第14話 EP2-7 再戦

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 れる。はいアーケードに、夕焼ゆうやけと宵闇よいやみじる。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


間違まちがいなく、ひとだったんだな? 幽霊ゆうれいじゃなかったんだな?」

 オレは念入ねんいりに確認かくにんした。間違まちがいは絶対ぜったいゆるされない。


 絢染あやそめ 桃花ももか魔狩まかりである。十四さい中学生ちゅうがくせいで、桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。

 こしに、自身じしんどうサイズの両刃りょうば大剣たいけんをさげる。


「パニクってたしくらかったけど、手応てごたえも気配けはいひとだったわ」

 桃花ももか慎重しんちょうに、思考しこう何重なんじゅうにもかさねながらこたえた。


 真奉しんほう 琴音ことねは、クラスメートで魔狩まかりである。銀縁ぎんぶちまるメガネをかけたメガネ女子じょしで、灰色はいいろながかみみにして、小柄こがらむねおおきい。

 こしに、あかいハートとしろつばさかざられた片手かたてサイズのつえをさげる。


「でしたら、確認かくにんもどりましょう」

 琴音ことねが、キラキラと信頼しんらいかがやひとみ提案ていあんした。


「もうくらくなるし、かえろうぜ」

 オレは熟考じゅっこう熟考じゅっこうかさねて結論けつろんした。

 当然とうぜん、そんなビビりらかした結論けつろんとおるわけもなかった。 


   ◇


 さっきしたはいビルにはいる。

 はいアーケードに一棟いっとうだけあるビルで、五階ごかいてで、鉄筋てっきんコンクリートで破損はそんすくない。ひとあつまるには好条件こうじょうけん物件ぶっけんである。


 くら廊下ろうかを、懐中かいちゅう電灯でんとう琴音ことね先頭せんとうすすむ。オレと桃花ももかはビビって、琴音ことねかたにしがみつく。

 あれが幽霊ゆうれいではなかったとして、幽霊ゆうれいがいないとはならない。これだけ不気味ぶきみ廃墟はいきょだ。いても不思議ふしぎじゃない。


会議室かいぎしつです」

 琴音ことね無警戒むけいかいんだ。

 オレと桃花ももか警戒心けいかいしんマックスでつづいた。


 くらひろ部屋へや片隅かたすみに、ひとがいる。懐中かいちゅう電灯でんとうまるかりにらされて、ざつ包帯ほうたいかれたうでで、まぶしそうにかざす。


 ボサがみ地味じみな、小柄こがらうつむ気味ぎみで、くらそうなかんじの男子だんしで、こし短剣ダガー二本にほんさげる魔狩まかりだ。おな中学校ちゅうがっこう学生服がくせいふくて、ガラのわる生徒せいとたちと一緒いっしょにいた、名前なまえたしか、暗井くらいだ。


ともだちが心配しんぱいしてたわよ」

 琴音ことねが、おっかなびっくりこえをかけた。

「どいつもこいつも! バカにしやがって!」

 暗井くらいが、いかりに興奮こうふんした口調くちょうこたえた。

「ゴリせん野郎やろう! てる、からだちいさいんだから無理むりするな、だとぉっ?!」

 つきがこわい。オレたちのほうてるようで、てないようで、あやうい。


   ◇


からだちいさくて、わるいかよ?!」

 怒鳴どなった暗井くらいうごきが、ほとんどえなかった。えて表現ひょうげんするなら、かたちくずれてくろながれて、やみとなった。


 オレと琴音ことねまえに、桃花ももかつ。半袖はんそでセーラーふくあかいスカーフをほどき、ほうてる。

 桃花ももかはパワーけいの『ウォリア』である。一般人いっぱんじんよりははやくても、スピードけいの『クイッケン』よりはおそい。

 ランクS手前てまえのランクA『ウォリア』と、能力のうりょく増強薬ぞうきょうやく強化きょうかされたランクC『クイッケン』。どれほどのがあるのか、そのめられるか、の勝負しょうぶだ。


 ひととしてはトロい琴音ことねと、論外ろんがいのオレは論外ろんがいである。桃花ももかをこの状態じょうたいむまでの、ロケットブースターてき役割やくわりちかい。最早もはや用済ようずみと、自信じしんをもって断言だんげんできる。


 桃花ももかが、こし革鞘かわざや剣留けんと金具かなぐはずす。大剣たいけん片手かたてにぎり、こしかがめる。

 桃花ももか背中せなかは、女子じょし相応そうおう華奢きゃしゃなのに、最上級さいじょうきゅうたのもしい。


 くらひろ部屋へやを、やみ縦横じゅうおう無尽むじんめぐる。かぜおとまとって、桃花ももかおそいかかる。

 たいする桃花ももかは、大剣たいけん一気いっきりあげる。


 キィィィンッッッ!、とはがね同士どうし甲高かんだかった。

 やみが、長机ながづくえ残骸ざんがいばしながらゆかころがった。ながれるくろが、ひとかたちに、暗井くらいもどった。


   ◇


「うっ!? うぁぁぁっっっ!!!」

 暗井くらいいつくばったまま、いかったようにおびえたようにさけぶ。ちあがり、無様ぶざま前屈まえかがんで、部屋へや出口でぐちひとつへとはしる。


 げた。した。桃花ももかつよさに、暗井くらい戦意せんいくじかれた。

 でもマズい。全力ぜんりょくげる『クイッケン』を、この三人さんにんめられるはずがない。


「うぎゃっ?!」

 だれかになぐられて、暗井くらいたおれた。

わたし犯罪はんざいるいすることにはうとくてもうわけないのですが」

 風紀ふうき委員いいん風木かぜき かえでだ。細剣レイピア使つかうランクBの『クイッケン』、魔狩まかりだ。

危険きけん能力のうりょく増強薬ぞうきょうやくとは、たいした効果こうかはないのでしょうか? それとも、使用しようした魔狩まかり能力のうりょくひくかったのでしょうか?」

 たおれた暗井くらいのポケットをさぐって、錠剤じょうざいらしきもののはいった小袋こぶくろした。


マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第14話 EP2-7 再戦さいせん/END

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