第8話 EP2-1 能力増強薬

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


「おはよ、勇斗ゆうと!」

「おう。おはよう、桃花ももか

 いつものように、オレと桃花ももかおなじタイミングでいえる。いつものように、かたならべて登校とうこうする。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。一応いちおうしの魔狩まかりである。


 中学生ちゅうがくせい登校とうこう風景ふうけいだから、制服せいふくている。男子だんしくろ学生服がくせいふく女子じょしあかいスカーフのセーラーふくである。

 一般人いっぱんじん廉価品れんかひんけん、オレは廉価品れんかひん長剣ロングソード桃花ももかはオーダーメイドの両刃りょうば大剣たいけんこしにさげる。


 校門こうもんえてきた。ほか生徒せいとたちにじって、はやめた。

「あー。チッ。今日きょうは、風紀ふうきチェックのだったっけ」

 桃花ももか舌打したうちした。


 絢染あやそめ 桃花ももか魔狩まかりである。十四さい中学生ちゅうがくせいで、桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。


   ◇


絢染あやそめさん! ちょっと、スカートがみじかいのではありませんか?」

 あんじょう風紀ふうき委員いいん名指なざしでめられた。


 風木かぜき かえで風紀ふうき委員いいんである。薄緑うすみどりいろながかみをおさげにして、つきがするどく、がたである。

 十四さい中学生ちゅうがくせいで、魔狩まかりでもある。こしに、天使てんし彫刻ちょうこくつか細剣レイピアをさげる。


風紀ふうき委員いいんさんも魔狩まかりだからかるでしょ? みじかほうたたかいやすいのよ」

 桃花ももか喧嘩腰けんかごし反論はんろんした。こいつはいつもこうだ。


「それはかります。でも、限度げんどがあるでしょう?」

 かえでがキツい口調くちょうこたえた。

限度げんどって? えなきゃいいでしょ?」

 桃花ももかとげのある口調くちょうかえした。

「まぁまぁまぁ。桃花ももかにはオレからかせておくから、ここは大目おおめてくれよ。な、風木かぜきさん、たのむ」

 オレはこしひくく、かえでおがんだ。


 かえで桃花ももかにらむ。ふぅ、といきをついてオレをる。

かりました。あとは遠見とおみくんにおねがいします」

「ありがとう、風木かぜきさん!」

 オレは喧嘩腰けんかごし桃花ももかって、校舎こうしゃいそいだ。

 だいたい毎回まいかい、こんなかんじだ。


   ◇


「ってことがあってさ」

 昼休ひるやすみに、オレと桃花ももか琴音ことね三人さんにんで、昼食ちゅうしょくひろげたつくえかこむ。


 真奉しんほう 琴音ことねは、クラスメートで魔狩まかりである。銀縁ぎんぶちまるメガネをかけたメガネ女子じょしで、灰色はいいろながかみみにして、小柄こがらむねおおきい。

 こしに、あかいハートとしろつばさかざられた片手かたてサイズのつえをさげる。


「いつものことですが、遠見とおみくん大変たいへんですね」

 琴音ことね歓談かんだん口調くちょうこたえた。

琴音ことね他人事ひとごとなの? もっと親身しんみになってくれてもいいのよ」

 桃花ももか琴音ことねかたつかんだ。鼻先はなさき同士どうしたりそうにせまった。人付ひとづいのすくなさゆえに、からかた距離感きょりかんもおかしい。

「あっ、あっ、絢染あやそめさんっ! ちかいです! 近いです!」

 琴音ことねずかしそうにかおにして、はなれようとする。もちろん、桃花ももか腕力わんりょくほどけるわけがない。


 桃花ももか一緒いっしょにいると、一般人いっぱんじん近寄ちかよらない。身体しんたい能力のうりょく人間にんげんばなれした桃花ももかに、恐怖きょうふ委縮いしゅくしてしまうのである。


   ◇


「ところで、遠見とおみくん絢染あやそめさん。このようなうわさみみにしたことはありませんか?」

 つくえ中央ちゅうおうに、琴音ことねがスマホをく。ちいさなくちびるまえに、人差ひとさゆびてる。


 オレはヤキソバパンをかじりながら、画面がめんる。

 文字もじだけの資料しりょうで『新種しんしゅ能力のうりょく増強薬ぞうきょうやくかんして』とある。

 人差ひとさゆびは、ほか生徒せいとかれないように、との意味いみだろう。

「えっ? これって、ふがっ」

 いや予感よかんがしたので、桃花ももかくちふさいだ。


 琴音ことね前屈まえかがみ、小声こごえはなす。むねおおきい。

「このはなしはよくありますが、いわゆるドラッグです。依存性いぞんせいつよく、あるしゅ興奮こうふん状態じょうたいになる、危険きけんなものだそうです」

 ようやく理解りかいした桃花ももか前屈まえかがみ、小声こごえはなす。むねちいさい。

「ねぇ、琴音ことね。そういうのに興味きょうみつのはかるけど、やめたほうがいいとおもうわ」

「……えっ?! ちっ、ちがいます! ふがっ」

 いや予感よかんがしたので、ずかしそうにかおにした琴音ことねくちふさいだ。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第8話 EP2-1 能力のうりょく増強薬ぞうきょうやく/END

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