第10話 EP2-3 ダブルダガーの暗井

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。一応いちおうしの魔狩まかりである。


「げぇっ?! バイオレンス絢染あやそめ! ……さま本日ほんじつはどのような御用件ごようけんでしょうか?」

 制服せいふく着崩きくずしたガラのわる生徒せいとたちが、手揉てもみしながら桃花ももかへつらう。

 そういう連中れんちゅうまりの、やまなかにポツンとあるいし階段かいだんた。オレは、桃花ももか暴走ぼうそうしないようにいだ。


 絢染あやそめ 桃花ももか魔狩まかりである。十四さい中学生ちゅうがくせいで、桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。

 こしに、自身じしんどうサイズの両刃りょうば大剣たいけんをさげる。


「これ。なにらない?」

 桃花ももかがスマホを提示ていじする。ピンクいろで、歴戦れきせん戦士せんしみたいにきずだらけである。

 ガラのわる生徒せいとたちがおそおそ画面がめんのぞむ。

「えっと、……『新種しんしゅ能力のうりょく増強薬ぞうきょうやく』、っすか? ドラッグのうわさはたまにきますけど、それはらないっすね。おれら、魔狩まかりでもないし」

 のぞんだ四人よにんが、そろえてくびった。


たしか、一人ひとりだけ魔狩まかりがいるでしょ?」

 桃花ももかが、一人ひとりだけ画面がめんなかった男子だんしこえをかけた。

 その男子だんしは、こえをかけられて、ビクッとかたふるわせる。

 ボサがみ地味じみな、小柄こがらうつむ気味ぎみで、くらそうなかんじだ。でも、こし武器ぶきが、廉価品れんかひんけんではなく、短剣ダガー二刀流にとうりゅうだ。

 軽量けいりょう武器ぶき使つかうなら、かえでおなじ『クイッケン』だろう。


「そっ、そうだけど、全然ぜんぜんよわいよ。……あ、よわいです」

 ビビりながらこたえた。

 桃花ももかにビビったのか。やましいことでもあるのか。

「ふぅん」

 桃花ももかいぶかしげにかえした。


「じゃあ、なにかったらおしえて。依存性いぞんせいつよいヤバいやつらしいから、さないようにね」

 桃花ももかいながら、短剣ダガー男子だんした。

「いやぁ。おれらも、さすがにドラッグはやらないっす。なぁ、暗井くらい

 ガラのわる生徒せいとたちも、いながら短剣ダガー男子だんしかえった。

「ま、まぁ、うん」

 短剣ダガー男子だんしは、まずそうにらした。


   ◇


 校舎こうしゃ裏口うらぐち階段かいだんで、琴音ことね合流ごうりゅうした。途中とちゅう経過けいか報告ほうこくかいだ。

「こっちは進展しんてんなかったぜ」

 オレは、自分じぶんのスマホをかばんからす。おりの、シンプルなくろである。

学校がっこう関連かんれんのSNSを巡回じゅんかいはしてる。そっちけいくわしいともだちにもたのんでる」

「ギルドもあたらしい情報じょうほうはないみたいでした」

 琴音ことねもスマホ片手かたてこたえた。まばらにぎんラメのはいった灰色はいいろだ。


「なぁ、桃花ももか。あの情報じょうほうげんって、信用しんようできるのか?」

大丈夫だいじょうぶよ。ああえて、ドラッグにすほどバカな連中れんちゅうじゃないわ。ドラッグに手を出しそうな仲間なかまぬふりするほどつめたくもないわ」

 桃花ももか自信じしん満々まんまんだから、オレは納得なっとくする。

「だったら、大丈夫だいじょうぶだな」

 桃花ももか自信じしんにもオレの納得なっとくにも、根拠こんきょはない。


「そもそも、おおきなリスクのある能力のうりょく増強薬ぞうきょうやくなんて、需要じゅようあるのか?」

 オレは、ふと疑問ぎもんおもった。一時的いちじてきつよくなれるとして、人生じんせいだいダメージをっては意味いみがない。むしろマイナスだ。

「あります」

 琴音ことねが、銀縁ぎんぶちまるメガネのはしをクイッとあげながらこたえた。


 真奉しんほう 琴音ことねは、クラスメートで魔狩まかりである。銀縁ぎんぶちまるメガネをかけたメガネ女子じょしで、灰色はいいろながかみみにして、小柄こがらむねおおきい。

 こしに、あかいハートとしろつばさかざられた片手かたてサイズのつえをさげる。


「いつ狭魔きょうまおそわれるかもからない世界せかいです。そのくすりひとつでなずにむのなら、魔狩まかりはもちろん、一般人いっぱんじんでも御守おまもわりにしがるかたすくなくないとおもいます」

 シンプルかつ決定的けっていてきたとえだった。それは、たしかに、ひとつだけでいいからしい。

「なるほど。狭魔きょうま襲撃しゅうげきおびえずにつよさが、はいるんだな」

 納得なっとくするオレに、琴音ことねもうわけなさげにらす。

「あ、いえ、その……。能力のうりょく増強薬ぞうきょうやくですので、特殊とくしゅ能力のうりょくしゃ遠見とおみくんは、狭間はざま鮮明せんめいえる、みたいな効果こうかだと、おもいます。……ごめんなさい」

「……あ、あぁ、いいっていいって、しいともおもってないし。そんな、あやまるようなことじゃないぜ。な、なぁ、桃花ももか

 わせた桃花ももかも、あわれむようにらした。


 なんだかまずい雰囲気ふんいきになってしまって、そのはそのまま解散かいさんした。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第10話 EP2-3 ダブルダガーの暗井くらい/END

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