第16話 EP3-1 最強の魔狩

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


「なぁ、桃花ももかつぎ日曜日にちようびひまか? このあいだれいっていうか、一緒いっしょにどっかにあそびにかないか?」

 オレは学校がっこうかえみちに、桃花ももかいた。


 絢染あやそめ 桃花ももか魔狩まかりである。オレの幼馴染おさななじみで、十四さい中学生ちゅうがくせいで、桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。

 こしに、自身じしんどうサイズの両刃りょうば大剣たいけんをさげる。


「えっ!? えっえっえっ?! そっ、それなら、これが」

 桃花ももかが、なぜかみだす。チケットを二枚にまい、オレのまえす。

「ぐっ、偶然ぐうぜんなんだけど、遊園地ゆうえんち一日いちにちフリーパスが二枚にまいあるわ!」

「おっ! いいな。一緒いっしょなら、絶対ぜったいたのしいぜ」


 きっかけは、こんなよくあることだった。


   ◇


 日曜にちようあさだ。しろくておおきなくもかぶ快晴かいせいだ。

 遊園地ゆうえんちまえの、並木道なみきみちわせている。知名度ちめいどのない地元じもと偉人いじん紹介しょうかい看板かんばん定番ていばんである。オレはひさしぶりにく。


 桃花ももかさきっている。いつもの私服しふく、ノースリーブにミニスカートにスニーカー姿すがたである。いや、今日きょうは、ちょっとヒラヒラしてて女子じょしっぽいかんじか。

はやいな、桃花ももか。まだ時間じかんあるぜ」

 オレは、スマホで時間じかん確認かくにんしながらこえをかけた。


 二人ふたりならんで、並木なみきながめる。青々あおあおしげって、セミのこえうるさい。

 並木なみき一本いっぽんから、さんメートルはある大鎚おおづちびる。大鎚おおづち?、金鎚かなづち?、『ディメンションクラッシャー』とばれるおおきなハンマーである。それを背負せおうドレス姿すがた大人おとなおんなひとが、こちらを木陰こかげからのぞく。

「あのひとひさしぶりにたな」

全国ぜんこくでもトップクラスだから、いそがしいんでしょ」

 桃花ももか興味きょうみなさげにこたえた。


 細長ほそなが金属きんぞくに、自販機じはんきサイズのハンマーヘッドがっている。

 かがやくゴールドカラーで、優美ゆうび装飾そうしょく全体ぜんたいはいって、ヘッドにられた女神めがみ神々こうごうしい。


たせたな、ライバル!」

「あっ、あのっ! おはようございます、遠見とおみくん! 絢染あやそめさん!」

 古堂ふるどう琴音ことね合流ごうりゅうした。

「オレもいまたとこだぜ!」

 これで、四人よにんそろった。

「……え? なんでこの二人ふたり一緒いっしょに……?」

 なぜか桃花ももかが、とても残念ざんねんひとでオレをた。


   ◇


「なんかわりぃな、おれっちまでさそってもらって。中坊ちゅうぼうおごらせるのもダセぇから、おれっちもかねすぜ」

 古堂ふるどう 和也かずやは、オレや桃花ももか近所きんじょ大学生だいがくせいである。金髪きんぱつ逆立さかだて、くろかわジャンかわパンツの、派手はでちのおとこである。

 遠距離えんきょり戦闘系せんとうけい魔狩まかり『スナイプ』なのにランクD、一般人いっぱんじんみの力量りきりょうしかない。オレが狭魔きょうまおそわれたときに一緒いっしょたたかってくれた、いのち恩人おんじんだ。


「いいっすよいいっすよ。一緒いっしょたおした狭魔きょうまが、一般人いっぱんじん被害ひがいしかねない『下禍げまがつ区分くぶんだったらしいっす。おかげで、報酬ほうしゅうおおかったっす」

 オレは、ジーパンのポケットをたたきながらわらった。


「おっ?! だったらおれっちに半分はんぶんわたすべきだろ? 二人ふたりたおしただろ?」

山分やまわけしたら、今日きょうおごりよりるっすよ? いいっすか?」

本当マジか!? だったら、おごりでいいや」

中学生ちゅうがくせいの『報酬ほうしゅうおおい』なんて、そんなもんっす」

 他愛たあいないやりりで、二人ふたりして大笑おおわらいした。


 琴音ことねもうわけなさげにまゆをさげる。

「ごめんなさい、絢染あやそめさん。お邪魔じゃまをするつもりではなかったんです」


 真奉しんほう 琴音ことねはオレと桃花ももかのクラスメートである。銀縁ぎんぶちまるメガネに灰色はいいろながかみみにして、小柄こがらむねおおきい人見知ひとみしりの女子じょしである。フリルやレースがいっぱいのキュートな私服しふくこのむ。


「いいのよ琴音ことね。そんなんじゃないから。大勢おおぜいあそんだほうたのしいから」

 ねた桃花ももか琴音ことねうでにしがみつく。ちいさなむねしつけて頬擦ほおずりする。っぱらいみたいなからかたである。

 桃花ももか人付ひとづいの距離感きょりかんがおかしい。


「あっ、あっ、絢染あやそめさんっ! ちかいです! たってます!」

 琴音ことねが、ずかしそうにかおにした。つよつぶって、頬擦ほおずりする桃花ももかはなそうと無駄むだ足掻あがきをした。

 ランクA『ウォリア』の桃花ももか腕力わんりょくもおかしい。


   ◇


 入園口にゅうえんぐちれつるのをって、遊園地ゆうえんちはいる。地方ちほう都市としちいさなとこだけど、快晴かいせい日曜にちようだけあってひとおおい。


「おひさしぶりですわね、未来みらいになわたくし後継こうけい桃花ももかちゃん。一月ひとつきぶりかしら?」

 前方ぜんぽう人混ひとごみから、するどたかおんなこえこえた。

 人混ひとごみがドヨめき、モーゼの十戒じゅっかいみたいに退れた。


 おおきなハンマーを背負せおうドレス姿すがた美女びじょましがおで、モデルちでたたずむ。

 かがやくゴールドカラーで優美ゆうび装飾そうしょく全体ぜんたいはいる、『ディメンションクラッシャー』と名高なだかいハンマーである。

 ドレスは、薄紫うすむらさき基調きちょうはなやかな刺繍ししゅうがされた薄手うすでのサマードレスだ。かたわき太腿ふともものスリットがセクシーだ。

 

健勝けんしょうのようでなによりです。わたくし? もちろん、連戦れんせん連勝れんしょうでしてよ」

 かみえるような赤色あかいろで、波打なみうふくらむ。美女びじょでナイスバディで大人おとな魅力みりょくあふれる。あかくちびる不敵ふてき微笑ほほえむ。

 斎賀さいが 皐月さつき全国ぜんこくでもトップクラスの魔狩まかり、ランクSSSの『ウォリア』である。

 ……いや、いまは、その紹介しょうかい適切てきせつではないだろう。


「でも本当ほんとうは、三十一分さんじゅういっぷん四十七秒よんじゅうななびょうまえってますの。再会さいかい感激かんげきびつきたい激情げきじょうおさえますのが、いかな狭魔きょうまよりも強敵きょうてきでしたわ」

ってるわ。えてたわ」

 桃花ももか興味きょうみなさげに、なくこたえた。

冷たいクゥーーーーーッル! そこがまた素敵すてき興奮こうふんしますわ!」

 皐月さつきが、そのくずおれるようにすわむ。いきあらげてほお紅潮こうちょうさせる。

「あぁ、でも、次代じだい強者きょうしゃ見守みまもみちびくのは、いま強者きょうしゃ義務ぎむ。これも、そのための試練しれんですのね」

 斎賀さいが 皐月さつきは、不適切ふてきせつかんじの、桃花ももかのストーカーである。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第16話 EP3-1 最強さいきょう魔狩まかり/END

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