第18話 EP4-1 狭聖教団

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


「それで、あたらしい情報じょうほうがあったのか?」

 オレは校舎こうしゃはしがりかどもたれて、ひとごとよそおった。

左様さよう。このツ◯ッターをるでござる」

 かどがったさきかべもたれる男子だんしが、こちらをずにスマホをす。情報じょうほうのオンゲ仲間なかま、もとい、正体しょうたい不明ふめいのネットニンジャである。


「ツ◯ッター……? あぁ、◯ックスか」

「ツ◯ッターにござる」

 オレがろうとしたスマホを、相手あいてきゅうめた。

「あ、あぁ、失言しつげんだった。ツ◯ッターだったな。ツ◯ッターだ」

 ふたたされたスマホをる。


「……うへぇ」

 おもわず、嫌悪けんおれた。

 モテのモテ自慢じまんだ。オレたちには一生いっしょうえんのない、リアじゅうのチラシのうらだ。

拙者せっしゃ当校とうこう生徒せいと目星めぼしをつけるアカにござる。ちょっとでも仲良なかよくなった女子じょしをカノジョびすると悪評あくひょうの、二組にくみ新野しんの殿どのにござろう」

 嫉妬しっとまみれた補足ほそく説明せつめいはいった。

二組にくみ新野しんのって、たしか、『カリスム』の特殊とくしゅ能力者のうりょくしゃか」

 オレとおなじで特殊とくしゅ能力者のうりょくしゃだからおぼえてる。『ひとかれやすい』という、ダントツで狭魔きょうま無意味むいみ能力のうりょくである。


 そむけたくなる自己じこ陶酔とうすいツ◯ートがならぶ。~がこっちばかりつかれる、とか、~がやさしすぎておもい、とか、キモすぎる。

「これか……」

 ひとつ、それっぽいのがある。

 内容ないよう要約ようやくすると、『二人ふたり距離きょりちぢめるクスリを、立場的たちばてきかせないひとからもらって、禁断きんだんこい予感よかん』とある。


 オレはまだ、『新種しんしゅ能力のうりょく増強薬ぞうきょうやく』を独自どくじ勝手かって調査ちょうさしてる。手掛てがかりがないからりなんて、気分きぶんがモヤモヤして、とてもじゃないがれられない。


ほかに、このことをってるヤツは?」

拙者せっしゃかんにすぎぬ。情報じょうほうですらないでござる」

「よし。他言たごん無用むようたのむ。あぶないから深入ふかいりもするなよ」

合点がってん承知しょうちすけ報酬ほうしゅうは、いつもの口座こうざたのむでござる」

 オンゲ仲間なかま、もとい、ネットニンジャの足音あしおと階段かいだんをあがっていく。

 オレも、そのはなれて、廊下ろうか教室きょうしつへとあるく。


 まだなにわってない。

 オレは、一人ひとりでもこたえに辿たどくつもりだ。


   ◇


 手掛てがかりはた。つぎは、協力者きょうりょくしゃだ。


 オレと桃花ももか琴音ことね三人さんにんで、放課後ほうかご校舎こうしゃうら集合しゅうごうした。校舎こうしゃ裏口うらぐち階段かいだんに、三人さんにんならんですわった。


「ってことなんだ」

 オレが情報じょうほうを、二人ふたり開示かいじする。

 琴音ことねが、ビックリした。銀縁ぎんぶちまるメガネのおくひとみ動揺どうようらして、蒼褪あおざめた。


「ここっここれは、守秘しゅひ義務ぎむ違反いはんになっ、なってしまうのですがっ」

 琴音ことねつづけて、くちだけをせわしなくうごかす。テンパってワチャワチャと両手りょうてる。

 動揺どうようしすぎて上手うま言葉ことばにならないようだ。

 ずかしさにかお両手りょうておおう。えたい、みたいなひとごとかすかにこえる。


狭聖きょうせい教団きょうだんは、ご存知ぞんじですか?」

 琴音ことねがようやく本題ほんだいはいった。

ってる知ってる。狭魔きょうまかみ使つかいって崇拝すうはいする、ヤバい集団しゅうだんよね」

 桃花ももかが、たのしいおしゃべりの口調くちょうこたえた。

 オレはさっして、きながら桃花ももかこしきついた。


「そんなこわ案件あんけんだなんておもわなかったんだよぉ~」

「はいはい。ビビリのくせに、いっつも危険きけんくびむわねぇ」

 桃花ももかが、オレの臆病おくびょう半笑はんわらいで、オレのあたまでる。


 狭聖きょうせい教団きょうだんからむなら、中学生ちゅうがくせいまくじゃない。大人おとなでもあしむ、危険きけん集団しゅうだんだ。

 表面的ひょうめんてきには、妄言もうげんかえすマイナーな新興しんこう宗教しゅうきょううらではなにをしてるかかったもんじゃない。狭魔きょうまってる、なんてうわさまである。


 道理どうりで、調査ちょうさ呆気あっけなくられるわけだ。

 狭聖きょうせい教団きょうだんなんてヤバい連中れんちゅうは、表立おもてだって捜査そうさできない。うら慎重しんちょうに、捜査そうさのプロが慎重しんちょうかさねて捜査そうさしてるにちがいない。


 中学生ちゅうがくせい素人しろうとなんて、邪魔じゃまでしかない。


わり! 解散かいさん! このはなしはこれでわり!」

 オレはきながら宣言せんげんした。


 こうして、オレの『新種しんしゅ能力のうりょく増強薬ぞうきょうやく事件じけん』はわった。

 わった、はずだった。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第18話 EP4-1 狭聖きょうせい教団きょうだん/END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る