第20話 EP4-3 秋葉先生は男子に人気である

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


 まぁ、いまは、どうでもいいことか。


「はぁい! みんなぁ! 頑張がんばってぇ~!」

 ジャージ姿すがたの、たか巨乳きょにゅうおんな教師きょうしがグラウンドをはしる。


 保健ほけん体育たいいく秋葉あきは先生せんせいだ。体育たいいく教師きょうし村田むらた通称つうしょう『ゴリせん』が入院にゅういんちゅう臨時りんじ教師きょうしだ。


『はーい!』

 一緒いっしょにグラウンドをマラソンする男子だんし生徒せいとたちが、力強ちからづよ返事へんじそろえた。

 マラソンの授業じゅぎょうがこんなにりあがるのも稀有けうだろう。


 秋葉あきは先生せんせい一歩いっぽごとに、巨乳きょにゅうおもそうにれる。ジャージのジッパーがはじぶんじゃないかと、ていて期待きたい、もとい、心配しんぱいになる。


 まぁ、周回しゅうかいおく寸前すんぜん秋葉あきは先生せんせいまえはしるオレには、どうでもいいことか。

 運動うんどう苦手にがてだ。れる巨乳きょにゅうえない。たい。


   ◇


周回しゅうかいおくれグループもぉ、頑張がんばってぇ~!」

 ついに、秋葉あきは先生せんせいいつかれた。よこならばれた。


 秋葉あきは先生せんせい一歩いっぽごとに、巨乳きょにゅうおもそうにれる。ジャージのジッパーがはじぶんじゃないかと、ていて期待きたい、もとい、心配しんぱいになる。


頑張がんばりまぁす!』

 周回しゅうかいおくれグループで返事へんじそろえた。


 やった! れた!、とこころなかよろこぶ。心の中で絶叫ぜっきょうする。

 オレのすぐとなりを、秋葉あきは先生せんせいはしる。巨乳きょにゅうおもそうにれる。


 おもわず魅入みいる。

 ちかい。あまりにも近い。いまにも、たってしまいそうだ。

 もういっそたってほしい、とおもった瞬間しゅんかんたった。おもれる秋葉あきは先生せんせい巨乳きょにゅうが、オレのかたたった。

「おぅっふぅっ?!」

 オレは、その質量しつりょうけてヨロけて、ころんだ。ラッキー、もとい、なんたる不覚ふかくやわらかかった、じゃなくて、想像そうぞうぜっする弾力だんりょくだった。


「あぁん、ごめんなさぁい。あらあらぁ、いちゃったわねぇ。一緒いっしょに、保健室ほけんしつきましょぉねぇ」

 秋葉あきは先生せんせいかれて、オレはちあがる。


 まえ秋葉あきは先生せんせいかれる。背中せなかには男子だんしたちからブーイングをびる。

 怪我けが功名こうみょうってやつか。

 うらやましかろう。優越感ゆうえつかんひたって、オレのかおゆるんでいたとおもう。


   ◇


 オレは緊張きんちょうしていた。


みたらってねぇ」

 保険医ほけんい闇孤やみこがいない。秋葉あきは先生せんせい二人ふたりっきりで、秋葉あきは先生せんせい消毒薬しょうどくやくってもらえる。

 ラッキーすぎる。ラッキーすぎてこわい。かえみちひどったりしませんように。


先生せんせい不注意ふちゅういでごめんねぇ。おびに、内緒ないしょで、ラムネあげちゃおうねぇ」

 オレのひざ絆創膏ばんそうこうえて、秋葉あきは先生せんせいがジャージのポケットからラムネ菓子がしした。よくある、包装用ほうそうようのビニールをいてひねった個包装こほうそうだ。


「……はっ、はいっ」

 オレは緊張きんちょうして、上手うまこたえられなかった。

 ずっと、緊張きんちょうしていた。グラウンドのマラソンで周回しゅうかいおくれでとなりならばれて、あたりからずっとだ。

 巨乳きょにゅうおんな教師きょうしならんではしって、巨乳きょにゅうたってはじかれて、無様ぶざまころんで、かれてきて、手を引かれてあるいて、消毒薬しょうどくやくられて、絆創膏ばんそうこうられて、そのひとひとつにいちいち緊張きんちょうした。


 でも、この緊張きんちょうちがう。

 ちいさくふるえるでラムネ菓子がしる。ラムネ菓子から秋葉あきは先生せんせいへと視線しせんをあげる。期待きたい笑顔えがおう。


 ガラガラッ、と乱暴らんぼうにドアがいた。

先生せんせいわります。保健ほけん委員いいん絢染あやそめです。男子だんしどもがうるさいので、授業じゅぎょうもどってもらっていいですか?」

 桃花ももか不機嫌ふきげんはいってきた。クラスでけて腕力わんりょくつよいから怪我人けがにん病人びょうにん余裕よゆうかつげる、という理由りゆう保健ほけん委員いいんえらばれた。


「はいはぁい。ちょうど処置しょちわったところでぇす。あとはぁおねがいねぇ」

 秋葉あきは先生せんせいたのしげな足取あしどりで、巨乳きょにゅうらして保健室ほけんしつていく。足音あしおと廊下ろうかとおざかる。


   ◇


「……うっ、うあぁっ、こわかった……」

 オレはおもわず、涙目なみだめ弱音よわねをはいた。

 オンゲ仲間なかま、もとい、ネットニンジャの情報じょうほうがなければ、秋葉あきは先生せんせい期待きたいのままに、このラムネ菓子がしべただろう。なにかんがえず、なにまよわず、なんうたがいもなく。


桃花ももか琴音ことねたのんで、ギルドで調しらべてもらってくれ」

 オレはラムネ菓子がし桃花ももかす。


 桃花ももか怪訝けげんと、秋葉あきは先生せんせいった方向ほうこう横目よこめる。

「……マジで?」

「あの情報じょうほうおもかんだだけで、根拠こんきょはないぜ。勘違かんちがいなら勘違かんちがいでいい。これも、市販しはんのラムネ菓子がしなら、そのほうがいい」


「それはそうね」

 桃花ももか平然へいぜんと、かすめるようにラムネ菓子がしった。


 もうわりにしたかった。こわいのはきらいだ。

 でも、あの事件じけんは、まだつづいていた。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第20話 EP4-3 秋葉あきは先生せんせい男子だんし人気にんきである/END

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