たまんま、肉弾戦にくだんせん大好だいすきな『ウォリア』だ。


「きゃははっ! はじめてた! めずらしい能力のうりょくなんでしょ!?」

 ボウガンを化粧けしょう大人おとなおんなひとがテンションたかわらった。たくさんのアクセサリーでジャラジャラとかざって、桃花ももかみにたけみじかいパステルブルーのワンピースにハイヒールと、派手はでちだ。


「……」

 無口むくちなフルプレートメイルとも握手あくしゅわす。

 武器ぶきはオーソドックスに、長剣ロングソードとカイトシールドを装備そうびする。全身ぜんしんよろい中身なかみえないけど、体格たいかくさそうだからおとこひとだとおもう。


「よろしくおねがいしまっす」

 ランクAが三人さんにんもなんて、オレは緊張きんちょうしてかた挨拶あいさつをした。


   ◇


 オレは、ランクAの三人さんにんがこれから討伐とうばつする狭魔きょうま観察かんさつやくだ。

 傍観者ぼうかんしゃとして、狭魔きょうまて、分析ぶんせきする。外見がいけんいて、能力のうりょく数値化すうちかする。


 この世界せかいから狭間はざまえる特殊とくしゅ能力のうりょくちだから、ちょっとでも特殊とくしゅ狭魔きょうまると、よく観察かんさつたのまれる。

 狭魔きょうまとは、まったくの未知みち存在そんざいだ。人類じんるい興味きょうみ対象たいしょうだ。


 知識ちしき武器ぶきだ。


「いつでもいいっす!」

 オレはおおきくって、三人さんにん合図あいずおくった。

『よし! 戦闘せんとう開始かいし!』

 三人さんにんそろえて、『刻印こくいん』をめたたかかかげた。


 前触まえぶれもなく、空気くうきわった。


   ◇


 くろ世界せかいに、しろ狭魔きょうまがいる。人間にんげん大差たいさないサイズで、人間にかたちで、白い粘土ねんどみたいな質感しつかんで、黒い空間くうかん片膝かたひざかかえてすわる。


 おかしい。


 魔狩まかり三人さんにん対峙たいじして、しろ狭魔きょうまうごかない。普通ふつうなら、狭魔きょうまはすぐに魔狩まかりおそう。


 なるほど、特殊とくしゅ挙動きょどう狭魔きょうまのようだ。


 そのしろ狭魔きょうまは、ひとかたち粘土ねんどねじりにねじったようなをしている。白い表皮ひょうひ螺旋らせん凹凸おうとつが、頭頂部とうちょうぶからあし爪先つまさきまで、全身ぜんしんにある。


 おかしい。

 狭魔きょうま外見がいけん普通ふつうなんてないから、そんなものがおかしいってはなしじゃない。

 なんだか、違和感いわかんがある。


 不意ふいに、しろ狭魔きょうまが、こっちをた。オレのほうた。螺旋らせん凹凸おうとつのあるひとかおみたいな部位ぶいが、なぜだか、わらってるようにえた。


 ……いやいやいや。そこにはなくちみみもないのに、こっちをたもわらったもない。

 そもそも、狭間はざまから、この世界せかいるなんて、できるわけがない。


 ……いや、この世界せかいから狭間はざまえる人間にんげんがいるのだから、狭間はざまからこの世界せかいえる狭魔きょうまがいたとして、不思議ふしぎはないのか?

 ……いやいやいや。こまる。それは非常ひじょうこまる。


 背中せなかに、強烈きょうれつ悪寒おかんはしった。


たてかまえ! ボウガンで援護えんごたのむ! こちらから仕掛しかけるのである!」

 一向いっこううごかないしろ狭魔きょうまに、三人さんにん先制せんせい攻撃こうげき仕掛しかけた。


 オレは、桃花ももか狭魔きょうま退治たいじ何度なんどてる。だから、そのくらいのつよさの狭魔きょうまなら雰囲気ふんいきかる。

 そのしろ狭魔きょうまは、かくちがう。オレがたヤツらより、はるかにヤバい。もしかすると、このあいだ巨大きょだい毛玉けだまにも匹敵ひってきする。


   ◇


 狭間はざまえた。

 ランクAの魔狩まかり三人さんにんが、アスファルトの駐車場ちゅうしゃじょうたおれて、うめいていた。


 気紛きまぐれに野良猫のらねこ相手あいてをしたような。牙剥きばむ小動物しょうどうぶつかるくあしらったような。

 あのしろ狭魔きょうまころがなかった。だから、ランクAの魔狩まかり三人さんにんなずにんだ。それだけだ。


 オレは、恐怖きょうふふるえていた。世界せかい不安定ふあんていれて、鼓膜こまくにはガチガチとおとだけがひびいた。

 とんでもないものをてしまった。てはいけないなにかをてしまったような、理由りゆうからない、ただ後悔こうかいがあった。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第19話 EP4-2 特殊とくしゅ狭魔きょうま/END

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