第12話 EP2-5 西の廃アーケード

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 ジャージ姿すがたの、たか巨乳きょにゅうおんな教師きょうしがグラウンドにつ。

村田むらた先生せんせい入院にゅういんされているあいだぁ、みなさんに保健ほけん体育たいいくおしえまぁす。臨時りんじ教師きょうし秋葉あきはでぇす」

 会釈えしゃく巨乳きょにゅうおもそうにれる。ジャージのジッパーがはじぶんじゃないかと、ていて期待きたい、もとい、心配しんぱいになる。

『うお~~~っ!』

 男子だんしたちから歓声かんせいがあがった。

みなさぁん。よろしくおねがいしますねぇ」

『よろしくおねがいしまっす!』

 男子だんしたちが力強ちからづよこえそろえた。

「これだから男子だんしどもは……」

 桃花ももかふくめて女子じょし数名すうめいのボヤきがこえた。


 まぁ、いまは、どうでもいいことか。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。一応いちおうしの魔狩まかりである。

 放課後ほうかご制服せいふくのままた。こしにさげるのは、廉価品れんかひん長剣ロングソードだ。


西にしはいアーケード。十年じゅうねんまえまがつ事件じけん閉鎖へいさ放棄ほうきされたそうです」

 あちこちくずれて廃墟はいきょしたアーケードをまえに、琴音ことねがスマホで過去かこ記事きじみあげる。

 アーケードの面影おもかげは、上方じょうほうのアーチじょうてつわくと、そこにわずかにのこったれガラスくらいしかない。左右さゆうは、商店しょうてん飲食店いんしょくてん残骸ざんがいとか、まどれたビルとかにはさまれる。

 不気味ぶきみだ。不気味ぶきみすぎだ。


 真奉しんほう 琴音ことねは、銀縁ぎんぶちまるメガネに灰色はいいろながかみみにして、小柄こがらむねおおきい人見知ひとみしりの女子じょしである。

 こしに、あかいハートとしろつばさかざられた片手かたてサイズのつえをさげる。


いたことはあるわね」

 桃花ももか琴音ことねかたあごき、ほおほおをくっつけながらのぞんだ。


 絢染あやそめ 桃花ももか桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。

 こしに、自身じしんどうサイズの両刃りょうば大剣たいけんをさげる。


「あっ、あっ、絢染あやそめさんっ! ちかいです! 近いです!」

 琴音ことねが、ずかしそうにかおにする。つよつぶって、ほおせる桃花ももかからかおらす。

 桃花ももか人付ひとづいの距離感きょりかんがおかしい。


何人なんにんんで、幽霊ゆうれいるってうわさだぜ。幽霊ゆうれいなんて科学かがくてきだよな」

 オレはかる口調くちょうはなしわせた。

 まだ夕方ゆうがたにもなっていなくて、あかるい。こんなこわいとこに、くらよるにいられるわけない。むしろ夕方ゆうがたになるまえかえりたい。


 かお琴音ことねが、ずかしさに身悶みもだえながら補足ほそくする。

複数ふくすうまがつ集中しゅうちゅうてき発生はっせいして、ランクAの魔狩まかりから一般人いっぱんじんまではばひろく、おおくの被害ひがいたとありました。不運ふうん不運ふうんかさなった、不幸ふこう事件じけんだったみたいです」


 まがつとは、簡単かんたんうと『ひところした狭魔きょうま』である。

 狭魔きょうまつよ人間にんげんたたかうために狭間はざま魔狩まかりむ、とかんがえられている。つよすぎる狭魔きょうまおそわれることは基本きほんてきにないし、狭間はざま時間じかん制限せいげんもあって、狭魔きょうまころされる人間にんげんすくない。


「ふ、ふ~ん、そうなんだな?」

 オレは、一気いっきこわさが倍増ばいぞうした。ここは本当ほんとうに、幽霊ゆうれいくらいても不思議ふしぎじゃない心霊しんれいスポットのようだ。

 こわさをまぎらすために、桃花ももか琴音ことねのじゃれいをあき半分はんぶんながめる。


 不意ふいに、だれかがオレのかたたたいた。


   ◇


「うぎゃっひぃぃぃーーーっ!?」

 オレは、自分じぶんこえとはしんがたたか悲鳴ひめいた。

「きゃぁっ!?」

 桃花ももかもつられて、桃花ももかにあるまじきカワイイ悲鳴ひめいをあげた。

「うおっ?! ビ、ビックリさせてみません、絢染あやそめさまと、そのおともだちさん」

 制服せいふく着崩きくずした、ガラのわる生徒せいと一人ひとりだった。手揉てもみしながらへつらっていた。


「べ、べつに、ビックリなんてしてないわよ? 科学かがくてきだわ」

「そ、そうだぜ。実在じつざいするわけないだろ?」

 まぁおそいとはおもうけど、桃花ももかもオレも平静へいせいつくろった。


 ガラのわる生徒せいとが、オレたちの反応はんのうをスルーしてつづける。

「いや~、えてかったっす。おねがいしたいことがあって」

なにかあったの?」

「はい。それが、暗井くらいのやつがまりないんで、ちょっとになってさがしたんすけど、学校がっこうにもいえにもいなくて。あ、おれ近所きんじょんでてなかいいんすよ」


 不意ふいにガラガラと、廃墟はいきょほうから瓦礫がれきくずれるおとがした。


   ◇


「うぎゃでたーーーっ?!」

「いやっ?! いやぁーーーっ!!!」

 オレと桃花ももか悲鳴ひめい廃墟はいきょ木霊こだました。

 前途ぜんと多難たなんだ。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第12話 EP2-5 西にしはいアーケード/END

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