第17話 EP3-2 最強の実力

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


はやめにジェットコースターろうぜ」

 オレは建設的けんせつてき提案ていあんをした。

 定番ていばんのアトラクションは、こんな地方ちほう都市とし遊園地ゆうえんちでもむものだ。混めば混むほど時間じかんながくなるものだ。


つぎはコーヒーカップね!」

「オマッ?! 桃花オマエ加減かげんしろよ? 全力ぜんりょくまわすなよ?」

 桃花ももかがはしゃいで、オレと琴音ことねく。


「ゴーカートで競争きょうそうだぜ! おれっちのモテモテドライビングテクニックをせてやるぜ!」

 古堂ふるどう中学生ちゅうがくせいどうレベルではしゃぐ。

けないっすよ! 永遠えいえんのライバルっすから!」

 オレもけじとはしゃぐ。


「あ、あの。わたし、お屋敷やしきはいりたいのですが」

 思案じあん琴音ことねちいさく挙手きょしゅして、めずらしく希望きぼうくちにした。

「い、いいな? みんな一緒いっしょだからな?」

「い、いいわよ? はぐれないようにつないでね?」

 オレも桃花ももかも、かおあおくしながら快諾かいだくした。


観覧車かんらんしゃりますわよ! わたくしとなりすわっていいのは、桃花ももかちゃんだけでしてよ!」

 ストーカーもじって、もとい、皐月さつき一緒いっしょ観覧車かんらんしゃ目指めざす。

 わるひとじゃない、どころか正義せいぎ味方みかたみたいなひとだ。見守みまもるタイプだから、邪険じゃけんにする必要ひつようもない。


   ◇


 アトラクションを一通ひととおたのしんだ。

 キッチンカーでソフトクリームをって、青縞あおしまのパラソルきのしろまるテーブルをかこむ。皐月さつきだけって、四人よにんしろまるイスにすわる。


 とおりすがるひとたちが、こっちを何度見なんどみもする。

 皐月さつきちょう有名人ゆうめいじんだ。全国ぜんこくでもトップクラスの魔狩まかり、ランクSSSの『ウォリア』だ。

 頻繁ひんぱんに『魔狩まかり通信つうしん』にるし、ときには表紙ひょうしだってかざる。


 ときには『最強さいきょう魔狩まかり』とばれる。

 最強さいきょう魔狩まかり一人ひとり、とでもぶべきか。

 ウォリアとかスナイプとかウィッチとか、つよさの方向性ほうこうせいちがうから、クラスごとに最強さいきょうがいてしかるべきである。おなじクラスでもつよみがちがったり諸説しょせつあったりで、『最強さいきょう』は実際じっさい何十人なんじゅうにんもいる。


 おおきなハンマー『ディメンションクラッシャー』が目立めだつのもある。おおきなヘッドにられた女神めがみ本当ほんとう素晴すばらしい。

 本人ほんにんがナイスバディの美女びじょ、ってのがトドメだ。むねおおきくこしほそくて、スリムでたかくて、写真しゃしんえがすさまじい。


「っ?!」

 前触まえぶれもなく、空気くうきわった。


桃花ももかちゃんとのたのしい楽しいデートですのに、無粋ぶすいですこと」

 皐月さつき不敵ふてき微笑ほほえんで、にあるソフトクリームを空高そらたかくへとほうげた。


   ◇


 皐月さつきえる。直前ちょくぜんまでいた場所ばしょに、もういない。


 この世界せかいから、狭間はざまばれる世界にまれたのだ。そこは、くろしろ灰色はいいろの世界だ。狭魔きょうまおそれられるモンスターと、引き込まれた人間にんげんとの、命懸いのちがけのたたかいのだ。


 空気くうきがビリビリとふるえる。たのしい遊園地ゆうえんちに、だれもが不安ふあんげにキョロキョロする。

 オレがる『いつも』とはちがう。

 オレは、この世界せかいから狭間はざまえる能力のうりょくちの魔狩まかりだから、見えるし、理由りゆうかる。


 狭魔きょうまつよ人間にんげんたたかうために狭間はざま魔狩まかりむ、とかんがえられている。つよすぎる狭魔きょうまおそわれることは基本きほんてきにないし、狭間はざま時間じかん制限せいげんもあって、狭魔きょうまころされる人間にんげんすくない。


 ただし、例外れいがいがある。『最強さいきょう魔狩まかり』とばれるひとたちである。


 人間にんげんとしてもっとつよい。だから、一定いってい以上いじょうつよさ、とてもつよい、意味いみ不明ふめいつよい、つよさの概念がいねん超越ちょうえつした、みたいな狭魔きょうますべ相手あいてにしなければならないのだ。


 つよさの上限じょうげんすら不明ふめい狭魔きょうまおそわれる。えない凶悪きょうあく狭魔きょうま出没しゅつぼつすればたおしに出向でむく。

 いつんでも不思議ふしぎじゃないし、それでもきている。それこそが『最強さいきょう』である。


   ◇


 灰色はいいろそらした灰色はいいろ砂漠さばくに、くろ巨大きょだい狭魔きょうまがいる。


 やま見紛みまがう、『巨大きょだい』よりもおおきな表現ひょうげん模索もさくしたくなる、異様いようおおきさである。くろながおおわれてるような、かたまりのような、姿すがた正確せいかく認識にんしきできない。

 おかシイ。てるだケデくるう。現実感げんじつかんガブれる。


ひと世界せかいにまで悪影響あくえいきょうおよぼすつよさ。納得なっとくですわ。このわたくしが、突然とつぜんもどされるわけですわね」

 皐月さつきおおきなハンマーを両手りょうてにぎる。おもいヘッドをかんじさせない軽快けいかいさで、バトンみたいにクルクルとまわす。

 あかかみ薄紫うすむらさきのドレスがれる。スローなダンスをおどるように、ナイスバディが優美ゆうびなステップをむ。


「グ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴ」

 異様いよう咆哮ほうこう狭間はざまがガタガタとブレて、巨大きょだい毛玉けだま巨大きょだいけた。漫然まんぜんと、皐月さつきおそいかかった。巨大きょだいならび、砂漠さばくすなごとつぶそうと、巨大きょだいちてきた。


 皐月さつきまわしていたハンマーをつよにぎり、右肩みぎかたりかぶる。一歩いっぽし、灰色はいいろ砂漠さばくみしめ、全身ぜんしんちからみなぎらせて、まえのめりにりおろす。

ひっ! さつ!」

 灰色はいいろ狭間はざまに、しろ亀裂きれつはしった。こっちの世界せかいにまで、ビシビシッと断裂音だんれつおんこえた。

「ディメンション!」

 ハンマーがれることなく、巨大きょだい毛玉けだまが、あたまされた饅頭まんじゅうみたいにゆがみ、つぶれる。ひらいた大口おおぐち強制的きょうせいてきじられて、巨大きょだい歯列しれつ圧壊あっかいする。

 そのハンマーは、空間くうかんそのものをたたつぶす。

「クラッシュ!!!」

 最期さいごは、風船ふうせん破裂はれつするみたいに一瞬いっしゅんだった。灰色はいいろ砂漠さばく波打なみうち、灰色はいいろすな無数むすういあがった。


   ◇


 皐月さつきふたたび、遊園地ゆうえんち雑踏ざっとう背景はいけいに、桃花ももか背後はいごたたずむ。優美ゆうび微笑びしょうで、ちてきた小石こいしをキャッチする。

 狭魔きょうまたおすと、えて小石こいしわる。


 おなじくちてきたソフトクリームは、皐月さつきおおきなむねにベチャッと落着らくちゃくした。胸の谷間たにままって、しろけて、とどまった。

わたくし、ギルドに報告ほうこくもどらないといけませんわ。名残なごりしいですが、本日ほんじつはここでおわかれですわ」

 皐月さつき大袈裟おおげさに、ながはしから涙滴るいてきこぼす。

「はいはい。おつかさま

 桃花ももか興味きょうみなさげに、なくかえした。

冷たいクゥーーーーーッル! 好きラブ! またいましょう!」

 皐月さつきはそのままきびすかえし、雑踏ざっとうなかへとモデルあるきでえていった。とおりすがるひとたちが、何度見なんどみもしていた。


 あれが、斎賀さいが 皐月さつきだ。全国ぜんこくでもトップクラスの、最強さいきょう魔狩まかり一人ひとりだ。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第17話 EP3-2 最強さいきょう実力じつりょく/END

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