第11話 EP2-4 薬の使い方

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


「っ?!」

 前触まえぶれもなく、空気くうきわった。


 たぶん、学生がくせいだ。とおくて、よるくらさで、性別せいべつからない。


 おぼろげなシルエットの学生がくせいが、くろそらしたしろくさの、灰色はいいろっぱのうえにいる。巨大きょだいな草のような、小人こびとのような、いかにも狭間はざま不思議ふしぎ光景こうけいである。

 対峙たいじするのは、まだらなオレンジいろのカマキリっぽい狭魔きょうまだ。ひと二倍にばいはあって、デカくて気色きしょくわるい。


 ほそくき器用きようつカマキリ狭魔きょうまが、眼下がんか学生がくせいねらう。ほそからだ緩急かんきゅうつけてり、りょうかまらす。

 学生がくせいほうは、完全かんぜんこしけてる。ビビってる。

 てるわけない。はや時間じかんれにならないと、ころされる。


 カマキリ狭魔きょうまかまった。学生がくせいはじばされて、灰色はいいろっぱをころがった。

 学生がくせいいたがる。自分じぶんうでて、わめく。

 血塗ちまみれが、容易ようい想像そうぞうできる。


 学生がくせいが、ふところからなにかをした。にあるなにかを、くちれた。

 そのさきは、ほとんどえなかった。

 えて表現ひょうげんするなら、シルエットがくずれてくろながれて、やみとなった。やみが、くろそらめぐった。


   ◇


「ってことがあったんだ」

 オレは大手柄おおてがらかえって、桃花ももか琴音ことね報告ほうこくした。騒々そうぞうしいあさ教室きょうしつで、最後尾さいこうびのグラウンドがわ窓際まどぎわのオレのせきだ。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。一応いちおうしの魔狩まかりである。


「で、その学生がくせいだれかまで確認かくにんしたのよね?」

 桃花ももかが、オレの臆病おくびょうでチキンを半笑はんわらいでく。

 琴音ことねは、銀縁ぎんぶちまるメガネのおくひとみを、期待きたいにキラキラとかがやかせる。


 絢染あやそめ 桃花ももか桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。

 真奉しんほう 琴音ことねは、銀縁ぎんぶちまるメガネをかけたメガネ女子じょしで、灰色はいいろながかみみにして、小柄こがらむねおおきい。


 琴音ことねわるがしないでもない。

「そんなこわいことできるわけないだろ。バレたらつぎはオレのばんだぞ」

 オレは当然とうぜん結論けつろんと、堂々どうどう主張しゅちょうした。


みんな! だいニュースだいニュース! 体育たいいく村田むらたが、とおおそわれたらしいわ!」

 教室きょうしつんできた短髪ショートカット女子じょしが、いきらせながらしらせた。


   ◇


 オレと桃花ももか琴音ことね三人さんにんで、放課後ほうかご校舎こうしゃうら集合しゅうごうした。校舎こうしゃ裏口うらぐち階段かいだんに、三人さんにんならんですわった。


「あの女子じょしけていたけど、体育たいいく村田むらたとおおそわれて入院にゅういんした、までしからなかったわ」

担任たんにん谷口たにぐちは、くわしいことがかったら校長こうちょうから発表はっぴょうがある、ってさ」

村田むらた先生せんせい魔狩まかりです。ギルドデータでは、ランクCの『ウォリア』でした」

 げん時点じてん情報じょうほうを、おもおもいにしゃべる。情報じょうほうがない、とかる。


 ちなみに、ランクCは『つよ一般人いっぱんじん』~『よわ魔狩まかり』である。

 魔狩まかりギルドで狭魔きょうま討伐とうばつをするなら、『普通ふつう魔狩まかり』のランクB相当そうとう力量りきりょうしい。

 ランクC相当そうとう力量りきりょうでも、ギルド登録とうろくしょうのために登録とうろくだけするひとはいる。身元みもと証明しょうめい資格しかくになる。


   ◇


 ザリッ、とつちおとがした。

 オレも桃花ももか琴音ことねも、あわてておとほうた。

「……」

 風紀ふうき委員いいん風木かぜき かえでだ。薄緑うすみどりいろながかみをおさげにして、つきがするどく、がた女子じょしだ。

 なにわず、なにいたげに、するどでオレたちをやる。


相変あいかわらず存在そんざいかんがないわね、風紀ふうき委員いいんさん。今度こんどは、なんよう?」

 桃花ももかが、とげのある口調くちょういた。こいつはいつもこうだ。

 かえで忌々いまいましげに歯噛はがみする。しかしかえさず、オレをる。

「これはひとごとです」


 かえでがオレをたままつづける。

おそわれた当時とうじ村田むらた先生せんせい自主的じしゅてきに、夜間やかん巡回じゅんかいをしていらしたそうです。場所ばしょは、西にしはいアーケードのあたりときました」

犯人はんにんかおなかったのか? 特徴とくちょうとか」

 オレはかえでひとごと質問しつもんした。

 主導しゅどう琴音ことねにやりりしてほしいところだが、桃花ももか背中せなかかくれる人見知ひとみしりにそれを要求ようきゅうするのはこくだろう。


くらくてなにえなかった、そうです。村田むらた先生せんせい生徒せいとおもいのかたですから、相手あいてったうえだまっていらっしゃるのだとおもいます」

「あのデリカシー皆無かいむのゴリラが?」

 桃花ももか軽口かるくち茶々ちゃちゃれた。こいつはいつもこうだ。

 かえで桃花ももかにらむ。言及げんきゅうはせず、きびすかえす。

ひとごとは、これだけです」

 そのまま、あるった。


 反目はんもくしても、桃花ももか実力じつりょくみとめているのだろう。情報じょうほう提供ていきょうするにあたいすると、評価ひょうかしてくれているのだろう。

 かえでは、オレたちとは正反対せいはんたいの、冷静れいせい論理的ろんりてきなリーダーきの性格せいかくだとおもう。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第11話 EP2-4 くすり使つかかた/END

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